NEC、理化学研究所、日本医科大学、電子カルテとAI技術を融合し医療ビッグデータを多角的に解析

■電子カルテとAI技術の融合で前立腺がん再発予測精度を約10%向上

 日本電気(NEC)<6701>(東証プライム)、理化学研究所(理研)、日本医科大学は、複数の大学病院と共同で、医療分野における電子カルテとAI技術の融合研究を進め、前立腺がんを対象に医療ビッグデータを多角的に解析するマルチモーダルAIを構築したと発表。これまでに、手術後から再発までの年数によってAIが捉えた予測因子のパターンが異なることを見出している。三者は同マルチモーダルAIの実用化に向けた連携を推進し、治療計画の最適化や疾患の早期発見を目指していく。

 医療が高度に専門化する中、医療ビッグデータを多角的に解析するツールが求められている。しかし従来の医療AIシステムは単独の検査データを対象とするものが多く、複数の検査データを利用して統合的に判断できないことが課題となっていた。

 同研究では、マルチモーダルAIを構築し、複数の検査データを同時に解析することが可能となった。この成果を基に、NEC(注1)が保有する電子カルテをベースとした各種データを統合するプラットフォーム技術、理研(注2)が開発した広範囲画像解析技術(注3)や特徴選択などを活用したマルチモーダルAI、そして日本医科大学(注4)をはじめとする複数の大学病院の医師による信頼性の高い検証データを組み合わせ、各種医療データを多角的に解析する医療AIシステムの実用化を目指していく。

 この医療AIシステムにより、治療計画の最適化や疾患の早期発見、データの安全な運用が可能となり、治療期間の短縮による医療費の削減や、医療従事者の業務負荷の軽減と効率化が期待される。

 同研究において、日本人男性に最も多いがんの一つである前立腺がんを対象に、手術前の電子カルテデータや病理生検画像などを用いたマルチモーダルAI解析を実施したところ、手術後から再発までの年数によってAIが捉えた予測因子のパターンに違いが見られることが分かった。この結果は、がん再発までの年数によって再発メカニズムが異なる可能性を示唆している。さらに、生成系AIにも使われる機械学習技術を応用した次元削減(注5)の改良や、AIが捉えた予測因子の多次元的な最適化を行うことで、既存手法(注6)と比べ、手術から5年後までの再発予測の精度を約10%向上することができた。今後、さらに対象データを拡大し実用化に向けた検証を進めていくとしている。

 同研究の成果の一部を、国内最大の医療AI研究の成果発表及び討議の場として、医療関係者やAI研究者、企業が一堂に会する「第5回日本メディカルAI学会学術集会」(2023年6月17日~18日、於:東京・日本橋)(注7)にて紹介する。

(注1)=研究開発代表:NEC 医療ソリューション統括部長 浅見英徳
(注2)=研究開発代表:理化学研究所 革新知能統合研究センター 病理情報学チーム 山本陽一朗チームリーダー
(注3)=Yamamoto Y, et.al. Automated acquisition of explainable knowledge from unannotated histopathology images. Nature Communications 10(1):5642-5642, 2019.
URL:https://www.nature.com/articles/s41467-019-13647-8
(注4)=研究開発代表:日本医科大学 泌尿器科学/男性生殖器・泌尿器科学分野 大学院教授 近藤幸尋
(注5)=次元削減:多次元の情報をその意味を保ったまま、より少ない次元の情報に落とし込む方法
(注6)=Kattan Nomogram(アメリカ・ニューヨークのメモリアルスローンケタリング癌センターのwebページにて公開され、現在広く使用されている前立腺癌予後予測モデル)にて使用されている特徴量を用いた解析。
(注7)=第5回日本メディカルAI学会学術集会
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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