■米国政府の債務上限引き上げ合意で金利・景気懸念が後退
米国はワシントンからのグッドニュースをこれほど待ち望んだ週末はなかったはずだ。3連休前の26日の米国市場で、バイデン大統領とマッカーシー下院議長との間で続けられていた米政府の債務上限引き上げ交渉が、26日にも合意すると伝えられて、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が328ドル高と6営業日ぶりに反発したからだ。この交渉は、やや時間が掛かりやきもきしたが、ようやく27日(現地時間)に原則合意され、あとは順調に議会手続きが進むのを待つばかりとなった。
このまま米国政府の資金繰りが行き詰まるデフォルト(債務不履行)が、期限の6月5日までに回避されれば、金利引き上げや景気後退懸念と並んで株価の上値を圧迫していたリスク要因の一つが解消されることになる。金融マーケットでは、安全資産からリスク資産へ巻き戻し、国債や金先物が売られて株式が買われ、為替は円安・ドル高に進む。サプライズは「全面高」相場だが、そこまでは至らなくても、これまでリスクオフの裏返しだった日米同時半導体関連株高の「一強多弱」相場も影響を受けるとともに、売られていた小型株や景気敏感系・ディフェンシブ系のバリュー株(割安株)が、切り返し「多極化相場」に発展することもないとはいえない。
また東京市場の需給要因に関しても、相対的に日本株が出遅れているとして大量買いを敢行し日経平均株価の33年ぶりの高値更新をリードしてきた海外投資家が、デフォルト回避によりリスクオンとなった本国市場に資金を還流させるレパトリエーションが起こるのか起きないのか見定める必要も出てくる。
■半導体株だけでなくバリュー株も買われるか?
ということは週明けの東京市場では、まず「一強相場」の持続可能性が試されることになる。前週末の米国市場では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)がまたも6.26%高と大幅続伸しており、半導体関連株には強い追い風となる。しかし、アドバンテスト<6857>(東証プライム)は、前週末26日に年初来高値まで11日間で46%高、東京エレクトロン<東証プライム)は、前週末26日の株式分割権利落ち後高値まで25%高した。さらに上値を追う可能性も否定はできないが、この高値での買いは、ハイリスク・ハイリターンであることも覚悟しなければならないかもしれない。
そこで今週の当コラムでは、一歩下がってミドルリスク・ミドルリターン銘柄に絞ってスクリーニングすることにした。前提の相場シナリオとしては、前週までの半導体関連株の「一強相場」が、米国のデフォルト回避で「多極化相場」に変化することを想定した。参考にしたのは、前週末26日に半導体関連株とともに年初来高値を更新した小型株の2銘柄、OATアグリオ<4979>(東証プライム)と小池酸素工業<6137>(東証スタンダード)である。
両銘柄に共通しているのは、業績が前期業績を再三上方修正し、今期業績も続伸し増配を予定していることであり、OATアグリオは、今12月期業績を早くも上方修正し連続増配幅を拡大させる。両銘柄とも年初来高値追いとなっているがなお割安であり、この類似の小型株、バリュー株が、ミドルリスク・ミドルリターンの有力候補になる。
OATアグリオは、主力製品のグリーンプロダクト向け殺菌剤が、現在、NHKが放映中の朝の人気テレビ小説『らんまん』に関連する。同テレビ小説は、民間植物学者牧野富太郎をモデルにして植物、花きなどがふんだんに登場するだけに関連株への人気波及が期待される。一方、小池酸素も、主力製品の新切断機(DBCファイバーレーザー)の受注が造船業界向けに好調で、この背景には海洋の脱炭素化の環境対応があり、関連株は、舶用エンジン株、舶用機器株、造船株などに広範囲に及ぶ。PER6倍台のOATアグリオ、同5倍台の小池酸素と同様にバリュー株が多いだけに、相場の方向を見定めてじっくり対応して面白そうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)