【アナリスト水田雅展の銘柄分析】生化学工業は地合い悪化で急落したが、売り一巡感

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。株価は地合い悪化の影響で急落し、25日には年初来安値となる1480円まで急落する場面があった。ただし1680円まで戻す場面もあり、売り一巡感を強めている。切り返し展開だろう。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け関節機能改善剤スパルツ、米国向け単回投与関節機能改善剤ジェル・ワン、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、およびLAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。高齢者人口増加を背景に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。

 09年3月策定の「生化学工業10年ビジョン」に基づいて研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞っている。

 開発中の新薬には、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603(コンドリアーゼ)、アルツの腱・靭帯付着部症の国内適応症追加SI-657(ヒアルロン酸)、変形性膝関節症改善剤SI-613(NSAID結合ヒアルロン酸)、ドライアイ治療剤SI-614(修飾ヒアルロン酸)、関節リウマチ治療剤SI-615(アデノシンA3レセプターアゴニスト)(導入品)などがある。

 SI-6603は14年1月に国内で製造販売承認申請し、米国では第Ⅲ相臨床試験を実施中である。SI-657の国内第Ⅲ相臨床試験は14年10月に完了した。SI-613は国内第Ⅱ相臨床試験を実施中である。SI-614は14年5月に米国で第Ⅱ・Ⅲ相臨床試験を開始した。SI-615は国内第Ⅰ相臨床試験を実施中である。

 生産面では15年1月にアルツディスポ新製剤設備(高萩工場第5製剤棟)が稼働した。第5製剤棟および第4製剤棟にアルツディスポの生産を集約することで効率化を推進するとともに、アルツディスポの中長期的な安定供給を図る。

 海外は重点地域の米国での事業展開加速に向けて、14年10月の米国駐在員事務所開設に続き、15年5月に北米戦略室を新設した。製品認知度向上策や製品価値向上策で販促を強化し、LAL事業の拡大も推進する。

■16年3月期は最終減益予想、第1四半期の進捗率は順調

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)75億77百万円、第2四半期(7月~9月)66億70百万円、第3四半期(10月~12月)78億28百万円、第4四半期(1月~3月)74億47百万円で、営業利益は第1四半期11億87百万円、第2四半期3億77百万円、第3四半期7億09百万円、第4四半期1億10百万円だった。

 また15年3月期の配当性向は40.5%だった。ROEは14年3月期比2.1ポイント低下して5.4%、自己資本比率は同0.8ポイント低下して87.0%となった。利益配分に関しては、1株当たり年間26円を基本として安定的かつ継続的な配当を目指し、資本効率の向上を目的として自己株式の取得等を適宜検討するとしている。

 7月31日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.4%増の77億62百万円、営業利益が同25.5%減の8億83百万円、経常利益が同11.1%減の13億77百万円、純利益が同17.5%減の10億32百万円だった。

 売上面では、国内アルツが前年同期に出荷前倒しがあった反動で減収だったが、円安効果や米国向けジェル・ワンの数量増加でカバーして増収だった。円安効果は約4億円だった。

 利益面では、高萩工場第5製剤棟減価償却費の増加、米国SI-6603などの開発テーマ進展に伴う研究開発費の増加で営業減益だった。経常利益は営業外での円安に伴う保有外貨建て資産の為替評価益が寄与した。純利益は前期にあった一過性の税率低減要因(米国子会社有償減資)の終了も影響した。

 セグメント別売上高は、医薬品事業が同1.1%増の63億17百万円(国内医薬品が同3.8%減の43億88百万円、海外医薬品が同23.0%増の16億07百万円、医薬品原体が同15.2%減の3億21百万円)で、LAL事業が同8.6%増の14億45百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて売上高が前期比3.8%増の306億50百万円、営業利益が同0.7%増の24億円、経常利益が同5.2%減の38億円、純利益が同20.6%減の29億円としている。配当予想は前期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)で予想配当性向は50.9%となる。

 想定為替レートは1米ドル=118円で、為替感応度(1円変動による影響額)は売上高で約95百万円、営業利益で約35百万円としている。研究開発費は同3.6%減の78億50百万円の計画だ。

 セグメント別売上高の計画は、医薬品事業が同3.1%増の254億円(国内医薬品が同0.3%増の169億50百万円、海外医薬品が同12.0%増の71億円、医薬品原体が同4.1%減の13億50百万円)、LAL事業が同7.7%増の52億50百万円としている。

 国内は厳しい市場環境が継続して前期並みだが、米国向けジェル・ワンと中国向けアルツの販売数量増加、および円安効果などで増収見込みだ。営業利益については、研究開発費が減少するが、新生産設備稼働に伴う減価償却費の増加、ジェル・ワンなどの販売関連費用の増加で前期並みとしている。純利益については、受取ロイヤリティーが増加するが、為替評価益の減少、税負担の正常化などで減益見込みとしている。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が25.3%、営業利益が36.8%、経常利益が36.3%、純利益が35.6%である。各利益は期初時点で上期偏重の計画だが、概ね順調のようだ。

■株価は地合い悪化の影響で急落したが売り一巡感

 株価の動きを見ると、地合い悪化の影響を受けて1900円~2000円近辺でのモミ合いから下放れ、8月25日には年初来安値となる1480円まで急落する場面があった。ただし1680円まで戻す場面もあり、売り一巡感を強めている。

 8月25日の終値1558円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円05銭で算出)は30~31倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1239円51銭で算出)は1.3倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が戻りを押さえる形で急落したが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%程度まで拡大して売られ過ぎ感を強めている。16年3月期最終減益予想は織り込み済みであり、目先的な売りが一巡して切り返し展開だろう。

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