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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本スキー場開発は地合い悪化の売り一巡、16年7月期も増収増益基調
- 2015/8/27 08:02
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本スキー場開発<6040>(東マ)は関東甲信越を中心にスキー場運営事業を展開している。株価は地合い悪化の影響で急落する場面があったが、目先的な売りが一巡して切り返す動きだ。16年7月期も増収増益基調が期待され、22年中国・北京冬季五輪も収益拡大に向けた追い風となりそうだ。
■関東甲信越を中心にスキー場を運営
05年12月に日本駐車場開発<2353>の戦略子会社として設立し、関東甲信越を中心にスキー場運営事業を展開している。スキー場運営専業として国内初の上場企業だ。
15年3月時点で長野県・HAKUBA VALLEYエリアの4スキー場(白馬八方尾根スキー場、白馬岩岳スノーフィールド、栂池高原スキー場、鹿島槍スキー場)、長野県・竜王スキーパーク、群馬県・川場スキー場、および岐阜県・めいほうスキー場の7スキー場を運営している。
スキー場運営の子会社は、鹿島槍(06年9月取得、鹿島槍スキー場)、北志賀竜王(09年11月取得、竜王スキーパーク)、川場リゾート(10年10月取得、川場スキー場)、白馬観光開発(12年11月取得、白馬八方尾根スキー場、白馬岩岳スノーフィールド、栂池高原スキー場)、めいほう高原開発(14年10月取得、めいほうスキー場)である。
付随サービスとして、スキー・スノーボード用品や登山用具などのレンタル(13年4月取得の子会社スパイシーなど)、スキー場の機械・車両などのメンテナンス、および飲食店舗運営なども展開している。
■ウィンターシーズンの構成比が高い収益構造
ウィンターシーズン(スキー場の営業開始日~営業終了日)には、主にリフト券の販売、料飲の提供、スキー・スノーボードなどの用品レンタル、土産物の販売などを行う。またグリーンシーズン(ウィンターシーズン以外の期間)には、主にリフト券の販売、料飲の提供、登山用具のレンタル、土産物の販売などを行う。
なお14年7月期の7スキー場合計来場者数は13年7月期比15.9%増の167.7万名で、14年7月期の売上構成比はリフト券売上が56.3%、料飲売上が15.2%、レンタル売上が8.4%、その他売上が20.1%だった。
また収益面では、ウィンターシーズン(通常11月~4月)にあたる第2四半期(11月~1月)と第3四半期(2月~4月)の構成比が圧倒的に高く、グリーンシーズンにあたる第1四半期(8月~10月)と第4四半期(5月~7月)は営業赤字となる構造だ。そして冬の降雪量過多または不足などの天候リスク、地震・噴火などの自然リスクも影響しやすい。
ただしグリーンシーズンの収益化が冬の天候リスク吸収や雇用の安定化にも繋がるため、新規事業などの施策によりグリーンシーズンの売上構成比30%(13年7月期実績11.0%%、14年7月期実績21.7%)を目指している。
■地域活性化の中心的な役割を担う存在としてスキー場を再生・運用
事業再生・運営のプロ集団として、貴重な自然を最大限活用したスキー場運営の再デザインを目指し、スキー場取得とバリューアップの相乗効果で成長する独自のビジネスモデルを推進している。
スキー場の再生というと投資ファンド的な印象を受けるが、スキー場を投資・投機・転売対象の不動産としてではなく、中長期的な視点でスキー場を基点とする地域活性化・地方創生を目指し、地元パートナーや地域社会と一体となったハンズオンスタイルで、スキー場の再生・運営に取り組んでいることが特徴だ。
そしてスキー場運営事業の適正な収益化と持続的な成長を実現するため、豊富なノウハウによるスキー場運営における非効率性改善、および新規事業によるオールシーズン経営を推進している。
集客増加策としては、国内外でのスキー・スノーボードに関係する大規模な展示会、旅行会社と連携した商品企画、外国観光業への販路開拓、スキー場の認知度向上に向けた広告宣伝などを実施している。
魅力的なスキー場づくりとしては、上級者が楽しめるゲレンデの設営、ファミリー層向けに子どもが安全に雪遊びできるキッズパークの増設、初心者向けにソリ遊びを中心としたゲレンデの設営、週末・祝日の来場者層に合わせたゲレンデ企画の実施、飲食テナントの充実などの施策を強化している。
またグリーンシーズンにおいては、高山植物園、キャンプなどの自然体験、音楽イベントの誘致、さらにサバイバルゲームフィールドなど、自然を活かした施設への積極投資と販売強化を推進している。
8月28日には竜王マウンテンパークを運営する北志賀竜王が標高1770mの竜王ロープウェイ山頂に2段式テラス「SORA terrace」をオープンする。今後は「SORA terrace」から波及する施設とサービスの価値向上を推進する。
■世界からのインバウンド需要とオールシーズン化の戦略を推進
過去にM&Aで取得した7スキー場については、いずれも収益性が改善し、M&Aの取得費用を回収済みだ。そして一段の成長に向けた戦略として、ジャパンパウダーを求める世界中の顧客を日本のスキー場へ集客するインバウンド戦略や、スキーシーズンだけでなくグリーンシーズンも集客するオールシーズン収益化戦略を推進し、スキー場・関連事業を継続的に取得するM&A戦略を質・量ともに加速する。
スキー場に対する「目利き力」の醸成、再生・運営・危機対応などのノウハウの蓄積、再生トラックレコード(実績)の積み上げで、さらなるスキー場および関連事業の取得・再生に繋げる。IPOによる知名度や信用力の向上も背景として、エリア分散、収益性、雪不足リスク、雪質、アクセス、グリーンシーズンにおける改善余地などを意識しながら、年1件程度ペースでポートフォリオ拡充戦略を推進する方針だ。
なお15年5月、長野県のHAKUBA VALLEY(長野県白馬村・小谷村・大町市に所在する10ヶ所のスキー場からなる日本最大のスノーリゾート)が、世界的に著名なスキーリゾートのみで構成されるTMC(The Mountain Collective)から、日本で唯一のパートナーと承認され、参加することになったと発表している。HAKUBA VALLEY10ヶ所のスキー場のうち、当社グループが4ヶ所を運営している。
■16年7月期も増収増益基調
前期(15年7月期)の連結業績予想(4月22日公表)は売上高が前々期比17.1%増の57億50百万円で、営業利益が同24.2%増の9億円、経常利益が同13.2%増の8億50百万円、純利益が同30.6%増の6億80百万円としている。配当予想は無配を継続する。
来場者数の想定は、ウィンターシーズン156.1万人、グリーンシーズン24.4万人、スキー場全体で前期比7.6%増の180.5万人(うち新規のめいほうスキー場が21.7万人)としている。グリーンシーズンにおいては大雨や台風などの天候リスクを織り込んでいる。
第3四半期累計(8月~4月)は、売上高が54億42百万円、営業利益が12億79百万円、経常利益が12億35百万円、純利益が8億33百万円だった。前年同期との比較で25.1%増収、23.3%営業増益だった。
14年10月取得めいほうスキー場の寄与に加えて、国内外におけるセールスプロモーション効果で、ウィンターシーズンでは外国人旅行客が増加基調であり、長期滞在の傾向も強めている。またグリーンシーズンでは多くの登山客に加えて、宿泊施設を活用した自然体験学校の合宿、スポーツ関係者の合宿などの需要も活発化しているようだ。
通期予想に対する進捗率は売上高94.7%、営業利益142.1%、経常利益145.3%、純利益122.5%だった。ウィンターシーズンの第2四半期と第3四半期の構成比が高い収益構造だが通期ベースでも好業績だろう。さらに今期(16年7月期)も増収増益基調が期待される。
■中期的に収益拡大基調、22年中国・北京冬季五輪も追い風の可能性
国内のスキー人口は、スキーブームと呼ばれたバブル期の80年代~90年代をピークとして長期減少傾向が続いた。しかし近年はスノーボード愛好者の増加や、バブル世代ファミリー層のゲレンデ回帰などで下げ止まり感を強めている。
さらにジャパンパウダーを求める世界中のインバウンド顧客が急増し、滞在長期化傾向も強めている。なお7月31日に22年冬季五輪開催地が中国・北京に決定した。これを契機に中国でスキー人口が増加すれば、雪質の良い日本のスキー場でスキーを楽しむ中国人旅行客が一段と増加する可能性もあるだろう。
一方では、スキー場の淘汰などでスキー場数の減少傾向は続いている。スキー場の新規開発はなく、大手不動産・鉄道会社においてもノンコア事業となってスキー場事業から撤退する動きも見られる。
このためスキー場数と来場者数の需給バランスが改善傾向を強め、特にアクセス、ホスピタリティ、雪質に優れたスキー場には残存者利益が期待できる状況となっているようだ。こうした事業環境の好転も追い風であり、スキー場運営専業企業としての強みを活かして、中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は地合い悪化に伴う売り一巡感
なお5月28日に株主優待制度の導入を発表している。毎年7月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、日本スキー場開発グループが運営するスキー場の割引チケット5枚(1枚で4名利用可)、および日本駐車場開発が運営・管理している時間貸し駐車場の1日駐車料金30%割引券5枚を贈呈する。15年7月31日から実施する。
株価の動きを見ると、5000円台でモミ合う展開だったが、地合い悪化の影響を受けて8月24日に4305円、そして25日に4200円まで急落する場面があった。ただし26日は終値で4895円まで戻している。地合い悪化に伴う目先的な売りは一巡したようだ。
8月26日の終値4895円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS172円55銭で算出)は28~29近辺、実績連結PBR(前期第3四半期末実績の連結BPS1255円97銭で算出)は3.9倍近辺である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、長い下ヒゲをつけて地合い悪化に伴う売り一巡感を強めている。16年7月期も増収増益基調が期待され、8月3日の戻り高値6160円、そして5月の上場来高値7030円を目指す展開だろう。