マーチャント・バンカーズは反発の動き、24年10月期(決算期変更)実質大幅増益・増配予想

マーチャント・バンカーズ<3121>(東証スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連などを展開している。安定的収益源の拡大に向けて資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、成長ドライバーとしてNFTなどのブロックチェーン関連事業にも積極展開している。24年10月期(決算期変更で7ヶ月決算)は実質大幅増益・増配予想としている。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来安値を更新する場面があったが、素早く切り返して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開

マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)、およびオペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。

23年3月期セグメント営業利益(全社費用等調整前)は、マーチャント・バンキング事業が22年3月期比8.0%増の6億09百万円、オペレーション事業が64百万円の赤字(22年3月期は61百万円の赤字)だった。マーチャント・バンキング事業では、収益の柱である賃貸用不動産から得られる賃貸収入が安定的に推移し、収益用不動産の一部やホテル物件の売却も実行した。収益用不動産の売却は4件、新規取得は4件だった。オペレーション事業では、ホテル物件(ブルーポートホテル苅田北九州空港)の売却に伴って物件売却先の関係会社にホテル運営を引き継ぎ、給食業務受託も23年3月末をもって終了した。その他事業所はコロナ禍の影響で減収・赤字だった。

■不動産・企業投資関連

マーチャント・バンキング事業では不動産投資関連および企業投資関連を展開している。

不動産投資関連は保有物件売却による売上利益の積み上げと、物件購入による安定的収益力の強化を推進している。主にネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションなどの優良物件を保有し、年間約7億円の賃料収入を安定的に確保している。さらに年間賃料収入10億円を目標に掲げて優良不動の取得を強化している。23年4月には事業用賃貸マンション2物件の取得(物件1:埼玉県北本市、税込取得価格4億76百万円、23年6月予定、物件2:埼玉県上尾市、税込取得価格3億03百万円、23年6月予定)を発表、6月12日には事業用賃貸マンション(大阪府八尾市、税込取得価格4億90百万円)を発表している。

なお22年4月には新築マンション開発事業に取り組むと発表した。第1号案件として大阪府堺市の200坪のマンション開発用地を取得してマンションを建設し、安定的で収益性の高い賃料収入を確保する。22年5月には田中土建工業と業務提携した。

また、賃貸用不動産の取得・入替によって収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保にも取り組む方針だ。21年10月には不動産ファンド組成・運営に取り組むととともに、案件ごとに共同事業者とSPC(特別目的会社)を組成する取り組みを開始した。第三者の資金を活用して規模の大きい案件も積極的に手掛ける方針としている。また金融機関と連携して不動産バイアウト&リース事業を開始する。

23年1月には子会社MBKバイオテックが、おそうじ本舗川崎三田店の事業を承継のうえMBKハウスマネジメントに商号変更し、おそうじ本舗のFCとしてハウスクリーニング事業を核に、リノベーション事業、不動産管理事業、不動産テック事業など不動産関連の受託型サービスを展開すると発表した。23年4月には、MBKバイオテックが業務提携しているアビスジャパン(持分法適用関連会社で病院・介護施設などの内装工事等各種工事を展開、太陽光発電関連でも提携)などの工事業者を窓口に、ホームセキュリティ事業への取組を開始すると発表し、防犯カメラ・防犯セキュリティ機器の開発・製造・販売を行う塚本無線と業務提携した。

企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。

22年2月には中小型の上場株式を対象とする投資の強化を発表した。第1号案件としてZOA<3375>の株式10万株(議決権総数に対する割合6.88%)を取得した。23年3月には、政府・軍事・航空宇宙・金融など高度な情報セキュリティニーズを持つ顧客をターゲットにセキュリティチップを開発・製造する台湾Enova Technology社に資本参加した。

なお6月5日には、香港のコングロマリットである新世界発展でグループの投資部門の責任者として活躍してきたチャン・チン氏を取締役として招聘し、香港子会社MBK ASIA LIMITEDを拠点にした投資関連事業を強化すると発表した。

■成長ドライバーとしてNFTなどブロックチェーン関連を強化

成長ドライバーとして、STO(Security Token Offering)を活用した金融サービス、不動産流動化、資金調達、さらにNFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)など、ブロックチェーン関連事業にも積極展開している。

ブロックチェーン関連では、20年2月にサービス開始したエストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームの不動産テック関連、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム関連、NFTプラットフォーム関連の強化を推進している。20年10月にはバルティック・フィンテック・ホールディングス(BFH社)にANGOO FinTech運営を移管し、エストニアでの事業統括会社と位置付けた。

21年3月には子会社MBKブロックチェーンが、ブロックチェーン不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」をリリースした。21年4月にはMBKブロックチェーンが、お宝グッズのNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」運営を開始した。21年9月には不動産バイアウト&リースの開始を発表した。21年11月には、エストニアの子会社EJTC社がNasdaq Baltic上場会社(21年3月上場)としての信用力を活かして日本の金融機関の協力体制を確保したため、不動産事業として日本国内のマンション取得を進めると発表した。

21年11月には、MBKブロックチェーンが「NFTバンカーズ」をリニューアルオープンした。世界的に人気のあるジャパニーズキャラクターを取り揃えるなどコンテンツを強化して、世界マーケットに向けた展開を本格化させる。子会社ケンテンが運営するショッピングサイト「KENTEN×lafan」内のNFTコーナーも「NFT LaFan」としてリニューアルオープンした。

22年4月には子会社MBKブロックチェーンの商号をMBKバイオテックに変更した。エストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、NFTプラットフォーム関連などのブロックチェーン関連に加えて、医療・健康をテーマにしたバイオテック関連事業や投資にも積極的に取り組む方針だ。22年11月にはMBKバイオテックが新規事業として、中堅企業向けwebサイト制作・保守管理請負事業を開始した。

新分野に関しては22年8月に、娯楽TVが設立した円谷メディア・コンテンツの株式を譲り受けて子会社化し、商号を娯楽TVメディア・コンテンツに変更してキャラクターおよびコンテンツビジネスへの展開を開始した。22年8月には、01年公開のアニメ映画「シャム猫」について、娯楽TVメディア・コンテンツが100%窓口となってコンテンツ販売とマーチャンダイジングを展開すると発表した。

22年9月には、娯楽TVメディア・コンテンツの株式をエストニアの子会社EJTC社に譲渡して、娯楽TVメディア・コンテンツを孫会社化した。22年10月には娯楽TVメディア・コンテンツが公式キャラクター「マーチャントマン」のテーマソングを完成した。NFTマーケットプレイス「NFT LaFan」においてダウンロード販売する。23年2月には「マーチャントマン 誰でもわかる開運・道徳本」が幻冬舎より発売された。なお、6月9日には、22年8月に資本業務提携していた映像制作会社エス・フィールドとの資本業務提携を解消すると発表した。

なお23年2月には糖尿病治療薬開発事業から撤退し、バイオジップコードに投資していた全株式を売却して投資資金40百万円を回収した。滋賀医科大学との産学連携プロジェクトとして糖尿病治療薬開発に取り組むため、22年1月に事業推進主体となる創薬ベンチャーとしてバイオジップコードを設立したが、論文発表の目途が立たず、バイオジップコードに対する研究開発支援を継続することが困難になったとして、滋賀医科大学との糖尿病治療薬開発に関する基本合意を解消し、22年6月公表の再生医療・美容関連事業についても撤退することとした。

■オペレーション事業は収益改善を推進

オペレーション事業は、岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。子会社ケンテンは20年4月にラファンと協業してネット販売を強化し、メタバース空間にバーチャルショッピングサイト「KENTEN×LaFan」を出店している。

なお、ホテルオペレーション事業はコロナ禍の影響を受けたため撤退(自社物件のブルーポートホテル苅田北九州空港は自社オペレーションによって収益力を高めたうえで売却)した。23年5月にはインターネットカフェ運営(東京都内2店舗)から撤退した。不採算事業からの撤退によって収益改善を推進する。

■24年3月期営業利益10億円目標

新中期経営計画「Develop the New Market」では、最終年度24年3月期の目標値(21年8月に売上高を上方修正)として、売上高30億円(マーチャント・バンキング事業の不動産関連15億円、海外投資・エストニア関連6億50百万円、ネット販売関連1億50百万円、オペレーション事業7億円)、営業利益10億円、経常利益9億円、当期純利益5億80百万円、EPS20円80銭、1株当たり配当金7円、配当性向33.7%を掲げている。

不動産関連およびオペレーション事業で得られる安定収益をベースとして、企業投資関連、およびブロックチェーン関連(不動産テックプラットフォーム、NFTプラットフォーム、メディテックプラットフォームなど)の拡大に注力する方針だ。

■24年10月期(決算期変更)大幅増益・増配予想

24年10月期(決算期変更で23年4月~10月の7ヶ月決算)の連結業績予想は、売上高が21億円、営業利益が4億70百万円、経常利益が3億円、親会社株主帰属当期純利益が1億95百万円としている。

12ヶ月決算の23年3月期との単純比較で、売上高は51.7%減収、営業利益は30.2%増益、経常利益は101.0%増益、親会社株主帰属当期純利益は黒字転換(2億55百万円増益)となる。配当予想は12ヶ月決算の22年3月期と同額の2円(期末一括)としている。実質的に大幅増益・増配予想となる。

セグメント別計画(増減率は12ヶ月決算の23年3月期との単純比較)は、マーチャント・バンキング事業の売上高が48.5%減の19億60百万円で利益(全社費用等調整前営業利益)が6.2%増の6億50百万円、オペレーション事業の売上高が77.4%減の1億40百万円で利益が20百万円の黒字(23年3月期は66百万円の赤字)としている。

マーチャント・バンキング事業は、収益力向上に向けて物件売却よりも取得に注力するため減収だが、安定的収益源の家賃収入が順調に拡大する見込みだ。オペレーション事業は23年5月末にインターネットカフェ事業から撤退し、残る事業は土岐グランドボウル(岐阜県土岐市)および子会社ケンテンのアパレル・雑貨等販売プロモーション事業となるため減収だが、不採算事業からの撤退によって収益改善する見込みだ。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は反発の動き

株価は年初来安値を更新する場面があったが、素早く切り返して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。6月19日の終値は281円、今期予想連結PER(7ヶ月決算の会社予想連結EPS6円63銭を12ヶ月換算した11円36銭で算出)は約25倍、今期予想配当利回り(7ヶ月決算の会社予想2円を12ヶ月換算した3円42銭で算出)は約1.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS134円50銭で算出)は約2.1倍、そして時価総額は約83億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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