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イトーキは07年以来の高値圏、23年12月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れ余地
- 2023/6/28 09:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イトーキ<7972>(東証プライム)はオフィス家具の大手で物流設備なども展開している。構造改革プロジェクトを推進して新製品投入などを強化している。23年12月期はオフィス移転・リニューアル案件など需要が高水準に推移し、販売価格適正化や構造改革プロジェクト推進なども寄与して大幅営業・経常増益予想としている。第1四半期の利益が想定以上だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は07年以来の高値圏だ。1倍割れのPBRなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■オフィス家具の大手で物流機器関連も展開
オフィス家具の大手で物流設備なども展開している。製販一貫体制を特徴としている。21年5月には公共空間へのアート導入を展開するアートプレイスを子会社化してアート関連事業を開始した。海外は20年6月に中国の地域統括会社として伊藤喜を設立し、拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。
22年12月期のセグメント別業績は、ワークプレイス事業の売上高が21年12月期比6.7%増の859億45百万円でセグメント利益(営業利益)が34.7%増の25億79百万円、設備機器・パブリック事業の売上高が6.5%増の356億67百万円でセグメント利益が52.2%増の14億82百万円、IT・シェアリング事業の売上高が7.6%減の16億24百万円でセグメント利益が4億49百万円の黒字(前年同期は3億85百万円の赤字)だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる第1四半期(1月~3月)偏重の特性がある。
ワークプレイス事業はオフィス家具、建材・内装工事、オフィス空間デザイン、学習家具など、設備機器・パブリック事業は物流設備、特殊扉、研究施設機器など、IT・シェアリング事業はオフィスシェアリング、オフィス機器レンタル、ITシステム開発などを展開している。
本社オフィスのITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。23年4月にはITOKI TOKYO XORKを大規模リニューアルして公開した。
23年2月には、2月9日を「学習机の日」として記念日登録を申請し、一般社団法人日本記念日協会より正式に登録された。同社は1962年に日本で初めてスチール製学習机を発売した。
23年4月にはOlika(オリカチェア)、inSAIL(インセイル)、torteU(トルテU)が、世界三大デザイン賞の一つである「レッドドット・デザイン賞2023」を受賞した。また、23年4月に開催されたオフィス家具見本市「オルガテック東京2023」では、優れたブースを表彰する「BEST PRESENTATION AWARDS Supported by ELLE DECOR Magazine」準グランプリを受賞した。
■ポストコロナの働く環境づくりをリード
中期経営計画「RISE ITOKI 2023」では、目指す姿を「ポストコロナの働く環境づくりをリードする」「強靭な体質の高収益企業になる」として、重点方針を構造改革プロジェクトの実行、新たな価値の創出と提供、不採算事業の早期黒字化達成、人材の育成、ESG経営の実践としている。
目標値には、23年12月期売上高1330億円(オフィス関連709億円、設備機器関連590億円、その他31億円)、営業利益60億円(オフィス関連35億50百万円、設備機器関連23億円、その他1億50百万円)、営業利益率4.5%、経常利益59億円、ROE7.0%以上を掲げている。
基本戦略としては、オフィス市場では構造改革による高収益化、全ての空間を市場とする新たな価値提供、DXを活用した新しい営業スタイルの実行・展開、設備機器市場では自社保有技術の確立と社会インフラ発展への寄与、急増する物流施設商談に対応するための生産能力増強、グループ内連携によるシナジー効果発揮、海外市場では中国市場での販売体制拡充、コストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築、その他(ECビジネス市場)ではテレワーク家具の販売機会創出、新たな顧客層獲得に向けた新規チャネル立ち上げなどを推進する。
22年4月にはグループ会社のエフエム・スタッフが栃木県矢板市と「矢板SLOW WORK推進コンソーシアム」を設立し、地域共創型シェアオフィス「スローワーク矢板」を開設した。また、NTTコミュニケーションズおよびNTTドコモと共同で、ニューノーマル時代の新たなコミュニケーションサービス「office surf」の実証実験を開始した。
22年6月には「働く人」を中心とするDXの実現に向けて、オンライン共創ラボ「ITOKI Open―DX Lab」ウェブサイトをオープンした。22年7月には、多様化する新しい時代の働き方に寄り添い、クリエイティブを触発するオフィス家具「common furniture」を発売した。
22年9月には、在宅ワーク環境をアップデートする人気チェアを対象に、イトーキ公式オンラインショップでAR(拡張現実)が体験できるサービスを開始した。また22年9月には、完全予約制のコンシューマー向けチェアショールーム「ZA SALON TOKYO(坐サロン東京)」を東京京橋にオープンした。
22年11月には、静岡聖光学院との実証研究プロジェクト(メタバースを用いた仮想空間と現実空間の学習環境のデザインと教育カリキュラムの構築プロジェクト)が、文部科学省「次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進業」に採択された。
23年1月には新たなモノづくりの形として滋賀工場APセンター(アセンブル・プロセスセンター)が本格稼働した。自社製品の保管・組立・出荷を一元的に行うセンターで、オフィス商品のアセンブル生産方式を強化し、生産性向上および収益拡大を推進する。
23年2月には「メタバース×リアル」のハイブリッドショールームによる実証実験開始を発表した。ECメタバースの「メタストア」を提供するハコスコ社の協力のもと、ハイブリッドショールームによるDX時代の新しいコミュニケーション空間を探るとしている。
6月1日には、次世代の学習環境および教育カリキュラム(文部科学省の採択事業)として、メタバースを活用した「バーチャルSTEAM教室」を開発し、静岡聖光学院にて実装したと発表している。また6月12日には、CO2排出量可視化のクラウドサービスを提供するe-dashとの連携により、カーボン・クレジットのマーケットプレイス「E-dash Carbon Offset」上で、5月30日より販売を開始したと発表している。民間主導では日本初となるJ-クレジットのマーケットプレイスである。
■構造改革プロジェクトを推進して企業価値向上と持続的成長を図る
20年7月にアドバンテッジアドバイザーズと提携し、アドバンテッジアドバイザーズがサービス提供するファンドを割当先とする第1回新株予約権を発行した。営業体制改革、保有資産の効率的活用、オフィス家具以外の事業セグメントの高収益化などに関連した構造改革プロジェクトを推進し、アドバンテッジアドバイザーズの支援も受けながら企業価値向上と持続的成長を図る方針だ。
なおテレワークの導入・活用を進めて実績を積んだ企業として総務省が実施する令和3年度テレワーク先駆者百選に選定されている。
22年7月には、テレワーク勤務制度を改定し、従来の在宅勤務に加えて、自宅以外で従業員が準備・選択した「マイプレイス」でのテレワーク勤務も可能とした。さらに、サステナビリティ経営の実現に向けてマテリアリティを刷新した「統合報告書2022」を発行し、2050年カーボンニュートラル目標を表明した。22年8月には、女性活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業として、厚生労働省より「えるぼし」の3つ星(3段階目)認定を取得した。
22年9月には特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパンが主宰する「イクボス企業同盟」に加盟した。22年10月にはワーク・ライフバランスが推進する「男性育休100%宣言」に賛同した。22年11月には、性的指向や性自認などにおける多様性を尊重し、誰もが自分らしく働ける職場環境を目指して「LGBTQアライ宣言」し、LGBTQに関する職場における取り組みの評価指標である「PRIDE指標2022」において「ブロンズ」を受賞した。
22年12月には東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2022」において、三重大学およびダルトンとの共同研究の一環として、ドリップ後に出る「コーヒーの豆かす」を活用して試作した植物由来のボード「Coffee Grounds board」を参考展示した。また、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が実施する「令和4年度第2回国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証)」において「事業継続および社会貢献」の認証を取得した。
23年1月には、事実婚や同性のパートナー、およびその子、親に対し、法律上の配偶者や家族と同様に福利厚生や規程を適用する「パートナーシップ制度」を導入するとともに、ハラスメントに関する規程の改定、および同性婚の法制化を推進するBME(Business for Marriage Equality)への賛同を発表した。
23年2月には、JobRainbow社主催のダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業を認定する日本最大のアワード「D&I Award 2022」において、最高ランクの「ベストワークプレイス」に認定された。
さらに23年3月には、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する健康経営優良法人2023(大規模法人部門ホワイト500)に認定された。オフィス家具事業を展開する企業としては初の7年連続認定となる。なお23年3月には「マテリアリティの目標とKPI」を会社HPに掲載している。
■23年12月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れ余地
23年12月期の連結業績予想は売上高が22年12月期比5.4%増の1300億円、営業利益が41.8%増の65億円、経常利益が55.6%増の65億円、親会社株主帰属当期純利益が特別利益の一巡で30.1%減の37億円としている。配当予想は22年12月期比12円減配の25円(期末一括)としている。22年12月期の37円には特別配当20円が含まれているため、普通配当ベースでは8円増配との形となる。
第1四半期は、売上高が前年同期比4.6%増の369億65百万円、営業利益が20.5%増の47億77百万円、経常利益が21.4%増の48億24百万円だった。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の債務免除益7億79百万円が剥落して2.7%減の32億96百万円だった。
リニューアル案件やオフィス移転案件など需要が高水準に推移して増収、販売価格適正化や構造改革プロジェクト推進による売上総利益率改善も寄与して想定を上回る大幅営業・経常増益だった。営業利益8億円増益の要因分析は、売上増加に伴う利益増加+6億円、売上総利益率改善(カタログ価格改定・販売価格適正化、構造改革プロジェクト推進など)+3億円、販管費増加(DX推進のためのIT基盤強化など)▲3億円、物流費減少(構造改革プロジェクト推進による物流サービス収益力強化)+2億円としている。
ワークプレイス事業は、売上高が3.0%増の277億19百万円で、営業利益が14.3%増の40億59百万円だった。新しい働き方にあわせたオフィス移転・リニューアル案件を中心に需要が好調だった。増収効果や構造改革プロジェクト推進によって売上総利益率が改善した。
設備機器・パブリック事業は、売上高が9.6%増の87億89百万円で、営業利益が87.8%増の5億53百万円だった。博物館・美術館の展示ケースやデジタルサイネージ等の公共施設向け設備の需要が好調に推移した。増収効果や構造改革プロジェクト推進によって売上総利益率が改善した。
IT・シェアリング事業は、売上高が8.3%増の4億20百万円で、営業利益が30.4%増の1億31百万円だった。システム開発事業、システム検証事業、オフィス空間シェア事業が堅調に推移した。
通期予想は据え置いて、大幅営業・経常増益予想としている。セグメント別の計画は、ワークプレイス事業の売上高が7.9%増の927億円でセグメント利益(営業利益)が75.6%増の45億円、設備機器・パブリック事業の売上高が0.5%減の355億円でセグメント利益が5.5%減の14億円としている。設備機器・パブリック事業は前期の大型案件の反動減を見込むが、ワークプレイス事業において新しい働き方にあわせたオフィス移転・リニューアル案件を中心に需要が好調に推移し、構造改革プロジェクト推進で体質改善効果も継続する見込みとしている。営業利益計画65億円は中期経営計画目標60億円を上回る水準である。
なお通常は第1四半期の構成比が高い季節特性だが、今期はワークプレイス事業のオフィス移転案件が期中に分散し、設備機器・パブリック事業では物流設備案件が下期に偏重するため、通常と異なる四半期構成になる見込みとしている。第1四半期の利益が想定以上だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は07年以来の高値圏
株価は07年以来の高値圏だ。週足チャートで見ると13週移動平均線が支持線のとなっている。1倍割れのPBRなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。6月27日の終値は957円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS81円70銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1100円33銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約437億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)