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インフォマートは下値固め完了、23年12月期減益予想だが上振れの可能性
- 2023/6/15 10:37
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東証プライム)は企業間の商行為を電子化する国内最大級のBtoB電子商取引プラットフォーム(飲食業向けを中心とする受発注システム、全業界を対象とする請求書システムなど)を運営している。ストック型収益モデルで導入数は増加基調である。なお、23年2月に創業25周年の節目を迎えたことを踏まえ、23年5月30日よりコーポレートブランドを刷新した。23年12月期は先行投資の影響で減益予想だが、第2四半期累計予想を上方修正した。利用企業数の順調な増加で通期予想も上振れの可能性が高いだろう。外食産業における受発注の電子化、企業における請求書の電子化、インボイス制度開始などDX化ニーズを背景として、積極投資の成果で収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。
■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム
企業間の商行為を電子化する国内最大級のBtoBプラットフォームを運営している。BtoB-PF FOOD事業のBtoBプラットフォーム受発注は飲食店と食材卸・メーカー間の受発注業務を電子化したシステム、規格書は食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール、BtoB-PF ES事業の請求書は全業界を対象に請求書発行・受取業務を電子化したシステム、商談は全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト、契約書は契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステムである。21年7月には全業界向け受発注BtoB TRADEをリリースした。
なお、21年10月に串カツ田中ホールディングス<3547>と業務提携して設立した合弁会社Restartz(リスターツ)は、22年11月に飲食店舗運営のDXを支援する店舗オペレーション管理アプリ「V-Manage」をリリースし、23年4月に串カツ田中ホールディングスの全ての直営店舗(155店舗)への導入を開始した。
22年12月期は、BtoB-PF FOOD事業の売上高が前期比10.4%増の77億26百万円でセグメント利益(調整前営業利益)が0.8%増の21億80百万円、BtoB-PF ES事業の売上高が15.6%増の32億78百万円でセグメント利益が16億64百万円の赤字(前期は11億37百万円の赤字)だった。
21年6月にはBtoBプラットフォーム請求書が公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の電子取引ソフト法的要件認証制度第1号認証を取得した。22年7月にはBtoBプラットフォーム契約書がJIIMAの電子取引ソフト法的要件認証」「電帳法スキャナ保存ソフト認証」を取得した。22年6月には一般社団法人日本飲食団体連合会(食団連)のオフィシャルパートナーに決定した。22年10月にはBtoBプラットフォームTRADEがJIIMAの電子取引ソフト法的要件認証を取得した。
23年1月にはBtoBプラットフォーム契約書がサイバートラスト<4498>のiTrustと連携し、新機能「社内文書署名機能」で作成された電子証明書が法務省の商業・法人登記のオンライン申請に利用可能な電子証明書として正式に認定された。23年4月にはBtoBプラットフォームが、経済産業省が推進する「IT導入補助金2023」において補助金対象のITツールとして認定された。
6月6日には、BtoBプラットフォーム請求書とBtoBプラットフォーム契約書が、BOXIL SaaS AWARD Summer 2023の各部門でGood Serviceに選出されたと発表している。
■26年12月期営業利益50億円目標
中期業績目標に26年12月期売上高200億円、営業利益50億円を掲げ、成長に向けた積極投資と収益源多角化を推進している。5年間平均のCAGR(売上高成長率)は全社16%(FOOD事業8%、ES事業30%)としている。
将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組んでいる。
20年8月には電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始した。23年10月から適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。21年4月にはDX推進プロジェクト「Less is More.Project」を始動し、本プロジェクトの理念に賛同して共に活動する参画企業の募集を開始した。
なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年6月にはAIを活用した飲食店向けの自動発注クラウドサービス「HANZO自動発注」を開発・提供するGoalsに出資して資本業務提携した。さらに22年6月にはGoalsに追加出資した。協業関係を一段と強化する。
■利用企業数は増加基調
売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調で、22年12月期末の全体の利用企業数は21年12月期末比14万5990社増加の82万5674社、全体の事業所数は21万6907事業所増加の152万6384事業所となった。また22年の流通金額は21年比62%増の30兆590億円で、コロナ禍前の19年を上回り過去最高を更新した。
利用企業数の内訳を見ると、BtoB-PF FOOD事業の受発注の買い手企業数が21年12月期末比320社増加の3680社、買い手店舗数が2370店舗増加の6万8380店舗、売り手企業数が1908社増加の4万2028社となった。規格書の買い手機能が52社増加の944社、卸機能が7社増加の716社、メーカー機能が165社増加の8764社となった。
BtoB-PF ES事業の請求書は有料契約企業が2087社増加の8615社(受取モデルが1090社増加の5282社、発行モデルが997社増加の3333社)で、請求書ログインは14万6249社増加の81万6777社となった。契約書ログインは1万5540社増加の4万2836社となった。電子帳簿保存法改正による請求書電子化や「脱ハンコ」による契約書電子化の流れで、請求書と契約書が急増している。
国内最大級のBtoBプラットフォームである。23年1月にはBtoBプラットフォーム請求書が、アイティクラウドが提供するITreview Grid Award 2023 FALLの2カテゴリ(請求書作成・見積書作成および請求書受領サービス)の内の4部門(総合部門、大企業部門、中堅企業部門、中小企業部門)でLeaderを受賞した。
23年2月にはBtoBプラットフォーム請求書が東京商工リサーチの調査で、前回の調査に続いて請求書クラウドサービス市場における国内シェアNO.1を獲得した。23年3月にはBOXIL SaaS AWARD Spring 2023において、BtoBプラットフォーム請求書が請求書発行部門で、BtoBプラットフォーム契約書が電子契約システム部門で、それぞれGood Serviceに選出された。
BtoBプラットフォーム請求書の採用事例としては、22年3月に三井住友フィナンシャルグループ、ワコール、22年4月にトヨタファイナンス、22年5月にアイリスオーヤマ、22年6月に肥後銀行、サッポログループ物流、神戸市、22年9月にダイナムジャパンHD、22年11月に大分県、東洋水産が導入した。大企業にとどまらず、地方自治体などにおける採用も進展している。23年2月にはBtoBプラットフォーム請求書が学校法人國學院大學、BtoBプラットフォーム契約書がドラッグストアチェーンのサンドラッグに導入された。
23年3月には、BtoBプラットフォーム利用企業約83万社の帳票デジタル化によって、22年の1年間で削減できた紙の枚数が約4.8億枚(CO2排出量に換算すると年間約4079トン、東京ドーム99個分に相当)に到達したとリリースしている。また、BtoBプラットフォーム請求書上で流通した金額が22年1月から12月の1年間に28兆1841億円となり、サービス開始した15年の約220倍になったとリリースしている。
■アライアンスを積極推進
アライアンス戦略を積極推進している。21年2月には食品卸企業向け受発注・販促サービスのタノムと資本業務提携、21年3月には三井物産と共同出資で特別目的会社I&Mを設立し、中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携した。22年4月にはプロダクト・データ・プラットフォームを開発・提供するLazuliに出資した。
23年1月には鈴与とパートナー契約を締結し、鈴与が提供する請求書仕訳支援クラウドとBtoBプラットフォーム請求書のシステム連携を開始した。23年2月にはDeepworkと協業して、24年1月に完全義務化される電子帳簿保存法に対応した新サービスSTORAGE by invoxの提供を開始した。23年3月にはDeepworkと協業した新機能「発注書AI-OCR(invox)」を提供開始した。
■23年12月期2Q累計予想を上方修正、通期も上振れの可能性
23年12月期の連結業績予想は売上高が22年12月期比17.5%増の129億32百万円で、営業利益が43.0%減の3億円、経常利益が53.4%減の2億16百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が48.9%減の1億46百万円としている。配当予想は22年12月期比26銭減配の46銭(第2四半期末23銭、期末23銭)としている。
売上高の計画はBtoB-PF FOOD事業が7.9%増の83億35百万円、BtoB-PF ES事業が40.2%増の45億96百万円としている。BtoB-PF FOOD事業は利用企業数増加や食材流通金額増加などを見込み、BtoB-PF ES事業はインボイス制度開始や電子帳簿保存法改正を背景に高成長を見込んでいる。
コスト面は売上原価が20.0%増の56億89百万円、販管費が21.0%増の69億42百万円の計画としている。売上原価ではサーバー増強に伴うデータセンター費の増加が一巡するが、新機能開発強化などで主にソフトウェア償却費が増加し、販管費では営業強化に伴う人件費の増加や認知度向上に向けたプロモーション活動に伴う販売促進費の増加を見込んでいる。
第1四半期は、売上高が前年同期比17.8%増の30億16百万円、営業利益が9.6%減の1億66百万円、経常利益が12.1%減の1億49百万円、親会社株主帰属四半期純利益が10.4%減の98百万円だった。
前年同期比では、売上面は利用企業数増加に伴ってシステム利用料が順調に増加して大幅増収だが、利益面は先行投資で売上原価や販管費が増加したため減益だった。営業利益17百万円減益の要因分析は、BtoB-PF ES事業の売上増加+2億58百万円、BtoB-PF FOOD事業の売上増加+1億96百万円、データセンター費増加▲23百万円、ソフトウェア償却費増加▲1億05百万円、手数料等増加▲79百万円、人件費増加▲78百万円、販売促進費増加▲64百万円、その他販管費増加▲1億19百万円だった。
BtoB-PF FOOD事業の売上高は前年同期比10.9%増の20億03百万円だった。BtoBプラットフォーム受発注、受発注ライト、TANOMUの利用企業数が順調に増加し、フード業界の買い手企業(外食チェーン、ホテル、給食、テイクアウト・デリバリー等)および店舗からのシステム使用料売上が増加した。食材流通金額の増加に伴って売り手企業からの従量制システム使用料も増加した。
BtoB-PF ES事業の売上高は34.3%増の10億12百万円だった。BtoBプラットフォーム請求書は、企業のデジタル化推進、インボイス制度の開始と電子帳簿保存法改正に向けた顧客ニーズの高まりも背景として受取モデル・発行モデルの新規有料契約数が順調に増加した。大手企業を中心に稼働(請求書の電子データ化)が進展したことも寄与して大幅増収だった。
なお23年12月期第1四半期末時点の全社ベース利用企業数は22年12月期末比4.0%増の85万8673社、事業所数は4.3%増の159万1503事業所となった。
第1四半期が計画を上回ったため、第2四半期累計予想を4月28日付で上方修正し、売上高が前年同期比15.8%増の61億18百万円、営業利益が54.7%減の2億円、経常利益が60.4%減の1億63百万円、親会社株主帰属四半期純利益が56.1%減の1億20百万円とした。
前回予想に対して売上高を1億53百万円、営業利益を1億61百万円、経常利益を1億58百万円、親会社株主帰属四半期純利益を1億07百万円、それぞれ上方修正した。BtoB-PF FOOD事業、BtoB-PF ES事業とも売上高が前回予想を上回り、コスト面では費用発生の期ズレも寄与する見込みだ。
通期予想は据え置いたが、第1四半期の進捗率は売上高が23.3%、営業利益が55.4%、経常利益が68.8%、親会社株主帰属当期純利益が67.5%と高水準である。そして第2四半期累計予想を上方修正したことを勘案すれば、通期予想も上振れの可能性が高いだろう。外食産業における受発注の電子化、企業における請求書の電子化、インボイス制度開始などDX化ニーズを背景として、積極投資の成果で収益拡大を期待したい。
■株価は下値固め完了
株価は反発力が鈍く年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。6月14日の終値は298円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS64銭で算出)は約466倍、今期予想配当利回り(会社予想の46銭で算出)は約0.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS49円59銭で算出)は約6.0倍、そして時価総額は約773億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)