ヤマシタヘルスケアホールディングスは戻り試す、24年5月期も収益拡大基調

ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。さらにサステナブルな成長の実現に向けて、30年度を目標年度とする長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定している。23年5月期は2桁営業・経常増益予想(当期純利益は特別損失計上で減益予想)としている。さらに24年5月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は4月の年初来高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から反発の動きを強めている。1倍割れのPBRも評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。

事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、IT医療構築・医療設備工事、および医療モールを展開している。イーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の企画・製造委託・輸入・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営支援や介護施設を含む病床転換・M&A・事業承継などのコンサルティングサービス、イーディライト(21年11月持分法適用関連会社から連結子会社に異動)は医療機関の予約サイト制作取次などのソリューションサービス、エムディーエックス(22年2月設立)はDX新技術を活用した医療・介護施設・在宅向け新製品・サービスの開発を展開している。

なお23年5月には、医療機関向けを中心にネットワークおよびシステムインフラ構築を展開するクロスウェブ(福岡県福岡市)の全株式を取得し、子会社化することで基本合意したと発表している。

22年5月期セグメント別売上高(セグメント間取引調整前)は医療機器販売業が547億95百万円(一般機器分野が84億41百万円、一般消耗品分野が231億81百万円、低侵襲治療分野が125億63百万円、専門分野が95億61百万円、情報・サービス分野が12億12百万円)で、医療機器製造・販売業が2億87百万円、医療モール事業が68百万円だった。セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)は医療機器販売業が19億74百万円で、医療機器製造・販売業が20百万円、医療モール事業が▲46百万円、調整額が▲10億17百万円だった。

医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い季節特性がある。

■ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進

中期経営計画(22年5月期~24年5月期)では、基本方針を「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」として、目標値には最終年度24年5月期売上高520億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用換算前ベースでは675億円)、営業利益6億20百万円、経常利益6億80百万円を掲げている。

重点施策には、グループの一体化と戦略機能の強化、重点事業領域の拡充、グループ経営管理機能の強化、ダイバーシティ環境の実現、ESG経営への取り組み、戦略的人材マネジメントの確立を掲げている。

医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。

また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始している。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始している。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。

■長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」

ESG経営・SDGsへの取り組みでは、21年6月に独立行政法人国際協力機構(JICA)が発行するソーシャルボンド(社会貢献債)への投資を実施した。21年8月にはESG基本方針を策定し、地域のヘルスケアに貢献する企業として、医療機器・関連サービスの安定的な供給を通じてSDGsの目標でもある持続可能でより良い社会を目指し、社会課題の解決に貢献できるように努めるとしている。23年3月には山下医科器械が、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に2年連続で認定された。

22年7月にはサステナブルな成長の実現に向けて、2030年度を目標年度とする長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定した。既存の中核事業との連携を図りながら新たな事業ポートフォリオを構築し、企業価値の持続的成長および価値創出を目指すとしている。

22年9月には、乳がん検査デバイスとなるマンモエコーシステムなど超音波を用いた医療用機器の開発・販売を行うマイクロソニック(東京都国分市)に出資した。ESG活動の一環として、超音波を用いた社会性の高い製品の実現化に寄与することを目的に、マイクロソニックが持つ知財や研究開発を支援する。

■23年5月期2桁営業・経常増益予想、24年5月期も収益拡大基調

23年5月期の連結業績予想(23年3月31日付で売上高、および営業・経常利益を上方修正、特別損失計上で親会社株主帰属当期純利益を下方修正)は、売上高が22年5月期比0.9%増の556億51百万円、営業利益が12.8%増の10億49百万円、経常利益が10.0%増の11億03百万円、親会社株主帰属当期純利益が71.4%減の1億98百万円としている。配当予想は22年5月期比36円減配の46円(期末一括)としている。予想配当性向は59.0%となる。

前回予想(22年7月14日公表)に対して売上高を25億34百万円、営業利益を5億24百万円、経常利益を5億37百万円、それぞれ上方修正した。コロナ対策補助金による医療機関の設備投資需要は減少しているものの想定を上回る見込みとなった。さらに、新型コロナ感染拡大で減少していた検査・手術件数の回復に伴って診察材料の売上が回復・増加していること、新型コロナ検査薬やPPE(個人防護服)の消費が継続していることなども寄与する。そして従来の営業・経常減益予想から一転して2桁営業・経常増益予想とした。親会社株主帰属当期純利益については、特別損失に貸倒引当金繰入額6億11百万円を計上したため、1億96百万円下方修正して減益予想とした。

第3四半期累計は売上高が前年同期比2.7%増の417億25百万円、営業利益が5.0%増の8億95百万円、経常利益が3.2%増の9億36百万円、親会社株主帰属四半期純利益が99.8%減の1百万円だった。

コロナ対策補助金による医療機関の設備投資需要が減少したが、新型コロナ感染拡大で減少していた検査・手術件数の回復に伴って診察材料の売上が回復・増加し、新型コロナ検査薬やPPE(個人防護服)の消費も継続した。増収効果で営業・経常増益で着地した。親会社株主帰属四半期純利益は減益だった。22年11月に公表した取引先のジェミックに対する債権の全額6億11百万円を取立不能見込額として貸倒引当金を設定し、同額を特別損失の貸倒引当金繰入額として計上した。

医療機器販売業は、売上高が2.8%増の416億13百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が4.5%増の15億74百万円だった。売上高の内訳は、一般機器分野が14.1%減の53億89百万円、一般消耗品分野が3.0%増の178億27百万円、低侵襲治療分野が9.1%増の99億92百万円、専門分野が9.7%増の75億33百万円、情報・サービス分野が0.9%減の8億69百万円だった。

医療機器製造・販売業は売上高が1.1%減の2億11百万円で利益が12.2%減の10百万円だった。医療モール事業は売上高が2.4%減の50百万円で利益が0百万円(前年同期は7百万円の赤字)だった。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が134億71百万円で営業利益が2億59百万円、第2四半期は売上高が141億90百万円で営業利益が3億39百万円、第3四半期は売上高が140億64百万円で営業利益が2億97百万円だった。

修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.0%、営業利益が85.3%、経常利益が84.9%である。通期営業・経常利益予想には再上振れの可能性があり、さらに24年5月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は5月末の株主対象

株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は戻り試す

株価は4月の年初来高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から反発の動きを強めている。1倍割れのPBRも評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。6月13日の終値は2074円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS77円95銭で算出)は約27倍、前期推定配当利回り(会社予想の46円で算出)は約2.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS3126円18銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約53億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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