【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アスカネットは16年4月期増収増益・増配予想を見直し、空中結像AI事業は着実に進展

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

アスカネット<2438>(東マ)は写真加工関連事業を主力として、新規分野の空中結像AIプレート事業も量産化に向けて着実に進展している。株価は地合い悪化の影響で24日にストップ安の1495円まで急落して年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。空中結像AI事業は量産化に向けて着実に進展しており、16年4月期増収増益・増配予想も見直して反発のタイミングだろう。

■写真加工関連事業が安定収益源で新規事業にも注力

葬儀社・写真館向け遺影写真合成・加工関連のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集製作関連のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力としている。

MDS事業では葬儀社や写真館との間にネットワークを構築し、約2130ヶ所の葬儀社向けBtoBを中心として年間約32万枚の写真画像を提供している。PPS事業では「1冊からの本格的写真集」をインターネットから受注して制作し、約3400社の写真館向けを中心としてBtoBおよびBtoCで年間約36万冊を提供している。

遺影写真のMDS事業は葬儀関連、写真集のPPS事業はウエディング関連や卒業・入学イベント関連などが主力市場であり、景気変動の影響を受けにくい安定収益源である。

さらにエアリアルイメージング(AI)事業や、NTTドコモ<9437>向けフォトブック・プリント商品のOEM供給など、新規事業・サービスの拡大にも注力している。

■新規事業のAIプレートを製品化

新規事業の空中結像技術エアリアルイメージング(AI)プレートは、画像映像を表す光を受け、特殊なパネルを通過することによって反対側の空中に映像を結像する新技術である。AIプレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造が特色であり、サイネージ関連をはじめとして車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。

独自技術を強固にするため特許申請も進め、将来的には自ら立体映像を空中に創出する技術の確立も目指している。そして基本技術を確立し、AIプレート試作品の販売を進めながら、低コストと大量生産を可能にする本格量産技術(ファブレス形態で製造して自社ブランドで販売)の確立に取り組んでいる。

15年4月に「AIプレート量産技術の現状と今後の方向性」を発表した。AIプレート量産については、ガラス素材による量産と樹脂素材による量産に分けられ、それぞれ複数の協力会社と取り組んでいる。

ガラス素材プレートはコストおよび量産性が相対的に劣るものの、結像品質は相対的に優れている。逆に樹脂素材プレートはコストおよび量産性が相対的に優れており、結像品質は想定的に劣る。両素材に一長一短があるため、並行して量産技術の確立に挑んでいる。

当社が想定している第一段階の量産は、リスク等を考慮して現有の設備やラインを最大限に活用することを前提としており、いきなり大規模・大ロットの量産を指向していない。複数の製造方法のうち最も優れた方法が明確になった時点で、専用ラインの立ち上げなどにより多量の量産が可能な体制を段階的に構築する方針としている。

ガラス素材プレートについては、複数の製造方法の中で現在β版の製作に取り掛かっており、順調にいけば15年夏~秋に量産が開始できる見込みだ。樹脂素材にプレートについては、試作品の製造手法とは全く異なる新しい方法にトライして、素材から開発しているため技術課題の解決に多くの時間を要している。技術課題が解決しだいα版の開発に取り掛かり、15年秋~冬の量産開始を目標としている。また視野角拡大タイプの試作も行うようだ。

AIプレートは素材であるため、AIプレート供給先がAIプレートを活用して商品化することが量産の前提となる。したがってAIプレート供給先の実際の商品化までは一定の時間を要する可能性がある。このため16年4月期は小ロット案件を中心に確実に案件を積み重ね、その後の大ロット案件に繋げたいとしている。

なお8月6日には、10月7日~10日に幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2015」に出展すると発表している。AIプレートの最新技術や他の技術との融合など、空中ディスプレイが切り開く未来を提案する。

■NTTドコモ向けOEM供給を開始

15年5月には、NTTドコモが新たに開始する「フォトコレクションプラス」向けに、フォトブックおよびプリント商品の独占OEM供給を開始した。PPS事業において新たなサービスを開始することにより、急速に拡大しているスマートフォンによる写真アウトプット市場にも本格的にターゲットを拡大していくとしている。

なお14年12月スタートした新しいギフトサービスシステム「ギフトネットコム」については15年4月末をもってサービス終了した。販売実績が予想を下回る水準で推移し、短期的には収益改善が見込めないことから、サービス開始後短期間だが終了の早期決断が望ましいとの結論となった。15年4月期に減損損失77百万円を計上した。

■16年4月期は増収増益・増配予想

15年4月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)11億70百万円、第2四半期(8月~10月)11億55百万円、第3四半期(11月~1月)14億16百万円、第4四半期(2月~4月)12億37百万円、営業利益は第1四半期1億55百万円、第2四半期1億26百万円、第3四半期2億60百万円、第4四半期97百万円だった。

また15年4月期の配当性向は31.5%だった。ROEは14年4月期比1.4ポイント低下して11.3%、自己資本比率は同1.1ポイント上昇して85.6%となった。

今期(16年4月期)の非連結業績予想(6月9日公表)は、売上高が前期比8.9%増の54億22百万円、営業利益が同14.1%増の7億28百万円、経常利益が同13.8%増の7億32百万円、純利益が同13.4%増の4億81百万円としている。

配当予想は同1円増配の年間9円(期末一括)で予想配当性向は31.2%となる。配当の基本方針については配当性向30%を目安としている。

セグメント別売上高の計画は、MDS事業が同4.5%増の23億84百万円、PPS事業が同10.0%増の29億01百万円、AI事業が同2.4倍の1億33百万円、その他が3百万円としている。

売上面では既存分野のMDS事業、PPS事業が引き続き順調に推移して増収基調だ。PPS事業ではNTTドコモ向けOEM供給も寄与する。新規分野のAI事業では試作品やガラス素材の小ロット量産品の販売を見込んでいる。

利益面では、NTTドコモ向けOEM供給に関してコストが先行するため初年度は赤字を見込み、またギフトネットコムも10月までは商品交換のためのサービスを継続するため一定のコストが発生する。ただし全体としては増収効果に加えて、有形固定資産の減価償却方法変更(定率法から定額法に変更)も寄与して増益予想だ。

■株価は地合い悪化の影響で売られ過ぎ感

株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して自社サービス(マイブック)の割引利用券を贈呈している。14年11月1日付株式4分割後100株以上400株未満所有株主に対して1000円割引利用券1枚、400株以上2000株未満所有株主に対して1000円割引利用券2枚、2000株以上所有株主に対して1000円割引利用券3枚を贈呈する。

株価の動きを見ると、2500円近辺でのモミ合いから下放れ、7月下旬以降は全般地合い悪化も影響して水準を切り下げた。そして8月24日にはストップ安となる1495円まで急落して年初来安値を更新した。ただし個別の悪材料は見当たらず、地合い悪化の流れに押された形だ。

8月24日の終値1495円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS28円88銭で算出)は52倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間9円で算出)は0.6%近辺、そして前期実績PBR(前期実績のBPS230円69銭で算出)は6.5倍近辺である。

週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となって水準を切り下げた。ただし日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が30%程度まで拡大して売られ過ぎ感を強めている。空中結像AI事業は量産化に向けて着実に進展しており、16年4月期増収増益・増配予想も見直して反発のタイミングだろう。

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