【アナリスト水田雅展の銘柄分析】キャリアリンクは上場来高値から一旦反落したが中期成長力を評価する流れに変化なし

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 キャリアリンク<6070>(東1)は総合人材サービス事業を展開している。株価は8月18日の上場来高値2640円まで上伸した。その後は地合い悪化の影響で一旦反落したが中期成長力を評価する流れに変化はないだろう。マイナンバー制度関連でも大型BPO案件を受注することが期待され、16年2月期業績の会社予想は増額が濃厚だ。目先的な利益確定売り一巡後に上値を試す展開だろう。

■BPO関連事業が主力の総合人材サービス企業

 官公庁・地方公共団体・民間企業向けのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)関連事業を主力として、企業等のコンタクトセンター(コールセンター)向けCRM(カスターマー・リレーションシップ・マネジメント)関連事業、一般事務職分野の一般事務事業、さらに製造・物流分野の製造技術系事業など、人材派遣・紹介や業務請負などの総合人材サービス事業を展開している。

 なお15年2月期の事業別売上構成比は、BPO関連事業が60.3%、CRM関連事業が21.8%、一般事務事業が6.8%、そして製造技術系事業が11.1%だった。

■顧客企業の業務効率化を実現する「チーム派遣」に強み

 顧客の業務効率化や品質向上などを実現する企画提案型の人材派遣および業務請負が特徴である。特にBPO関連事業では、企画提案による顧客企業の業務効率化や業務処理の品質向上を強みとして、それらを実現するために「単なるスタッフ派遣」ではなく、経験豊富な社員をリーダーとして編成したチームを派遣する「チーム派遣」を特徴としている。顧客にとっては、自社による導入時の研修や導入後の業務指導などに係る負担が軽減され、発注から短期間で大量業務処理の稼働開始が可能になるというメリットもある。

 BPO事業者からの受注を含めて1000名を超える大型案件でも、稼働開始まで短期間で対応できるノウハウを有していることも強みだ。スタッフに対してはキャリアパス制度などを活用して能力、満足度、出勤率、稼働率を高める仕組みを構築しており、こうした仕組みもチーム派遣や大型案件に対する短期間での対応を支えている。

 中期的な経営基盤強化に向けて、BPO関連事業における官公庁・地方公共団体関連の大型特需案件や成長市場である民間BPO案件の受注拡大、高品質で顧客満足度の高いBPOサービス提供の強化、M&Aも活用したBPO関連事業の領域拡大、CRM関連事業や製造技術系事業における高利益案件をメインターゲットとした受注活動の強化、そして業容拡大に向けた人材採用・育成の強化を推進している。

■16年2月期業績の会社予想は増額が濃厚

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)28億78百万円、第2四半期(6月~8月)36億08百万円、第3四半期(9月~11月)38億41百万円、第4四半期(12月~2月)36億21百万円、営業利益は第1四半期1億15百万円、第2四半期2億94百万円、第3四半期2億71百万円、第4四半期1億51百万円だった。

 また15年2月期の配当性向は20.4%だった。ROEは14年2月期比15.1ポイント上昇して24.5%、自己資本比率は同11.4ポイント低下して41.3%だった。

 今期(16年2月期)の非連結業績予想(4月14日公表)は、売上高が前期比17.4%増の163億68百万円で、営業利益が同14.4%増の9億51百万円、経常利益が同14.2%増の9億38百万円、そして純利益が同15.4%増の5億62百万円としている。配当予想は同2円増配の年間18円(期末一括)で予想配当性向は20.1%となる。

 主力のBPO関連事業の受注増加と、BPO大型案件における業務処理効率化の進展が牽引して増収増益基調だ。事業部門別売上の計画はBPO関連事業が約15%増収、CRM関連事業が約20%増収、一般事務事業が約5%増収、製造技術系事業が約20%増収としている。マイナンバー(社会保障・税番号)制度関連については、地方自治体・民間企業向けで若干程度の織り込みにとどめているようだ。

 第1四半期(3月~5月)は売上高が前年同期比34.6%増の38億73百万円の大幅増収で、営業利益は同63.6%増の1億89百万円、経常利益は同62.6%増の1億84百万円、純利益は同72.9%増の1億16百万円の大幅増益だった。全事業が好調に推移し、特にBPO関連事業の大幅増収が牽引した。売上総利益率は20.0%で同0.5ポイント低下したが、販管費比率は15.2%で同1.3ポイント低下した。

 事業部門別売上高は、BPO関連事業が稼働中の大型案件の新規業務拡大や新規案件の受注などで同51.7%増の23億77百万円、CRM関連事業が新規案件の獲得などで同11.4%増の8億30百万円、製造技術系事業が製薬・機械部品・自動二輪メーカーからの業務量増加などで同25.4%増の3億92百万円、一般事務事業が福岡地区における通販系案件など新規案件獲得で同8.2%増の2億72百万円だった。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.7%、営業利益が19.9%、経常利益が19.6%、純利益が20.6%である。やや低水準の形だが、既存案件の業務量拡大や新規案件の受注は好調に推移している。

 さらに業務効率化に向けた企画提案力、1000名以上の大型案件でも稼働開始まで短期間で対応できるノウハウ、官公庁向け大型BPO案件の受注実績などから、マイナンバー制度関連の受注が期待される。16年2月期会社予想には若干程度の織り込みにとどめているためプラス要因となりそうだ。

■BPO関連事業を成長エンジンとして、M&Aによる領域拡大も推進方針

 中期経営計画(16年2月期~18年2月期)では「売上高500億円」、目標値に18年2月期の売上高250億90百万円、営業利益15億20百万円、経常利益15億10百万円、純利益9億40百万円を掲げた。

 BPO関連事業を成長エンジンとした成長戦略を加速させる方針で、BPO関連事業の売上規模拡大、企画提案力・運用力の強化、M&Aによる領域拡大を重点戦略としている。

 特にBPO関連事業の拡大に向けて、BPOベンダー等との関係強化を推進するための営業推進部、人材育成を強化するための研修センター、人材採用・開発力を強化するための人材開発部を設置するなど新たな体制を構築した。またキャリアパス制度による社員登用増、無期雇用社員の採用増、高スキル・高スペック人材の確保などで「チーム派遣」を一段と強化する方針だ。

 事業部門別売上高の計画としては、BPO関連事業が高品質運用やIT分野を含めた事業領域拡大などで15年2月期比2.0倍の171億円、CRM関連事業が高利益案件をメインターゲットとして同42.0%増の43億円、製造技術系事業が製造業や流通業の高利益案件への戦略展開などで同64.2%増の25億円、一般事務事業が無期雇用・長期雇用を軸に高利益ビジネスモデルへの変革を目指して同11.2%増の10億円を掲げた。

 中期的に事業環境は良好だ。官公庁・地方公共団体関連では財政健全化に向けた費用抑制の流れ、サービス向上や業務効率化のニーズ増大も背景として、官から民間への業務委託・移管の増加が予想されている。民間企業関連ではコア事業への経営資源集中や固定費の変動費化の流れも背景として、業務のアウトソーシング化が一段と増加すると予想されている。BPO関連事業における優位性を発揮して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は上場来高値から一旦反落したが、利益確定売り一巡後に上値試す

 株主優待制度については毎年8月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。100株以上300株未満保有株主に対してオリジナルQUOカード1000円相当、300株以上保有株主に対してオリジナルQUOカード2000円相当を贈呈する。株主還元については現金配当と株主優待を合算した総合利回りの向上を目指している。

 株価の動きを見ると、2000円近辺のフシを突破して8月18日の上場来高値2640円まで上伸した。その後は地合い悪化の影響を受けて利益確定売りが優勢になり、8月24日は2130円まで調整した。ただし中期成長力を評価する流れに変化はなく、自律調整の範囲とも言えるだろう。

 8月24日の終値2132円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS89円80銭で算出)は23~24倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は0.9%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS349円63銭で算出)は6.1倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を一旦割り込んだが、週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線に接近して過熱感が解消し、切り返しのタイミングのようだ。マイナンバー制度関連でも大型BPO案件を受注することが期待され、16年2月期業績の会社予想は増額が濃厚だ。目先的な利益確定売り一巡後に上値を試す展開だろう。

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