■株価は200円幅のボックス往来から脱出なるか
ELEMENTS<5246>(東証グロース)は、今年4月以来、1200円台を上限、1000円大台割れを下限とする200円幅のボックス往来を続け、この下限の今年4月10日の安値940円に並ぶ安値水準からやや切り返して引けており、下値抵抗力の強さを示唆している。eKYC(電子本人確認)市場で、同社の個人認証ソリューション「LIQUID eKYC」が、4年連続でシェア・トップとなったことを手掛かりに成長可能性の高さを期待するAI(人工知能)関連株買いが継続した。ヒストリアル的にも「LIQUID eKYC」の新規導入のたびにストップ高を演じており、この急騰特性を先取りする待ち伏せ買いも意識されている。
■自動化実現のAI審査機能と低コスト導入の新プランの提供が寄与
eKYC市場は、オンラインサービス利用時や金融機関のWeb口座開設時などで本人確認の機会が増加していることで拡大しており、調査会社のアイ・ティ・アール(東京都新宿区)によると、市場規模は、2021年度が前年度比ほぼ倍増の44億3000万円、2023年度が同52.1%増の64億円となり、このあとも年率28%と高成長し2026年度には152億円に高成長すると予測されている。このなかでELMENTSは、2022年度のベンダー別売上金額のシェアで4年連続のトップとなった。昨年6月に本人確認業務を自動化するAI審査機能と、導入の手間を省き低コストで利用できる新プランの提供を開始したことが寄与した。
業績は、研究開発の先行投資を積極化していることから赤字が続いている。今2023年11月期業績は、売り上げ19億3000万円(前期比16.9%増)、営業利益6億3600万円の赤字(前期は5億7900万円の赤字)、
経常利益7億1000万円の赤字(同6億円の赤字)、純利益6億7000万円の赤字(同5億6100万円の赤字)と予想されている。このなかで注力分野の個人認証事業の売り上げは、本人確認の法的義務のない事業者やセルフレジ向けに酒類・たばこ販売のための年齢確認などで導入が進むため16億6100万円(前期比36%増)と高成長し業績を牽引する。
■200円幅のボックス往来が煮詰まり下限から最高値奪回にチャレンジ
株価は、昨年12月27日に公開価格160円で新規株式公開(IPO)され312円で初値をつけ、初値比ストップ高を交えて651円まで買い進まれたが、今11月期業績の赤字継続予想が響いて今度はストップ安して上場来安値444円と売られた。同安値からは、セルフレジ向け年齢確認サービスの開始でストップ高して1000円大台に乗せ、武蔵野銀行<8336>(東証プライム)の新規導入とともに上場来高値1385円をつけた。その後は、東証グロース市場の低迷とともに980円へ調整したが、マイナンバー向けのスマートフォン技術による本人確認サービスの提供でもストップ高し、金融機関やアパレル向けの新規導入も加わり1240円までリバンドしたあと、1000円大台割れを下限、1200円台を上限とする200円幅のボックス往来を続けてきた。足元は、このボックス下限で煮詰まり感を強めており、ボックス上限抜けから最高値奪回にチャレンジしよう。(情報提供:日本インタビュ新聞・株式投資情報編集長=浅妻昭治)