LibWorkは反発の動き、23年6月期予想を下方修正だが24年6月期回復期待

LibWork<1431>(東証グロース)は熊本県を地盤として九州圏および首都圏に展開する注文住宅メーカーである。デジタルマーケティングによる独自の集客手法を特徴として、全国展開、住宅版SPAモデルへの進化、さらにSDGsへの取り組みを強化している。23年6月期第3四半期累計は大幅減益だった。期前半の受注落ち込みによる販売伸び悩みや資材価格高騰などが影響した。そして通期予想を下方修正して大幅減益予想とした。ただし受注は22年10月以降に回復傾向となっている。デジタルマーケティング強化や売上総利益率改善に向けた各種施策など、積極的な事業展開で24年6月期の収益回復を期待したい。株価は下方修正を嫌気する場面があったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■熊本県を地盤として全国展開を目指す注文住宅メーカー

熊本県を地盤として九州圏(熊本県、佐賀県、福岡県、大分県)および首都圏(千葉県)に展開する注文住宅メーカーである。第一次取得層を主ターゲットとして、省エネ性能に優れた住宅を提供している。全国展開を目指し、20年7月にタクエーホーム(神奈川県横浜市)を子会社化した。

また23年7月には、製材加工販売を展開する幸の国木材工業(熊本県山鹿市)を子会社化予定である。木材の安定供給を受けられる体制を構築する。

■異業種ブランドとのコラボレーションも活用した商品・出店戦略

出店戦略としては関東への出店を加速するとともに、23年6月までに全国の店舗網を35店舗(21年3月現在16店舗、本店含む)に拡大する方針としている。異業種ブランドとのコラボレーションも積極活用する方針だ。

MUJI HOUSEとネットワーク加入契約(フランチャイズ契約)した「無印良品の家」については、熊本エリアと福岡エリアで独占営業権を取得している。

20年3月にアダストリア<2685>と提携した「ink」ブランド住宅については、22年12月に大分県内最大級の複合商業施設「パークプレイス大分」に、ショッピングモール向けインショップ型モデルハウス「sketch」を「ink」ブランド住宅で開設した。さらに23年5月には、アダストリアのスタイルエディトリアルブランド「niko and ...」がプロデュースする戸建商品「niko and ... EDIT HOUSE」のIPライセンス販売を、全国のハウスメーカー・工務店向けに開始した。Lib Work幕張ハウジングパーク店(千葉市花見川区)にモデルハウスを仮設した。一般的な住宅FCと異なり、「niko and ... EDIT HOUSE」の世界観を表現するものであれば、その範囲内で加盟業者が価格を自由に設定・受注・建築できる。

20年12月にサザビーリーグと提携した「Afternoon Tea HOUSE」ブランド住宅については、21年9月に大分市に初出店、22年1月に千葉市に2店舗目、22年5月に福岡市に3店舗目、22年9月に熊本市に4店舗目を出店した。

21年12月には、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)<6085>が運営する「プロトバンクステーション」への加盟契約を締結した。PROTO BANKはASJ社の建築家ネットワークで設計された約1000件の高級既成住宅の図面を再利用できるプラットフォームである。本契約によって「Lib Work ステーション」として高級既成住宅の販売を開始する。

22年8月には、千趣会<8165>とのコラボレーションによる通販チャネルを用いた戸建新商品の共同開発契約を締結した。23年を目途に商品の完成を予定している。23年3月には再春館製薬所との戸建商品共同開発契約締結を発表した。新商品を開発し、九州エリアで販売開始した後に全国に販売エリアを拡大する方針だ。

■デジタルマーケティングによる独自の集客手法が特徴

一般的な常設展示場(モデルハウス)への集客ではなく、戸建関連カテゴリーポータルサイト(土地探しサイトのe土地net、施工例サイトのe注文住宅net、平屋サイトのe平屋net)などによるデジタルマーケティングによる独自の集客手法を特徴として、大幅なコストダウンを実現している。WEBはエリアに依存しないため全国展開も容易になる。またポータルサイトの広告掲載料と仲介手数料を不要としているため、多数の最新の土地情報が集まりやすい。

関東圏における集客活動を強化するため「e土地net 神奈川版」や「e土地net 千葉版」も開設している。さらに建売物件に特化した不動産仲介プラットフォーム「e建売net」を立ち上げて仲介事業も開始した。22年1月には「eマイホームnet」を開設した。多種多様な住宅ブランドのカタログを電子カタログとしてまとめて取り寄せることができる。22年2月には戸建のWEBメディア「家づくりオンライン」を新たに開設した。住宅を建てる際のさまざまな疑問や知りたい情報を得ることができる。22年7月にはマイホーム購入を考えている方のための間取り検索サイト「e間取りプランnet」を開設した。

20年1月に開設したYouTubeチャンネル「LibWork ch」の活用も推進している。同社が実際に建築した住宅を玄関からリビング、それぞれの居室まで同社社員自らが紹介する「ルームツアー動画」を配信している。23年6月までに7万人の登録者数を目指し、23年1月には登録者数が5万人を突破した。なお「LibWork IRチャンネル」も開設している。

なお23年4月には、家づくりの専門メディアとして22年2月に開設したオウンドメディア「リブタイムズ」が、YaHoo!JAPANトップページのタイムラインへの配信を開始した。

■23年6月期株式時価総額500億円目指す

中期経営計画「NEXT STAGE 2023」では、目標とする主要KPIとして、23年6月期株式時価総額500億円、売上高170億円、営業利益9億円、営業利益率5.3%、ROE16%、戸建粗利率30%、店舗数35店舗、Web集客数年率50%増加、YouTubeチャンネル登録数7万人、サブスクモデル営業利益0.4億円を掲げている。

成長戦略として全国展開の加速、デジタル集客の拡大、住宅版SPAモデル確立、サブスクリプションモデルによる全国の工務店・ビルダー支援事業の収益化などを推進する。

全国展開の加速ではエリア・店舗数の拡大による日本全国への出店など、デジタル集客の拡大では戸建関連カテゴリーポータルサイトの充実・拡大、戸建カテゴリーに特化した集客サイトや他社建売物件仲介サイトなど新規サイトのリリース、YouTubeチャンネル「LibWork ch」の活用などを推進する。

住宅版SPAモデル確立では、主要5工事(給排水設備工事、基礎工事、建て方工事、サイディング工事、地盤改良工事)の内製化により、戸建売上総利益率を35%まで高めるとともに、自社独自工法の開発を開始する。21年5月には東京理科大学と「新構造技術を用いた木造住宅耐震化向上」を目的とする共同研究開発契約を締結した。

また、今までにないイノベーティブな「家」として3Dプリンター住宅「DEEPα」の研究開発に着手し、21年11月に家所亮二建築事務所とのデザイン業務委託契約締結を発表した。22年12月までにコンパクトな3Dプリンター住宅の試作品を完成させる予定だ。クリエイティブなデザイン表現やコスト削減・工期短縮が可能になり、建設業界の人手不足という課題の解決にもつながる。

新規事業では22年1月に、成長分野であるリフォーム・リノベーション事業領域に参入するため専門部署を立ち上げた。

22年6月には、安心計画(福岡市博多区)と共同開発した住宅プラン提案サービス「My Home Robo(マイホームロボ)」の開始を発表した。AIを活用した全国の工務店・ビルダー支援システムで、サブスクリプションモデルによって全国の工務店にサービス展開する。スタート当初は安心計画の取引先である約4000社への営業を開始し、その後は全国の工務店、ビルダー、設計事務所、不動産会社など合計10万社以上にアプローチする方針としている。23年5月には、OpenAI社が提供するAIツール「ChatGPT」を活用して新機能を搭載した。

■SDGs宣言

SDGsへの取り組みを強化するため、内閣府が設置した「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に参画している。21年3月にはSDGs宣言を行い、サスティナブルな住まいづくりを通じて、豊かな暮らしと幸せの実現、地球環境への配慮に貢献する方針を打ち出した。また、一般社団法人熊本県こども食堂ネットワークへの寄付、グリムスソーラーと共同で商品化した太陽光発電システム導入費用が無料となる「Lib Work Solar Free」も提供している。

21年4月には、国土交通省が行う社会実験のIT重説実施時における「重要事項説明書等の電磁的方法による交付」の登録事業者として認定され、宅地建物取引の売買時においても「IT重説」および「電子書面交付」を開始した。DXを推進して、SDGs番号8「働きがいも、経済成長も」およびSDGs番号12「つくる責任、つかう責任」にも寄与できるとしている。21年8月には熊本県が21年1月に創設した熊本県SDGs登録制度に申請し、第1期の登録事業者として登録された。

22年3月には、一般社団法人熊本県こども食堂ネットワークおよび一般社団法人ひのくにスマイルプロジェクトへ寄附を行った。また経済産業省ならびに日本健康会議が共同で運営する健康経営優良法人認定制度において、健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)に認定された。

22年9月には、テスラPowerwallプレミアム認定販売施工会社であるゴウダ(大阪府)と業務提携し、テスラ家庭用蓄電池Powerwallの販売を開始すると発表した。また、自社事業活動で排出するCO2排出量を30年までに実質ゼロとするカーボンニュートラル宣言、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同およびTCFDコンソーシアム参画を発表した。

22年10月にはGX(グリーントランスフォーメーション)リーグ基本構想への賛同を表明した。GXリーグは、2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXへの挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が、同様の取り組みを行う企業群や官・学とともに協業する場として、22年2月に基本構想を公表した。22年9月末時点で496社が基本構想に賛同している。

22年12月には木造戸建てモデル住宅について業界初となるSuMPO環境ラベルプログラムのCFP(カーボンフットプリント)宣言登録を発表した。より環境負荷の少ない資材の利用等に取り組むことでCO2排出量の削減に努め、サスティナブルな家づくりに取り組むとしている。さらに、くまもとSDGsアワード2022において「くまもとSDGs牽引部門優秀賞」に選出された。

23年3月には同社の瀬口力代表取締役社長による初の著書「2代目社長の住宅イノベーション」(幻冬舎)が出版された。また健康経営優良法人2023において2年連続(22年は中小規模法人部門、23年は大規模法人部門)で認定された。23年5月には、パリ協定の目標達成を目指したSBT(Science Based Targets)の認定を取得した。

■22年6月期3Q累計減益で通期予想を下方修正、24年6月期回復期待

23年6月期連結業績予想(22年11月10日付で下方修正、23年5月11日付で2回目の下方修正)は、売上高が22年6月期比3.2%増の142億円、営業利益が60.1%減の2億66百万円、経常利益が60.4%減の2億80百万円、親会社株主帰属当期純利益が65.1%減の1億55百万円としている。配当(四半期配当)予想は据え置いて22年6月期比60銭増配の6円40銭(各四半期末1円60銭)としている。

前回予想に対して売上高を23億円、営業利益を4億34百万円、経常利益を4億40百万円、親会社株主帰属当期純利益を3億05百万円、それぞれ下方修正した。

第3四半期累計は、売上高が前年同期比7.7%増の92億69百万円、営業利益が66.5%減の61百万円、経常利益が65.9%減の69百万円、親会社株主帰属四半期純利益が90.4%減の10百万円だった。

増収ながら大幅減益だった。期前半の受注落ち込みの影響で売上が伸び悩み、住宅資材価格高騰による原価率上昇や人件費の増加なども影響した。子会社タクエーホームにおける建築用地仕入遅延も影響した。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が21億87百万円で営業利益が2億64百万円の赤字、第2四半期は売上高が43億37百万円で営業利益が3億48百万円の黒字、第3四半期は売上高が27億45百万円で営業利益が23百万円の赤字だった。

23年6月期は期前半の受注落ち込みの影響などで大幅減益予想となったが、受注は22年10月以降に回復傾向(速報ベースの四半期別受注棟数は22年7~9月が前年同期比42%、22年10~12月が118%、23年1~3月が101%、受注金額は22年7~9月が47%、22年10~12月が118%、23年1~3月が119%)となっている。デジタルマーケティング強化や売上総利益率改善に向けた各種施策など、積極的な事業展開で24年6月期の収益回復を期待したい。

■配当は四半期配当、株主優待制度は保有期間・株式数に応じて贈呈

配当は四半期配当を行っている。23年6月期の配当予想は22年6月期比60銭増配の6円40銭(各四半期末1円60銭)としている。連続増配予想である。

株主優待制度は、各四半期(9月、12月、3月、6月)末時点の株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。21年6月期以降は保有期間および保有株式数に応じて、株主優待ポイントおよびクオカードを贈呈している。さらに21年9月末対象から一部変更して大口保有株主へのポイント付与率を向上させた。

■株価は反発の動き

株価は下方修正を嫌気して急落する場面があったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。5月26日の終値は787円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS7円01銭で算出)は約112倍、今期予想配当利回り(会社予想の6円40銭で算出)は約0.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS152円89銭で算出)は約5.1倍、そして時価総額は約183億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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