【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ティー・ワイ・オーは地合い悪化で急落したが売られ過ぎ感、16年7月期も増収増益基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ティー・ワイ・オー<4358>(東1)はTV-CM制作の大手である。株価は地合い悪化の影響で急落したが売られ過ぎ感を強めている。16年7月期も増収増益基調が予想され、3%近辺の配当利回りなど指標面の割安感も強い。目先的な売りが一巡して切り返す展開だろう。なお9月11日に15年7月期の決算発表を予定している。

■TV-CM制作の大手

 TV-CM制作の大手で、広告事業(広告代理店向けのTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)を主力として、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオの企画・制作)も展開している。

 15年3月には民事再生手続き中のスカイマークに対して、ブランド再生に関する業務支援を行うことが正式決定した。投融資は行わず、スカイマークのブランド再生に必要であると判断される領域のクリエイター、関連スタッフ、ノウハウなどを無償で提供する。スカイマークの再生後は広告受注に繋がると期待される。

■戦略的M&Aを推進方針

 15年3月に海外事業統括管理会社としてシンガポールにTYO-ASIAを設立し、15年4月にインドネシアの広告会社The First Editionの代表Uli氏と、合弁会社PT TYO FIRST EDITION設立で合意(15年7月設立予定)した。

 アジアにおける戦略的M&Aの第一弾としてThe First Editionの事業を合弁会社に順次継承していく予定で、インドネシアにおける日系企業との取引拡大も目指すとしている。

 また国内でも事業成長を加速させるM&Aを検討しているようだ。PRやセールスプロモーションをはじめとした一定規模以上の企業を対象に、業務提携や資本提携も含めて手法を柔軟に検討する。

■15年7月期、16年7月期とも増収増益基調

 前期(15年7月期)の連結業績予想(9月11日公表)は、売上高が前々期比7.3%増の285億円、営業利益が同8.0%増の18億50百万円、経常利益が同12.6%増の17億円、純利益が同50.9%増の9億円としている。

 なお14年9月に連結子会社TYOアニメーションズに対する債権放棄を発表したが、過年度において全額引当済みのため15年7月期業績に与える影響は軽微としている。

 配当予想(7月21日に増額修正)は年間5円(期末一括)で、予想配当性向は33.6%となる。前々期との比較では1円減配の形だが、前々期の年間6円には上場市場変更記念配当3円を含んでいるため、普通配当ベースでは2円増配となる。

 第3四半期累計(8月~4月)は前年同期比1.7%増収、同11.0%営業増益、同27.7%経常増益、同2.1倍最終増益だった。受注が前期を上回る水準で推移し、広告主直接取引の受注規模拡大も寄与した。増収効果、収益管理徹底や人員最適配置などの施策の効果で売上総利益率は同0.4ポイント改善した。さらに前期計上した上場市場変更費用・株式売出し関連費用の一巡や、特別損益の改善も寄与して純利益は大幅増益だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(8月~10月)52億99百万円、第2四半期(11月~1月)72億97百万円、第3四半期(2月~4月)69億11百万円、営業利益は第1四半期3億38百万円、第2四半期3億83百万円、第3四半期6億65百万円だった。営業損益は改善基調だ。

 通期ベースでも受注は電気・情報通信、衣料、自動車、飲料関連を中心に好調に推移する。広告代理店経由の大型案件、大口広告主との直接取引案件とも増加基調であり、映像関連事業では高利益率のライブ映像案件が拡大基調のようだ。売上原価管理の徹底も寄与して売上総利益率が上昇し、特別損失の一巡も寄与する。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が68.5%、営業利益が74.9%、経常利益が80.0%、純利益が95.9%である。広告主直接取引案件が下期に集中していることを考慮すれば、通期ベースでも好業績が期待され、増額余地がありそうだ。

 さらに今期(16年7月期)についても、引き続き広告需要が高水準に推移し、原価管理徹底効果も一段と進展して増収増益基調が予想される。

■中期経営計画で17年7月期営業利益27億円目標

 中期経営計画では目標数値として17年7月期売上高400億円、営業利益27億円を掲げ、株主還元として配当性向25%以上目標と株主優待の継続実施の方針を示している。

 広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めている。国内景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため、事業環境は中期的に良好だろう。海外展開も寄与して中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は地合い悪化の影響で急落したが、売り一巡して切り返し

 なお14年10月に株主優待制度の拡充を発表している。15年7月期については、通常株主優待であるクオカード贈呈(毎年1月31日現在500株以上保有株主に対してクオカード1000円相当、2500株以上保有株主に対してクオカード3000円相当、5000株以上保有株主に対してクオカード5000円相当を贈呈)に加えて、当社オリジナル株主優待を継続する。

 オリジナル株主優待の内容(14年12月発表)は、15年1月31日現在500株以上保有株主を対象として、応募者の中から抽選で3名にオリジナルミュージックビデオ「株主様!あなたがアーティスト」を制作して贈呈した。

 株価の動きを見ると、年初来高値圏200円~210円近辺で堅調に推移していたが、地合い悪化の影響を受けて急落した。8月25日には年初来安値となる161円まで下押す場面があった。

 8月25日の終値166円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS14円87銭で算出)は11~12倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は3.0%近辺、そして前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS77円18銭で算出)は2.2倍近辺である。

 週足チャートで見ると一気に52週移動平均線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が15%程度に拡大して売られ過ぎ感を強めている。16年7月期も増収増益基調が予想され、3%近辺の配当利回りなど指標面の割安感も強い。目先的な売りが一巡して切り返す展開だろう。

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