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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】京写は悪地合いの売り一巡して切り返し、次世代無線通信技術を京都大学と共同研究
- 2015/8/27 08:06
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
京写<6837>(JQS)はプリント配線板の大手メーカーである。京都大学と次世代無線通信技術「カオスCDMA」の共同研究契約を締結した。株価は急伸した8月11日高値849円から地合い悪化で急反落したが、目先的な売りが一巡して切り返す動きだ。16年3月期増収増益予想であり、今期予想PERに割安感が強い。上値を試す展開だろう。
■プリント配線板の大手メーカー
世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を収益柱として、実装治具関連事業も展開している。
プリント配線板は防塵対策基板、高熱伝導・放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持ち、生産は国内および中国、インドネシアに拠点展開している。また実装治具関連事業も強化し、14年10月にはキクデンインターナショナルからフロー半田付け搬送キャリア事業を譲り受けた。
15年3月期の製品用途別売上構成比は自動車関連が29.4%、家電製品が26.3%、事務器が12.8%、映像関連が7.0%、アミューズメントが5.6%、その他が18.9%だった。幅広い用途と顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得し、さらにLED照明関連の需要拡大も背景として、製品サイクルの長い自動車関連や家電関連を一段と強化している。
■LED照明関連は自動車ヘッドライトのLED化進展も期待
中期経営計画では目標数値として、最終年度16年3月期売上高200億円(片面プリント配線板100億円、両面プリント配線板85億円、実装治具関連事業15億円)、売上高営業利益率6%(既存製品の営業利益率は6.5%以上)、ROE15%以上、ROA6%以上を掲げている。
重点戦略としては、LED照明関連など環境対応製品の強化、ボリュームゾーンである片面プリント配線板分野における圧倒的トップシェアの獲得、グローバル戦略強化と海外生産の拡大、技術革新やコスト対応による収益力向上、基板・実装関連に次ぐ第3の事業の確立に取り組んでいる。LED照明関連については直管型LED照明の普及に加えて、自動車ヘッドライトのLED化進展も期待されている。
■京都大学と次世代無線通信技術「カオスCDMA」を共同研究
7月31日には京都大学との共同研究契約締結を発表した。梅野健教授(京都大学大学院情報学研究科)の研究室と、次世代無線通信技術の「カオスCDMA」の産業利用化を目的として共同研究する。
梅野健教授がカオス理論を用いて開発した「カオスCDMA」は、非常に高い通信安定性、高速通信、限られた周波数帯域で、多数の端末の同時アクセスを可能にする周波数共有技術である。有線通信と同等の性能を持ち、セキュリティ上重要な機密性も非常に高い無線技術で、信頼性や安定性の面で無線LANの課題を解決できるとされている。
この技術の実用化が実現した場合、産業機器などのように、これまで有線通信が前提だった製品の無線通信化が可能になるため、配線の束が不要になるなどコストダウンや利便性の向上が図られる。また通信分野での利用のほか、工作機械、監視カメラ、ドローン、自動車など、さまざまな用途への利用や製品展開も期待できるとしている。
■16年3月期第1四半期は減益だが、通期は増収増益基調
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)41億65百万円、第2四半期(7月~9月)44億41百万円、第3四半期(10月~12月)45億35百万円、第4四半期(1月~3月)45億36百万円、営業利益は第1四半期2億53百万円、第2四半期2億33百万円、第3四半期2億39百万円、第4四半期1億91百万円だった。
また15年3月期の配当性向は16.7%だった。ROEは14年3月期比0.3ポイント上昇して12.3%、自己資本比率は同3.2ポイント上昇して44.5%だった。
7月31日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比12.8%増の46億97百万円、営業利益が同23.2%減の1億94百万円、経常利益が同16.9%減の2億06百万円、純利益が同7.2%減の1億77百万円だった。
国内での片面プリント配線板の生産量減少、為替の円安による原材料等調達コストの上昇や海外での人件費の増加などで減益だったが、需要が高水準に推移して2桁増収だった。
製品別売上高を見ると、片面プリント配線板は国内が減少したが海外の映像関連分野が伸長して同2.9%増の22億39百万円、両面プリント配線板は海外の自動車関連や事務機関連が大幅に伸長して同18.6%増の17億71百万円、その他は事業譲り受けた搬送用治具事業も寄与して同38.4%増の6億87百万円だった。
通期の連結業績予想は前回予想(4月30日公表)を据え置いて、売上高が前期比13.1%増の200億円、営業利益が同31.0%増の12億円、経常利益が同25.2%増の11億70百万円、純利益が同31.3%増の9億円としている。配当予想は前期と同額の年間8円(期末一括)で、予想配当性向は12.7%となる。
国内外で自動車関連や直管型LED照明関連などが好調に推移する。中国では非日系企業からの新規受注も寄与して稼働率が大幅に上昇するようだ。搬送用治具もスマートフォン関連が好調に推移する。増収効果、稼働率上昇効果、製造ライン自動化進展による生産性向上効果、さらに集中購買による原材料調達コスト低減などの効果も寄与して大幅増収増益予想だ。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が23.5%、営業利益が16.2%、経常利益が17.6%、純利益が19.7%である。低水準の形だが、期初時点で下期偏重の計画であり、現時点ではネガティブ要因とはならない。円安に伴う調達コスト上昇分の価格改定効果も期待され、増収増益基調に変化はないだろう。
■株価は地合い悪化の売りが一巡して切り返し、予想PERに割安感
株価の動きを見ると、京都大学との「カオスCDMA」共同研究契約締結を好感し、年初来安値圏450円近辺でのモミ合いから上放れて8月11日の年初来高値849円まで急伸した。その後は地合い悪化の影響で急反落し、8月25日に494円まで下押す場面があった。ただし26日には終値で626円まで切り返している。目先的な売りが一巡したようだ。
8月26日の終値626円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS62円79銭で算出)は10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS438円92銭で算出)は1.4倍近辺である。
週足チャートで見ると高値圏で乱高下する形となったが、26週移動平均線近辺で長い下ヒゲをつけて目先的な売り一巡感を強めている。そして過熱感も解消した。16年3月期は大幅増収増益予想であり、今期予想PERにも割安感が強い。上値を試す展開だろう。