綿半ホールディングスは調整一巡、24年3月期増収増益・9期連続増配予想

綿半ホールディングス<3199>(東証プライム)は、ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとする建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。経営方針には「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」を掲げている。23年3月期は営業・経常小幅増益だった。小売事業が新規出店コストや電力料金値上げの影響を受け、貿易事業も円安影響を受けたが、建設事業の順調な工事進捗が牽引した。24年3月期は増収増益・9期連続増配予想としている。各事業とも概ね堅調に推移する見込みだ。外部環境の変化に対応して新・中期経営計画を策定し、最終年度27年3月期の目標値に経常利益45億円を掲げている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏から反落して水準を切り下げたが、利益確定売り一巡して出直りを期待したい。

■小売事業、建設事業、貿易事業を展開

ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとする建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。

23年3月期は小売事業の売上高が22年3月期比1.4%増の776億11百万円で営業利益(全社費用等調整前)が58.0%減の7億62百万円、建設事業の売上高が55.8%増の496億02百万円で営業利益が122.7%増の18億88百万円、貿易事業の売上高が3.2%増の60億01百万円で営業利益が17.4%減の5億76百万円、その他(不動産事業など)の売上高が284.9%増の10億83百万円で営業利益が17.2%増の1億68百万円だった。

■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進

小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。スーパーセンターは10万点を超える豊富な品揃えに加えて、生鮮食品を加えることで主婦層を取り込み、平日・土日の平準化を図っていることが特徴である。

基本戦略として、M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、子会社の綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革、ネット通販の拡大などを推進している。

22年8月には綿半スーパーセンター上田店(長野県上田市)をオープンした。食品スーパー、ホームセンター、ドラッグストアの3業態を一つにまとめたグループ最大級の店舗である。22年9月には、長野市中心部・行政庁舎にも近い権藤地区に綿半スーパーセンター権堂店(長野県長野市権堂町)をオープンした。中心市街地型店舗開発を推進しており、生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗としての出店である。

周辺領域への展開では、22年7月に綿半パートナーズが、ネットショップ立ち上げに必要な機能をワンパッケージで提供する「PayTouch」をオープンした。23年2月には綿半ドットコムが、創業25年で年間利用者2万人・年間買取100万品を誇る買取専門店「買取けんさく君」の四谷営業所をオープンした。23年4月には長野県でドラッグストアを展開する綿半ドラッグが通販サイトをオープンした。

M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネット(現:綿半ドットコム)を子会社化、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店(現:綿半三原商店)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県)を子会社化、21年3月に組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県)を子会社化、21年11月にヴィンテージスタイルの家具・インテリアショップ「藤越 FUGGICOSI」を展開する藤越(静岡県)を子会社化した。

22年4月には建物管理・不動産売買のAIC(東京都新宿区)を子会社化した。また藤越とリグナを合併(新社名リグナ)した。家具・インテリアの仕入機能やネット通販のノウハウを融合し、家具販売事業の効率化と収益性向上を図る。22年7月には中村ファームを子会社化(綿半ファームへ商号変更)して養豚事業に参入した。

23年3月には子会社の綿半ホームエイドを通じて小諸動物病院の全株式を取得した。綿半ドラッグと連携した動物用医薬品の取り扱い、犬猫療法食等の企画販売、店舗におけるワクチン投与やトリミング事業の展開など、幅広くペット市場に参入する方針としている。またSMBCコンシューマーファイナンスと業務提携した。綿半パートナーズが運営するネットショップ運営サービス「PayTouch」において、SMBCコンシューマーファイナンスが展開するローンが申込できるようになった。

小売事業の月次売上(速報値)を見ると、23年4月は全店が106.0%、既存店が102.5%だった。トレンド商品の売場拡大でペット用品が伸長し、商品開発を加速した食品・日用品のPB商品が好調に推移した。既存店の客単価は21年12月から17ヶ月連続前年比プラスとなっている。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み、木造住宅も拡大

建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。長尺屋根工事は、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行う「WKカバー工法」で特許を取得している。自走式立体駐車場工事は、柱が少なく利用者が使いやすい「ステージW」など、多数の国土交通省認定を有して国内トップシェアを誇っている。

19年8月には戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(静岡県)を子会社化、21年8月には戸建木造住宅販売・加盟店運営の夢ハウス(新潟県)を子会社化した。木造住宅分野を第4の柱として注力する。

22年12月には、自然素材・天然無垢材で造る木造住宅の新ブランド「cotton1/2」(木造軸組パネル工法)を発表した。子会社の綿半林業の生産ラインと品質、および子会社のサイエンスホームの合理化工法と販売戦略を合わせて、第3の住宅グループとして23年1月より始動した。将来的には年間1万2000棟という目標を掲げ、木造住宅のニュースタンダードを目指すとしている。23年5月には木造システム建築「PREST WOOD」の販売を開始した。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを販売

貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。

ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。

21年12月には、海外市場への販売拡大に向けてAlibaba.comに自社サイトを掲載し、自社原料商品の取引を開始した。22年7月には、100%天然植物由来の動物飼料添加物「Nutrafito Plus」の販売を開始した。

23年1月には綿半トレーディングが、果実・野菜等の食品輸入を展開するカサナチュラルの株式20%取得して資本業務提携した。天然原料の新規開拓・調達を加速し、グループ小売業店舗で取り扱う食品の拡充にも取り組む方針としている。

■中期経営計画

23年5月に新・中期経営計画(24年3月期~27年3月期)を策定した。物価上昇・電気代高騰など外部環境の変化に対応し、前・中期経営計画(23年3月期~25年3月期)を見直した。経営方針は引き続き「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」として、目標数値は最終年度27年3月期の売上高1500億円、経常利益45億円、経常利益率3.0%としている。

地域との繋がりを大切にしながら、地域の発展に尽くすとともに、目標数値達成に向けて諸施策を実践し、企業価値向上を図るとしている。なお23年5月には、綿半グループ従業員持株会の奨励金付与率引き上げを発表した。また、従業員の生活支援とモチベーション向上を目的として、物価支援一時金の支給(23年3月に5万円支給)に加え、最大12%の賃上げ(持株会の奨励金付与率引き上げを含む)を決定した。

■23年3月期は営業・経常小幅増益、24年3月期増益・9期連続増配予想

23年3月期の連結業績は売上高が22年3月期比17.3%増の1342億99百万円、営業利益が0.1%増の24億02百万円、経常利益が4.1%増の30億57百万円、親会社株主帰属当期純利益が前期計上の負ののれん発生益1億97百万円の剥落で25.0%減の16億53百万円だった。配当は22年3月期比1円増配の22円(期末一括)とした。配当性向は26.5%となる。

増収、小幅営業・経常増益だった。小売事業が新規出店コストや電力料金値上げの影響を受け、貿易事業も円安影響を受けたが、建設事業における順調な工事進捗が牽引した。

小売事業は売上高が1.4%増の776億11百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が58.0%減の7億62百万円だった。売上面は、22年8月にオープンした綿半スーパーセンター上田店、22年9月にオープンしたグループ初の都市型店となる権堂店も寄与して増収だが、利益面は新規出店コストや電力料金値上げの影響で減益だった。

建設事業は売上高が55.8%増の496億02百万円、利益が122.7%増の18億88百万円だった。資材価格高騰の影響を受けたが、豊富な受注残を背景に各分野の工事が順調に進捗して大幅増収増益だった。なお22年4月に長野県高森町の新工場が稼働し、鉄構工場機能の集約や自動化により、加工能力向上と効率化を推進した。

貿易事業は売上高が3.2%増の60億01百万円だが、利益が17.4%減の5億76百万円だった。円安や物流コスト上昇などの影響で減益だった。

その他(不動産事業など)は売上高が284.9%増の10億83百万円、利益が17.2%増の1億68百万円だった。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が309億69百万円で営業利益が4億97百万円、第2四半期は売上高が333億19百万円で営業利益が6億29百万円、第3四半期は売上高が363億05百万円で営業利益が9億82百万円、第4四半期は売上高が337億06百万円で営業利益が2億94百万円だった。

24年3月期連結業績予想は売上高が23年3月期比2.8%増の1380億円、営業利益が13.4%増の27億24百万円、経常利益が2.0%増の31億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が11.9%増の18億50百万円としている。配当予想は23年3月期比1円増配の23円(期末一括)としている。9期連続増配予想で、予想配当性向は24.7%となる。

セグメント別の計画は、小売事業の売上高が3.6%増の804億35百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が25.9%増の9億60百万円、建設事業の売上高が0.4%増の498億円で利益が0.1%増の18億90百万円、貿易事業の売上高が2.3%増の61億37百万円で利益が27.3%増の7億34百万円としている。各事業とも概ね堅調に推移する見込みだ。

各事業とも概ね堅調に推移する見込みだ。外部環境の変化に対応して新・中期経営計画を策定し、最終年度27年3月期の目標値に経常利益45億円を掲げている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年9月末の継続保有株主対象

株主優待制度は毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続的に保有している株主を対象として、信州特産品や綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなどを贈呈(100株以上継続保有は1点、300株以上継続保有は2点を選択)している。なお22年8月に株主優待制度の変更(拡充)を発表し、選択優待品を従来の13点から14点に拡充(詳細は会社HP参照)した。22年9月末対象から実施した。

■株価は利益確定売り一巡

株価は戻り高値圏から反落して水準を切り下げたが、利益確定売り一巡して出直りを期待したい。5月26日の終値は1351円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS92円99銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の23円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1068円23銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約269億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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