ケンコーマヨネーズは戻り歩調、24年3月期大幅増益予想で収益回復基調

ケンコーマヨネーズ<2915>(東証プライム)はマヨネーズ・ドレッシング分野からタマゴ加工品やサラダ・総菜分野へと事業領域を拡大し、4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)およびサステナビリティ方針に取り組んでいる。24年3月期は大幅増益・増配予想としている。原材料価格・エネルギーコスト高止まりを見込むが、価格改定の追加実施、商品統廃合の実施と利益を確保できる商品の販売促進、徹底した効率化などで収益性改善を推進する方針だ。下期偏重の計画だが積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は水準を切り上げて戻り歩調だ。週足チャートで見ると26週移動平均線を突破して基調転換を確認した形だ。1倍割れのPBRも評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■マヨネーズ・ドレッシング類、ロングライフサラダの大手

サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類の調味料・加工食品事業、フレッシュ総菜(日配サラダ、総菜)およびグループ内生産受託の総菜関連事業等、その他(サラダカフェなど)を展開している。ロングライフサラダは市場シェア国内1位である。ショップ事業のサラダ専門店Salad Cafe(サラダカフェ)は、対面の量り売りサラダや弁当の販売を展開し、新たなブランド創出に向けて百貨店など駅近店舗戦略を推進している。

23年3月期のセグメント別売上高は調味料・加工食品事業が636億78百万円(マヨネーズ・ドレッシング類が238億03百万円、タマゴ加工品が204億46百万円、サラダ・総菜類が181億57百万円、その他が12億70百万円)、総菜関連事業が177億33百万円、その他が9億51百万円だった。セグメント別経常利益は調味料・加工食品事業が▲2億35百万円、総菜関連事業が7億20百万円、その他が14百万円、調整額が▲3億29百万円だった。販路別の売上高構成比は、外食が27.2%、量販店が27.1%、CVSが24.8%、パンが11.9%、給食が4.4%、その他が4.6%だった。23年3月期は外食向けが回復傾向となった。

収益面では、食用油、鶏卵、野菜などの原材料価格が変動要因となりやすく、プロダクトミックス、工場操業度、原燃料コストなどの影響を受ける。利益還元については連結ベースでの配当性向20%を意識し、配当の継続性に配慮しつつ、今後の成長と発展にあわせて安定配当水準を高めていくことを基本方針としている。

■事業環境変化に対応して変革推進

中期経営計画KENKO Transformation Plan(21年度~23年度)では、目標数値に24年3月期売上高800億円、経常利益40億円を掲げている。基本方針として4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)およびサステナビリティ方針に取り組み、事業環境変化に対応して企業価値向上と持続的な成長へ向けた変革を推進する。

BtoBtoCでは、デザイン変更や簡便性・調理時間短縮など利便性を高めた商品開発による消費者へのブランド認知度向上、新しい生活様式やライフスタイル多様化に対応した小容量・常温商品の拡充・リニューアル、原材料価格高騰に対応した高付加価値・機能性商品の開発強化、ドラッグストアや大手スーパーなど取り扱い店舗増加によるマーケティング強化、WEB・オンライン動画や料理教室の活用による情報発信・販促活動の強化、自社ECサイトによる販売強化、サラダカフェのブランド創出・駅近店舗戦略などを推進している。

商品・ノウハウの発信に関しては、22年10月にサラダカフェ「チーズ香るケールとキヌアの美サラダ」が、日本雑穀アワードデイリー食品部門〈2022年・秋〉で金賞を受賞した。22年11月には自社製品「CANDISH saba」が、一般社団法人未来の食卓が主宰する「未来の食卓アワード2022日本缶詰大賞」の「おさかな部門」でグランプリを受賞した。23年1月には23年春夏向け新商品を発表した。人気の世界の料理をソースで手軽に楽しめる商品や、日本では定番の味わいで海外でも好まれるテイストの商品など、日本国内や世界へ食の楽しさと可能性を伝える商品を開発したとしている。

23年2月にはサラダカフェの「釜揚げしらすと梅のサラダごはん」が「惣菜・べんとうグランプリ2023」の健康・ヘルシー部門で優秀賞を受賞した。子会社のダイエットクック3社が製造する3商品も入賞した。23年3月には子会社ダイエットクックサプライが、オンラインショップを開設して「福山工場長シリーズ」の「つつんで“たすカル”ツォーネ」の販売を開始した。

イノベーションでは、賞味期限延長や植物性原料を中心に仕上げたプラントベース商品などSDGsを意識したメニュー・商品の開発、食品ロスの削減、地方創生・活性化につながる郷土料理の商品化や持続可能な農業支援、包装・資材の最適化、生産面でのカーボンニュートラルの実現、構造改革では業務プロセスや生産効率の改善、働きやすい職場環境づくり、人事制度改革、基幹システム再構築、コーポレート・ガバナンスの強化、グローバルでは輸出販売の強化、グローバル対応商品や輸出用長期賞味商品の拡充などを推進している。

地域活性化に関しては、22年3月に、鮮魚販売や水産食料品製造販売を行う鮮冷(宮城県女川町)、およびコンサルティング業務を行うくりや(北海道上川郡)と、地方創生に向けた活動を協働していくことで合意した。地域の食材を活かした商品・メニュー開発、食を通じた地域経済活性化など地域密着型の取り組みを推進する。22年12月には子会社のダイエットクックサプライ(広島県福山市)が製造する「福山工場長シリーズ」の商品が、福山市都市ブランド戦略推進協議会主催「第8回福山ブランド」商品・サービス部門においてブランド認定された。

サステナビリティへの取り組みも強化している。21年7月に「食を通じて世の中に貢献する」という企業理念に基づいてサステナビリティ方針を公開し、加工ロス削減による廃棄物削減などの目標を設定した。21年9月には「国連食料システムサミット2021」への支持表明とコミットメント提出を発表した。21年10月には静岡富士山工場が障害者雇用優良事業所として静岡県知事褒賞を受賞した。

22年10月には、マヨネーズ・ドレッシング類の一部商品において環境配慮型包材(バイオマスインキ使用の包材)への切り替えや個装箱の見直しを順次拡大し、資材量とCO2削減を推進すると発表した。23年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、TCFD提言に基づく情報を開示した。また自社商品サイトにフードロスを減らす「食材使い切りレシピ」を公開した。

23年5月には、関東ダイエットクックが関東圏の量販店バックヤード向けに、アジアン米飯キット2点を発売すると発表した。店舗での人手不足が深刻化するなか、簡単に調理でき、食品ロス削減につながるとしている。

■24年3月期大幅増益予想で収益回復基調

24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比6.1%増の874億円、営業利益が11.6倍の12億20百万円、経常利益が7.7倍の13億円、親会社株主帰属当期純利益が17.4%増の5億70百万円としている。配当予想は23年3月期比8円増配の25円(第2四半期末10円、期末15円)としている。予想配当性向は71.3%となる。

セグメント別売上高計画は調味料・加工食品事業が7.2%増の682億88百万円(マヨネーズ・ドレッシング類が19.1%増の283億38百万円、タマゴ加工品が16.4%減の170億96百万円、サラダ・総菜類が17.1%増の212億58百万円、その他が25.7%増の15億96百万円)、総菜関連事業等が2.3%増の181億36百万円、その他(サラダカフェ)が2.5%増の9億75百万円としている。

経常利益11億31百万円増益の要因分析の計画は、価格改定効果で+71億98百万円、販売数量減少(たまご製品の販売数量制限や一部商品体系の影響)で▲2億53百万円、製造原価(工場操業度低下、エネルギーコスト増加、商品統廃合、生産効率改善など)で▲6億91百万円、固定経費等で▲5億67百万円、原材料影響で▲45億56百万円としている。なお6月1日に、老朽化した関東ダイエットエッグ日高工場を閉鎖(23年8月31日に生産終了)すると発表したが、自社および連結子会社に生産移行するため業績への影響は軽微としている。

たまご製品の販売数量制限や一部商品休売を継続し、原材料価格・エネルギーコストも高止まりを見込むが、前期までに実施した価格改定効果に加え、23年7月に実施する追加価格改定(ロングライフサラダ類、和惣菜)の効果、商品統廃合の実施と利益を確保できる商品の販売促進、たまご製品販売数量減少への対応、総菜関連事業の冷総菜売場以外への販路拡大、フレッシュ商品とのコラボによるサラダカフェブランド商品強化、徹底した効率化(生産効率改善、集約生産、管理コスト削減)などで収益性改善を推進する方針だ。下期偏重の計画だが積極的な事業展開で収益回復基調だろう。

■株主優待制度は毎年3月末の株主対象

株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年3月末日現在の株主を対象として、保有株式数に応じて当社商品を贈呈している。なお5月30日に株主優待品の贈呈時期の変更を発表している。

■株価は戻り歩調

株価は水準を切り上げて戻り歩調だ。週足チャートで見ると26週移動平均線を突破して基調転換を確認した形だ。1倍割れのPBRも評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。6月23日の終値は1338円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS35円05銭で算出)は約38倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2281円75銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約220億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1.  暖房機器、除雪商品などを展開し割安放置が目立つセクターにホームセンター株がある。PBRが1倍を割…
  2. ■背広の売れ行きが映す街角の景気シグナル  街角の景気実感を分析し、景気実態を明らかにする経済指標…
  3. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  4. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る