加賀電子は上値試す、24年3月期減益予想だが25年3月期成長回復シナリオ

 加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託のEMSビジネスを展開し、成長に向けて収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営を推進している。24年3月期は減収減益予想としている。コロナ禍における需要増からの反動や顧客の在庫調整の影響で一時的な需要減退を見込んでいる。ただし中期経営計画最終年度25年3月期営業利益目標を大幅に引き上げている。25年3月期は成長軌道に回復するシナリオだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸して高値更新の展開だ。目先的には利益確定売りが優勢になる可能性もあるが、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形であり、依然として指標面の割安感も強い。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■独立系の大手エレクトロニクス総合商社

 独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。M&Aも積極活用して半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。

 19年1月に富士通エレクトロニクスを子会社化(20年12月に社名を加賀FEIに変更、22年1月に完全子会社化)した。19年10月にはパイオニアの製造子会社である十和田パイオニアを子会社化して商号を加賀EMS十和田に変更、20年4月にはエレクトロニクス商社のエクセルを子会社化、20年11月には旭東電気から新設分割された新:旭東電気を子会社化した。21年10月には加賀EFIが、太陽誘電<6976>からBluetoothおよびWireless LANモジュールに関わる商圏、開発・製造技術ならびに知的財産権を承継し、22年1月から小型無線モジュール事業に本格参入した。

 23年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)が89%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)が7%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)が0%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)が4%、営業利益構成比は電子部品事業が88%、情報機器事業が8%、ソフトウェア事業が1%、その他事業が3%、調整額が0%だった。

 中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。23年3月期の売上構成比は電子部品事業が66%、EMS事業が25%、CSI事業が7%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が60%、EMS事業が30%、CSI事業が8%、その他事業が2%、調整額が0%だった。

■収益力強化や新規事業創出を推進

 中期経営計画2024では基本方針に、更なる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。経営目標値(23年5月11日付で営業利益とROEを上方修正)については、25年3月期の売上高が7500億円(電子部品事業3800億円、EMS事業1500億円、CSI事業540億円、その他事業160億円、新規M&A等1500億円)、営業利益が300億円以上(前回予想は200億円)、ROEが安定的に10%以上(同、安定的に8.5%以上)としている。株主還元については連結配当性向の目安を25~35%に置き、安定的かつ継続的に充実化する。

 重点アクションとして、さらなる収益力の強化では成長分野(モビリティ、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への選択と集中、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大、経営基盤の強化ではコーポレートガバナンスの強化、効率的なグループ運営、人的資本への投資、新規事業の創出では新規分野への取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションの推進、非連続な成長を狙うM&Aへの挑戦を掲げている。SDGs経営の推進については、サステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指す。

 23年1月には、トラース・オン・プロダクト<6696>が開発したAIによる電力コスト削減システム「AIrux8(エーアイラックス エイト)」について、日本における代理店1号として販売開始した。

 23年2月には、子会社のエクセルがEVバスの輸出入を展開するアルファバスジャパンと共同で、しずてつジャストライン(静岡県静岡市)に中国ALFA社製のEVバスを納入し、静岡県内初となる大型EV路線バスとして静岡市内の路線で運行開始した。23年3月には越後交通(新潟県長岡市)に中国ALFA社製のEVバスを納入し、新潟県内初となる大型EV路線バスとして長岡市内の路線で運行開始した。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023」の認定を受けた。

■24年3月期減益予想だが25年3月期成長回復シナリオ

 24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比9.5%減の5500億円、営業利益が22.5%減の250億円、経常利益が23.6%減の250億円、そして親会社株主帰属当期純利益が22.0%減の180億円としている。配当予想は23年3月期と同額の220円(第2四半期末110円、期末110円)としている。23年3月期には特別配当70円および創立55周年記念配当10円が含まれているため、普通配当ベースでは80円増配の形となる。予想配当性向は32.1%となる。

 24年3月期は減収減益予想としている。コロナ禍における需要増からの反動や顧客の在庫調整の影響で一時的な需要減退を見込んでいる。営業利益72億49百万円減益の要因分析は販売数量・販売ミックスで▲48億83百万円、スポット販売減少で▲46億31百万円、販管費減少で+22億65百万円、為替影響で±0百万円の見込みとしている。

 セグメント別の計画は、電子部品事業の売上高が12.6%減の4715億円で利益(全社費用等調整前営業利益)が26.9%減の207億円、情報機器事業の売上高が3.0%増の450億円で利益が2.1%増の25億円、ソフトウェア事業の売上高が50.1%増の45億円で利益が4.6%増の3億円、その他事業の売上高が31.6%増の290億円で利益が36.1%増の15億円としている。

 ただし中期経営計画の最終年度25年3月期営業利益目標を従来の「200億円」から、今回の「300億円以上」に大幅に引き上げている。24年3月期は一時的な需要減退の影響を受けるが、25年3月期は成長軌道に回復するシナリオだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 なお22年8月には、JPX総研および日本経済新聞社が共同して算出する「JPX日経中小型株指数」の2022年度構成銘柄として、昨年度に続いて選定された。

 23年1月には3つの主要なIRサイト評価機関において22年度も高い評価を得たとリリースしている。具体的には大和インベスター・リレーションズの2022年インターネットIR表彰で最優秀賞、日興アイ・アールの2022年度全上場企業ホームページ充実度ランキング調査で総合部門・最優秀サイト、ブロードバンドセキュリティのGomez IRサイトランキング2022で優秀企業・銅賞を獲得した。

 株価は急伸して高値更新の展開だ。目先的には利益確定売りが優勢になる可能性もあるが、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形であり、依然として指標面の割安感も強い。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。6月28日の終値は6240円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS685円42銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の220円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4935円36銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約1791億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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