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巴工業は調整一巡、23年10月期減益予想だが上振れ余地
- 2023/6/2 09:22
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。第13回中期経営計画では重点施策として海外事業拡大、収益性向上、SDGsや脱炭素、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率改善、持続的成長に資する投資、社員一人一人が活躍できる職場環境作りに取り組むとしている。23年10月期は化学工業製品販売事業における前期の反動、先行投資に伴う販管費の増加などを考慮して減益予想としている。ただし保守的な印象が強い。第1四半期の営業利益が順調だったことを勘案すれば通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価はやや上値の重い展開だが、一方では大きく下押す動きも見られない。1倍割れのPBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。
■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開
遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。22年4月には欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社としてTOMOE Advanced Materilsを設立した。
22年10月期のセグメント別業績(収益認識会計基準適用のため売上高の増減率非記載、売上総利益および営業利益への影響は軽微)は以下のとおりである。
機械製造販売事業は売上高が113億56百万円(機械30億42百万円、装置・工事11億24百万円、部品・修理71億89百万円)で、売上総利益が21年10月期比1.0%増の40億32百万円、販管費が0.8%増の31億29百万円、営業利益が1.9増の9億03百万円だった。
機械製造販売の売上高の内訳は、官需45億23百万円(機械8億84百万円、装置・工事9億95百万円、部品・修理26億43百万円)、民需28億92百万円(機械5億62百万円、装置・工事1億29百万円、部品・修理22億01百万円)、海外39億39百万円(機械15億95百万円、装置・工事0百万円、部品・修理23億44百万円)だった。
化学工業製品販売事業は売上高が342億32百万円、売上総利益が21年10月期比15.3%増の70億60百万円、販管費が12.0%増の46億64百万円、営業利益が22.5%増の23億96百万円だった。
化学工業製品販売の売上高の内訳は、合成樹脂関連52億74百万円、工業材料関連59億96百万円、鉱産関連49億07百万円、化成品関連81億42百万円、機能材料関連42億07百万円、電子材料関連54億51百万円、その他(洋酒)2億52百万円だった。
収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。
■25年10月期営業利益40億円目標
22年11月からの3年間を対象とする第13回中期経営計画「For Sustainable Future ~持続可能な未来のために~」の基本方針は、既存の枠組みに囚われない新たな価値創造と持続的成長を目指し、持続可能な未来のために変革と成長を続け、業績拡大と企業価値向上を実現するとしている。重点施策としては海外事業の拡大、さらなる収益性の向上、SDGsや脱炭素等、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率の改善、持続的成長に資する投資、社員一人一人が活躍できる職場環境作りに取り組むとしている。
目標数値としては、最終年度25年10月期売上高500億円(機械145億円、化学品355億円)、営業利益40億円(機械13億円、化学品27億円)、経常利益40億円、当期純利益28億円、ROE(純資産利益率)7.6%を掲げている。
機械製造販売事業では、生産改革プロジェクト推進による採算性向上、海外事業の拡大(中国市場での販売強化、米国市場での営業力強化、新たな市場開拓など)の推進、DX(AIによる遠心分離機の自動運転制御など)の推進、SDGs・脱炭素への取り組み(バイナリー発電装置やマイクロ風力発電装置など再生エネルギー分野への展開)を推進する。
化学工業製品販売事業では、海外事業の拡大(タイを軸とする東南アジアでのビジネス拡大、チェコを拠点とする欧州各国への展開、新たなサプライヤー発掘など)の推進、SDGs・脱炭素への取り組み(風力発電などの再生可能エネルギー分野、EVおよびそれを支えるパワー半導体分野への商材提供など)を推進する。
全社共通の重点施策としては、DXの推進によるビジネス変革、資本効率の改善(ROEの改善、最重要指標である連結経常利益またはEBITDAの極大化)、持続的成長に資する分野への投資・経営資源投入(工場設備の整備・拡充、新製品の研究開発、システムインフラの強化、M&A・アライアンスなど)、社員一人一人が活躍できる職場環境作りへの取り組みを推進する。
なお22年4月にはサステナビリティ経営推進基本方針に基づき、脱炭素・循環型社会の実現に向けて主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えている。
■23年10月期減益予想だが上振れ余地
23年10月期の連結業績予想は、売上高が22年10月期比3.9%増の473億80百万円、営業利益が10.9%減の29億40百万円、経常利益が13.2%減の29億70百万円、親会社株主帰属当期純利益が前期計上の特別利益の剥落も影響して23.3%減の20億40百万円としている。配当予想は22年10月期比3円増配の56円(第2四半期末28円、期末28円)としている。連続増配予想で予想配当性向は27.4%となる。
機械製造販売事業は、海外事業の拡大などで売上高が19.8%増の136億10百万円、売上総利益が9.7%増の44億25百万円だが、先行投資に伴う販管費の増加(13.3%増の35億45百万円)などで営業利益が2.6%減の8億80百万円の計画としている。売上高の内訳は、需要先別で官需が5.9%増の47億90百万円、民需が21.4%増の35億11百万円、海外が34.8%増の53億08百万円、品目別で機械が59.4%増の48億49百万円、装置・工事が40.7%増の15億82百万円、部品・修理が0.2%減の71億78百万円の計画としている。
化学工業製品販売事業は、好調だった前期の反動で売上高が1.4%減の337億70百万円、売上総利益が2.2%減の69億05百万円、前期抑制した将来の成長に資する営業開発関係の販管費増加(3.9%増の48億45百万円)も影響して営業利益が14.0%減の20億60百万円の計画としている。売上高の内訳は、合成樹脂関連が2.9%増の54億26百万円、工業材料関連が4.9%減の57億05百万円、鉱産関連が4.0%増の51億02百万円、化成品関連が6.7%減の76億円、機能材料関連が14.5%増の48億18百万円、電子材料関連が10.6%減の48億77百万円、その他(洋酒)が4.0%減の2億42百万円の計画としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比11.7%増の111億28百万円、営業利益が5.7%増の5億58百万円、経常利益が1.6%減の5億55百万円、親会社株主帰属四半期純利益が43.4%減の3億90百万円だった。
全体として増収・営業増益で着地した。機械製造販売事業は国内官需が低調で減収減益だったが、化学工業製品販売事業の好調が牽引した。なお経常利益は営業外の為替差損益の悪化(前期は為替差益2百万円、今期は為替差損36百万円)で減益、親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の固定資産売却益4億56百万円の剥落も影響して減益だった。
機械製造販売事業は、売上高が5.6%減の18億15百万円となり、売上総利益が26.0%減の5億20百万円、そして営業利益が3億01百万円の赤字(前年同期は36百万円の赤字)だった。国内民需および海外向け機械が伸長したが、国内官需向け機械や装置・工事、さらに部品・修理が全般的に伸び悩んだ。なお売上高の内訳は、需要先別には官需合計が32%減の5億88百万円、民需合計が8%増の4億94百万円、海外合計が21%増の7億32百万円、製品別には機械合計が28%増の4億36百万円、装置・工事合計が36%減の1億50百万円、部品・修理が9%減の12億27百万円だった。
化学工業製品販売事業は、売上高が15.9%増の93億12百万円、売上総利益が20.7%増の20億54百万円、営業利益が52.1%増の8億60百万円だった。大幅増収効果で大幅増益だった。なお製品別売上高は、合成樹脂関連が樹脂および製品の好調で18%増の13億73百万円、工業材料関連が4%減の14億37百万円、鉱産関連が建材・自動車用途向けの好調で23%増の14億62百万円、化成品関連が塗料・インキ用途向けの好調で10%増の21億23百万円、機能材料関連が半導体用途向けの好調で53%増の14億07百万円、電子材料関連が半導体用途向けの好調で14%増の14億15百万円、その他が9%増の93百万円だった。
通期予想は据え置いている。機械製造販売事業における海外事業の拡大などで増収を見込むが、化学工業製品販売事業における前期の反動、先行投資に伴う販管費の増加などを考慮して減益予想としている。ただし保守的な印象が強い。第1四半期の営業利益が順調だったことを勘案すれば通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年10月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。
■株価は調整一巡
株価はやや上値の重い展開だが、一方では大きく下押す動きも見られない。1倍割れのPBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。6月1日の終値は2399円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS204円44銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の56円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3446円27銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約253億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)