【アナリスト水田雅展の銘柄分析】山田コンサルティンググループは16年3月期増収増益基調、割安感や自己株式取得も見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 山田コンサルティンググループ<4792>(JQS)は経営・財務・M&A関連のコンサルティング事業などを展開している。株価は第1四半期(4月~6月)の減益を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して急落したが売られ過ぎ感を強めている。16年3月期は増収増益基調であり、指標面には割安感も台頭している。自己株式取得も見直して反発展開だろう。

■各種コンサルティング事業を展開する純粋持株会社

 各種コンサルティング事業を展開するグループの純粋持株会社である。傘下の事業会社で、山田ビジネスコンサルティングが経営・財務・事業承継・M&A支援などの経営コンサルティング事業、山田FASがM&A・企業再編の財務アドバイザイリー業務や中堅・中小企業対応M&A関連業務などの資本・株式・株主に関するコンサルティング事業、山田不動産コンサルティングが不動産有効活用などの不動産コンサルティング事業、東京ファイナンシャルプランナーズがFP資格取得講座などのFP関連事業、キャピタルソリューションおよび投資事業有限責任組合が投資・ファンド事業(事業承継・再生関連のファンド)を展開している。

 中期経営目標としてROE20%以上を掲げ、重点戦略としては大手金融機関・証券会社・地方金融機関・提携会計事務所との連携強化、中堅・中小企業対応M&A関連分野の拡大、中国現地法人およびシンガポール支店を拠点とした中国・アジア展開の強化などを推進している。投資・ファンド事業では、事業承継問題を抱えている優良な中堅・中小企業をターゲットとして、投資リスクを最小限に抑えながら投資案件を発掘している。

 またコンサルティングニーズが「事業再生」だけでなく「事業成長」も顕在化しているため、こうしたニーズに対応すべく、主力の経営コンサルティング事業では「事業再生コンサル」「事業成長コンサル」「事業承継・M&Aコンサル」を3本柱とするビジネスモデルへの変換を進めている。そして事業再生や事業承継を切り口としてM&Aコンサルを拡大している。

■案件によって変動しやすい収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)20億86百万円、第2四半期(7月~9月)20億59百万円、第3四半期(10月~12月)18億25百万円、第4四半期(1月~3月)25億11百万円、営業利益は第1四半期5億33百万円、第2四半期4億28百万円、第3四半期2億48百万円、第4四半期8億円だった。好採算案件や大型案件の有無で四半期別利益が変動しやすい収益構造だ。

 なお15年3月期のM&A関連案件は、経営コンサルタント事業で件数28件(14年3月期は17件)および売上高10億22百万円(同5億円)、そして資本・株式・株主に関するコンサルティング事業で件数15件(同8件)および売上高5億53百万円(同1億67百万円)だった。件数は増加基調で大型案件も寄与した。

 また15年3月期の配当性向は34.8%だった。ROEは14年3月期比6.4ポイント低下して17.8%、自己資本比率は同5.2ポイント低下して81.9%となった。

■16年3月期第1四半期は減収減益だが、通期では増収増益基調

 7月29日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比11.6%減の18億44百万円で、営業利益が同66.1%減の1億80百万円、経常利益が同52.2%減の2億50百万円、純利益が同53.3%減の1億52百万円だった。

 経営コンサルタント事業および資本・株式・株主に関するコンサルティング事業で、前年同期に大型案件を複数売上計上した反動で減収減益だった。ただし両事業ともに引き合い状況や受注状況は順調のようだ。

 セグメント別の売上高(内部売上高調整前)は、経営コンサルタント事業が同2.2%減の12億68百万円、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業が同58.3%減の1億62百万円、不動産コンサルティング事業が同19.5%増の2億51百万円、FP関連事業が同18.9%増の1億98百万円だった。投資ファンド事業は投資株式売却がなく、新規投資実行もなかった。

 通期の連結業績予想は前回予想(4月28日公表)を据え置いて売上高が前期比6.1%増の90億円、営業利益が同4.9%増の21億10百万円、経常利益が同2.1%減の21億60百万円、純利益が同1.2%増の14億円としている。投資・ファンド事業での投資株式の売却損益を見込んでいない。配当予想は同10円増配の年間110円(第2四半期末55円、期末55円)で予想配当性向は37.7%となる。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が20.5%、営業利益が8.5%、経常利益が11.6%、純利益が10.9%だった。低水準の形だが、好採算案件や大型案件の有無によって四半期別収益が変動しやすい構造であり、現時点ではネガティブ要因とはならないだろう。

 第1四半期が減収となった経営コンサルタント事業および資本・株式・株主に関するコンサルティング事業では、事業承継・成長関連およびM&A関連の引き合い・受注が順調なため、通期ベースでは計画水準を確保する見込みだ。また不動産コンサルティング事業とFP関連事業も順調に推移する。通期ベースでは増収増益基調だろう。

■株価は悪地合いで急落したが売られ過ぎ感

 なお4月28日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限6万株、取得価額総額の上限2億円、取得期間15年5月1日~16年3月18日)については、7月31日時点で取得株式総数0株となっている。

 株価の動きを見ると、第1四半期の減収減益を嫌気する形で7月27日の年初来高値4540円から反落し、さらに地合い悪化も影響して8月24日には3160円まで急落した。ただし売られ過ぎ感も強めている。そして1月の年初来安値3090円に接近して調整の最終局面だろう。

 8月24日の終値3160円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS292円23銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間110円で算出)は3.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1695円57銭で算出)は1.9倍近辺である。

 週足チャートで見ると一気に52週移動平均線も割り込んで調整局面だ。ただし日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%程度まで拡大して売られ過ぎ感を強めている。16年3月期は増収増益基調であり、指標面には割安感も台頭している。中期成長力や自己株式取得を見直して反発展開だろう。

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