花王は殺虫成分を使わずに蚊を駆除する技術を開発、蚊の体表面に着目し界面活性剤によって蚊の行動を制御

■殺虫成分を使わずに蚊を駆除する新技術の開発

 花王<4452>(東証プライム)のパーソナルヘルスケア研究所は20日、特定国立研究開発法人 理化学研究所脳神経科学研究センター・知覚神経回路機構研究チームと共同で、表面張力の低い界面活性剤水溶液を蚊に付着させることで、蚊の飛行行動を妨げ、さらにはノックダウン状態にさせられることを見いだしたと発表。この知見を応用し、界面活性剤水溶液をミスト状にして蚊に噴霧するだけで、簡単に蚊を駆除できる技術を開発した。

 今回の研究成果は、Nature Researchの電子ジャーナルScientific Reports(*1)に掲載され、6th Asia Dengue Summit 2023(2023年6月15〜16日、バンコク)にて発表した。

 蚊は、デング熱やマラリアなどの重篤な感染症を媒介する。中でもデング熱は、近年の地球温暖化や急速な都市化等により蚊の生育環境が拡大していることから世界で感染者が増えており、多くの人々に深刻な被害をもたらしている。

 蚊が媒介する感染症の拡大を抑えるためには、治療薬の開発、ワクチンや蚊よけ剤による予防に加えて、蚊を駆除すること自体が有効な手段で、感染症が蔓延する多くの地域でピレスロイド類を用いた殺虫剤が使用されている。一方で近年、ピレスロイド類に対する抵抗性を持ち、殺虫剤で死なない蚊が増加していることが東南アジアなどで確認されており、持続的に使用できるさまざまな駆除方法の開発が求められている。

■蚊の飛行を妨げる界面活性剤水溶液の殺虫効果を発見

 同社は、蚊の体や羽をぬらすことで飛行行動を変えることができる界面活性剤水溶液の殺虫効果を見いだした。蚊の体表は水になじみにくいため、水を噴霧しても飛行に影響があらないが、表面張力低下能の高い界面活性剤水溶液は、蚊の羽や体を効率的に覆うことができる。

 その結果、蚊は羽ばたきができなくなり落下するか、気門がふさがれてノックダウン状態になる。理化学研究所との解析では、界面活性剤水溶液が付着すると、蚊の羽が動かせなくなることや、気門を通じた酸素の取り込みができなくなることが確認された。

 この物理的な殺虫方法は、ピレスロイド類による殺虫メカニズムとは異なり、抵抗性を獲得しにくいと考えられる。蚊の体が水をはじくという性質は蚊の生存に必須であるため、蚊の体をぬらすという方法に対して適応することは難しいからである。この技術は、蚊を媒介とする感染症から守るための新しい手段として期待される。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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