ジェイテックは上値試す、24年3月期収益改善基調

ジェイテック<2479>(東証グロース)はテクノロジスト派遣の「技術商社」を標榜し、製造業の開発・設計部門に技術者を派遣する技術職知財リース事業を主力としている。成長戦略としては、テクノロジスト700名体制の早期実現に向けた人材採用・教育の強化など収益基盤強化を推進している。23年3月期は営業黒字転換した。技術職知財リース事業においてテクノロジストの稼働率と平均単価が上昇し、全社的な業務効率化なども寄与した。そして24年3月期もテクノロジストに対する需要が高水準に推移して大幅増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は24年3月期大幅増益予想を好感する形で反発の動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。

■技術者派遣の「技術職知財リース事業」が主力

製造業の開発・設計部門に技術者を派遣する技術職知財リース事業を主力として、子会社のジェイテックアドバンストテクノロジは一般派遣およびエンジニア派遣事業を展開している。

専門教育による知識を基盤として、新たな付加価値を顧客に提供する社員を「テクノロジスト」と呼称し、一般的なエンジニアと区別している。そして「技術商社」を標榜し、テクノロジストが保有する知恵を提供(リース)することで顧客とともに新たな価値を創造する「技術職知財リース事業」としている。

独立系の技術者派遣会社として、上場企業および優良中堅企業160社以上と幅広く取引があり、機械設計開発、電気・電子設計開発、ソフトウェア開発、建築設計の4分野を柱として、業種別にも幅広く展開していることが特徴だ。

23年3月期の連結ベースの業種別売上高構成比は、自動車関連が21%、産業用機器関連が21%、建築関連が17%、情報処理関連が14%、電子・電気機器関連が8%、半導体・集積回路関連が6%、情報・通信機器関連が4%、精密機器関連が3%、航空機・宇宙関連が2%、そして一般派遣・その他が4%だった。業種別売上構成比は分散化の傾向が継続し、特定の業種に偏らない構成となっている。

在籍テクノロジスト数は、23年4月1日時点で連結ベース435名(23年3月期末386名、23年4月新卒入社52名)となっている。なお大手企業の人材引き抜きなどで退職者が増加傾向のため、何らかの防衛策が求められる状況としている。また単体ベースの在籍テクノロジスト数は23年4月1日時点で210名(23年3月期末201名、23年4月新卒入社7名)となっている。グループ全体の状況と比べて、単体ベースの在籍者数は安定的としている。

平均稼働率(求職者を除く)の推移は、21年3月期の上期が98.1%、下期が97.9%、22年3月期の上期が89.8%、下期が93.9%、23年3月期の上期が95.6%、下期が97.2%となった。コロナ禍の影響が和らいで回復基調である。

単体ベースの稼働時間(平均月間工数)の推移は、21年3月期が173.8時間/人、22年3月期が177.6時間/人、23年3月期が177.3時間/人となっている。22年3月期から残業時間も徐々に増えている。

単体ベースの平均単価(知財リース)の推移は、21年3月期上期が4489円、下期が4491円、22年3月期上期が4479円、下期が4408円、23年3月期上期が4465円、下期が4498円となっている。22年3月期は21年4月に過去最多となる100名の新卒テクノロジストが入社した影響で平均単価を押し下げたが、23年3月期下期には下落前を超える水準に上昇した。23年4月以降も価格改訂に注力する方針としている。

23年3月期の売上上位顧客企業(順不同)は、デンソーテン、ヤマハ発動機、本田技研工業、アイシンソフトウェア、リコージャパン、日立産業制御ソリューションズ、ヤマハ、三菱重工業、東レエンジニアリング、エイチ・シー・ネットワークスだった。

■テクノロジスト700名体制の早期実現目指す

中期経営計画(24年3月期~26年3月期)では、最終年度26年3月期の業績目標値を売上高44億円、営業利益5億20百万円、経常利益5億20百万円、親会社株主帰属当期純利益2億86百万円としている。基本方針としては、持続的な成長に向けた収益基盤の強化、財務基盤の一層の強化と安定した株主還元、投資の拡大による成長の促進と多角的な収益源の確保を推進し、技術職知財リース事業の事業基盤をより強固なものとしつつ、事業の多角化により企業価値の向上・株主価値の向上を実現することを目指す。

持続的な成長に向けた収益基盤の強化では、能力を重視した厳選採用の継続によるテクノロジスト700名体制の早期実現、技術力と高いヒューマンスキルを兼ね備えたテクノロジストの育成、グループ内連携による採用・営業の強化と効率化を推進する。財務基盤の一層の強化と安定した株主還元では、持続的成長を支えるための財務体質強化、社内分配と安定継続的な株主還元を推進する。投資の拡大による成長の促進と多角的な収益源の確保では、新技術分野へのアライアンスやM&Aへの注力、収益源の多角化による事業ポートフォリオ拡大を推進する。

21年9月には事業拡大と採用強化に向けた北海道地方の拠点として札幌営業所を開設した。21年11月には東海エリアでの採用強化に向けて浜松営業所を移転・増床した。

22年1月には、リスキリングビジネスおよび空間ビジネスの新規事業領域として「まなクル事業」を発表した。独自の人材育成カリキュラムや最新技術に関するノウハウを基軸として生活支援コミュニティー・スペースを提供し、法人から個人に至るまで「働くこと」「学ぶこと」を支援するサービスである。23年3月期末の直営店は全国8拠点で、24年3月期はフランチャイズ出店を計画している。

なお、23年3月には「まなクル事業」の拠点を活用した上名古屋学区防災安心まちづくり委員会(名古屋市)との「大規模災害時における地域と事業所との支援協力に関する覚書」の締結を発表した。全国8拠点の「まなクル事業」を活用して社会貢献活動に貢献する方針だ。また、日本ウインドサーフィン協会とのオフィシャルパートナー契約締結を発表した。日本ウインドサーフィン協会のオフィシャルパートナーとして、大学生対象の種目である学連主催の主要な大会の振興を積極的に支援する。

■グロース市場上場維持基準適合に向けた計画書

22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではグロース市場を選択し、グロース市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

24年3月期までにグロース市場の上場維持基準を充たすことを目指し、主力の技術職知財事業の持続的成長による収益力の向上、持続的な成長に向けた資本政策の実行、IR活動の強化など各種施策の取り組みを推進する。株主還元については、安定的かつ継続的な配当を基本として、配当性向20%の実現を目指すとしている。なお24年3月期までに時価総額基準を充たすことができなかった場合は、目標を新スタンダード市場への市場区分変更に切り替えるとしている。

■23年3月期大幅増益で増配、24年3月期も大幅増益予想

23年3月期の連結業績は、売上高が22年3月期比6.2%増の31億77百万円、営業利益が1億78百万円の黒字(22年3月期は1億18百万円の赤字)、経常利益が85.3%増の2億17百万円、親会社株主帰属当期純利益が118.4%増の1億31百万円だった。配当は5月11日付で期末4円上方修正して、22年3月期比4円増配の5円(期末一括)とした。配当性向は30.2%である。

コロナ禍の影響が和らいでテクノロジストに対する需要が回復傾向となった。そしてテクノロジストの稼働率が高水準に推移し、高付加価値業務への配属やローテーション等の施策によってテクノロジストの平均単価が上昇した。さらに全社的な業務効率化やコスト削減策なども寄与して営業黒字転換した。なお営業外収益では助成金収入が減少(22年3月期は2億06百万円、23年3月期は39百万円)した。また法人税等調整額(益)▲29百万円を計上した。

技術職知財リース事業は売上高が6.3%増の31億45百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が106.7%増の5億47百万円だった。テクノロジストの稼働率上昇と平均単価上昇で大幅増益だった。一般派遣およびエンジニア派遣事業は売上高が2.4%減の32百万円で、利益が5百万円の黒字(22年3月期は28百万円の赤字)だった。コロナ禍の影響で減収だが、販管費削減などで黒字転換した。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が7億82百万円で営業利益が25百万円、第2四半期は売上高が7億96百万円で営業利益が9百万円、第3四半期は売上高が8億06百万円で営業利益が1億05百万円、第4四半期は売上高が7億93百万円で営業利益が39百万円だった。

24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比18.0%増の37億円50百万円、営業利益が73.2%増の3億10百万円、経常利益が42.4%増の3億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が29.2%増の1億70百万円としている。配当予想は未定としている。

テクノロジストに対する需要が高水準に推移して大幅増益予想としている。待機者数の減少で稼働率が向上し、売上原価率が低下傾向である。なお、大手企業からの人材引き抜きへの防衛対策として、新聞等マスコミ報道ベースの平均を上回る大幅な昇給を計画している。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

株価は2月の年初来高値圏から一旦反落したが、24年3月期大幅増益予想を好感する形で反発の動きを強めている。週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインの形となった。上値を試す展開を期待したい。6月1日の終値は309円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS21円34銭で算出)は約14倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS134円06銭で算出)は約2.3倍、そして時価総額は約26億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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