巴工業は最高値更新の展開、23年10月期は上方修正して一転営業・経常増益予想、配当も上方修正

巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。第13回中期経営計画では重点施策として海外事業拡大、収益性向上、SDGsや脱炭素、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率改善、持続的成長に資する投資、社員一人一人が活躍できる職場環境作りに取り組むとしている。23年10月期第2四半期累計は化学工業製品販売事業の好調が牽引して2桁営業・経常増益だった。通期予想は上方修正し、期初時点の減益予想から一転して営業・経常増益予想となった。そして配当予想も上方修正した。経済環境が改善基調であることなども勘案すれば、会社予想にはさらなる上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸し、06年の高値を突破して最高値更新の展開となった。需給面は良好であり、1倍割れのPBRなど指標面の割安感も評価材料だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開

遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。22年4月には欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社としてTOMOE Advanced Materilsを設立した。

22年10月期のセグメント別業績(収益認識会計基準適用のため売上高の増減率非記載、売上総利益および営業利益への影響は軽微)は以下のとおりである。

機械製造販売事業は売上高が113億56百万円(機械30億42百万円、装置・工事11億24百万円、部品・修理71億89百万円)で、売上総利益が21年10月期比1.0%増の40億32百万円、販管費が0.8%増の31億29百万円、営業利益が1.9増の9億03百万円だった。

機械製造販売の売上高の内訳は、官需45億23百万円(機械8億84百万円、装置・工事9億95百万円、部品・修理26億43百万円)、民需28億92百万円(機械5億62百万円、装置・工事1億29百万円、部品・修理22億01百万円)、海外39億39百万円(機械15億95百万円、装置・工事0百万円、部品・修理23億44百万円)だった。

化学工業製品販売事業は売上高が342億32百万円、売上総利益が21年10月期比15.3%増の70億60百万円、販管費が12.0%増の46億64百万円、営業利益が22.5%増の23億96百万円だった。

化学工業製品販売の売上高の内訳は、合成樹脂関連52億74百万円、工業材料関連59億96百万円、鉱産関連49億07百万円、化成品関連81億42百万円、機能材料関連42億07百万円、電子材料関連54億51百万円、その他(洋酒)2億52百万円だった。

収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。

■25年10月期営業利益40億円目標

22年11月からの3年間を対象とする第13回中期経営計画「For Sustainable Future ~持続可能な未来のために~」の基本方針は、既存の枠組みに囚われない新たな価値創造と持続的成長を目指し、持続可能な未来のために変革と成長を続け、業績拡大と企業価値向上を実現するとしている。重点施策としては海外事業の拡大、さらなる収益性の向上、SDGsや脱炭素等、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率の改善、持続的成長に資する投資、社員一人一人が活躍できる職場環境作りに取り組むとしている。

目標数値としては、最終年度25年10月期売上高500億円(機械145億円、化学品355億円)、営業利益40億円(機械13億円、化学品27億円)、経常利益40億円、当期純利益28億円、ROE(純資産利益率)7.6%を掲げている。

機械製造販売事業では、生産改革プロジェクト推進による採算性向上、海外事業の拡大(中国市場での販売強化、米国市場での営業力強化、新たな市場開拓など)の推進、DX(AIによる遠心分離機の自動運転制御など)の推進、SDGs・脱炭素への取り組み(バイナリー発電装置やマイクロ風力発電装置など再生エネルギー分野への展開)を推進する。

化学工業製品販売事業では、海外事業の拡大(タイを軸とする東南アジアでのビジネス拡大、チェコを拠点とする欧州各国への展開、新たなサプライヤー発掘など)の推進、SDGs・脱炭素への取り組み(風力発電などの再生可能エネルギー分野、EVおよびそれを支えるパワー半導体分野への商材提供など)を推進する。

全社共通の重点施策としては、DXの推進によるビジネス変革、資本効率の改善(ROEの改善、最重要指標である連結経常利益またはEBITDAの極大化)、持続的成長に資する分野への投資・経営資源投入(工場設備の整備・拡充、新製品の研究開発、システムインフラの強化、M&A・アライアンスなど)、社員一人一人が活躍できる職場環境作りへの取り組みを推進する。

なお22年4月にはサステナビリティ経営推進基本方針に基づき、脱炭素・循環型社会の実現に向けて主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えている。

■23年10月期は減益予想から一転して営業・経常増益予想

23年10月期の連結業績予想(23年6月7日付で売上高を10億80百万円、営業利益を6億50百万円、経常利益を6億30百万円、親会社株主帰属当期純利益を3億90百万円、それぞれ上方修正)は、売上高が22年10月期比6.3%増の484億60百万円、営業利益が8.8%増の35億90百万円、経常利益が5.2%増の36億円、親会社株主帰属当期純利益が8.6%減の24億30百万円としている。配当予想(6月7日付で第2四半期末12円、期末12円それぞれ上方修正して年間合計では24円上方修正)は、22年10月期比27円増配の80円(第2四半期末40円、期末40円)としている。予想配当性向は32.9%となる。

機械製造販売事業は一部案件繰延などの影響で期初計画(売上高が19.8%増の136億10百万円、営業利益が販管費の増加で2.6%減の8億80百万円)を下回る見込みだが、化学工業製品販売事業が機能材料関連の好調で期初計画(売上高が好調だった前期の反動で1.4%減の337億70百万円、営業利益が販管費増加も影響して14.1%減の20億60百万円)を上回る見込みだ。

第2四半期累計は売上高が前年同期比9.9%増の241億55百万円、営業利益が14.5%増の20億62百万円、経常利益が10.4%増の20億75百万円、親会社株主帰属四半期純利益が11.3%減の14億16百万円だった。

全体として増収、2桁営業・経常増益、最終減益で着地した。機械製造販売事業は国内官需が低調で営業減益だったが、化学工業製品販売事業の好調が牽引した。なお営業外では為替差損益が悪化(前年同期は為替差益43百万円、今期は為替差損35百万円)した。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の固定資産売却益4億56百万円が剥落した影響で減益だった。

機械製造販売事業は、海外向け機械の好調などで売上高が3.8%増の57億98百万円だが、国内官需の伸び悩みなどで営業利益が42.9%減の3億27百万円だった。売上高の内訳は、需要先別には官需が13.5%減の25億56百万円、民需が2.2%増の11億97百万円、海外が40.5%増の20億43百万円、製品別には機械が37.0%増の14億78百万円、装置・工事が20.4%減の5億12百万円、部品・修理が1.3%減の38億07百万円だった。

化学工業製品販売事業は、半導体製造用途の大幅伸長などで売上高が12.0%増の183億57百万円、増収効果で営業利益が41.3%増の17億35百万円だった。製品別の売上高は、合成樹脂関連が樹脂・製品の増加で8.4%増の25億82百万円、工業材料関連が4.5%減の29億83百万円、鉱産関連が建材・自動車用途材料の増加で22.7%増の28億97百万円、化成品関連が塗料・インキ用途材料の増加で6.2%増の42億24百万円、機能材料関連が半導体用途材料の大幅伸長で56.2%増の30億16百万円、電子材料関連が1.1%増の25億18百万円、その他(洋酒)が9.8%増の1億34百万円だった。

四半期別にみると、第1四半期は売上高111億28百万円で営業利益5億58百万円、第2四半期は売上高130億27百万円で営業利益15億04百万円だった。

23年10月期は期初時点の減益予想から一転して営業・経常増益予想となった。そして配当予想も上方修正した。経済環境が改善基調であることなども勘案すれば、会社予想にはさらなる上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年10月末の株主対象

株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。

■株価は最高値更新の展開

株価は急伸し、06年の高値を突破して最高値更新の展開となった。需給面は良好であり、1倍割れのPBRなど指標面の割安感も評価材料だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。6月23日の終値は2926円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS243円53銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の80円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3446円27銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約308億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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