マーケットエンタープライズは上値試す、23年6月期黒字転換予想で24年6月期も収益拡大基調

マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は、持続可能な社会を実現する最適化商社を目指してネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開し、個人向けリユースの成長回帰、中古農機具・建機および「おいくら」の成長加速など成長戦略再構築を推進している。23年6月期は成長に向けた先行投資による費用の増加を吸収して黒字転換予想としている。積極的な事業展開で中期経営計画が順調に進捗し、24年6月期も収益拡大基調だろう。株価は年初来高値圏で堅調だ。週足チャートで見ると13週移動平均線が支持線の形となっている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお8月14日に23年6月期決算発表を予定している。

■持続可能な社会を実現する最適化商社

持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。

22年6月期のセグメント別(連結調整前)の売上構成比はネット型リユース事業が55%、メディア事業が5%、モバイル通信事業が40%、営業利益構成比はネット型リユース事業が19%、メディア事業が58%、モバイル通信事業が23%だった。22年6月期はネット型リユース事業が成長投資の影響で大幅減益、メディア事業が送客収入の回復で大幅増益、モバイル通信事業が獲得コスト増加で小幅減益だった。

なお、大株主だったYJ1号投資事業組合から信託期間満了により保有株式売却の意向が寄せられたことに伴い、市場売却による株価形成への影響を避けるため、22年9月14日付でSBI証券と差金決済型自社株価先渡取引に係る契約を締結した。そして22年9月15日付の立会外終値取引(ToSTNeT―2)によって、YJ1号投資事業組合が保有していた同社株式40万株をSBI証券が取得した。今後の会計上の取り扱いとしては、各四半期末時点で時価評価を実施し、前四半期末との差額を営業外収益または費用に計上する。

■「高く売れるドットコム」と「おいくら」

ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。

20年7月には「高く売れるドットコム」と、19年2月に事業を譲り受けた日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」のシステム連携・送客を開始した。21年6月には内閣府が運営する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に参画した。21年10月には「高く売れるドットコム」が、特定非営利法人・一般社団法人ハウスキーピング協会主催「シンプルスタイル大賞2021」のサービス・空間部門で特別賞を受賞した。

23年3月にはヤフオク!ベストストアアワード2022において総合賞第3位、ならびに3つの部門賞(家電部門とPC・スマホ部門で部門賞1位、おもちゃ・ゲーム・ホビー部門で部門賞3位)を受賞した。

なお買取・物流拠点のリユースセンターについては、23年5月に品川リユースセンター 五反田TOC店(東京都品川区)を開設し、全国14拠点となった。

地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進しており、21年6月には北海道絵恵庭市と「おいくら」を活用した持続可能な循環型社会に関する連携協定を締結、21年7月には三重県いなべ市と持続可能な循環型社会に関する包括協定を締結、22年4月には川崎市および東京都墨田区における粗大ごみリユース事業として「おいくら」が本格導入された。22年7月には埼玉県川越市と、地域社会における課題解決を目的とした連携による楽器寄附ふるさと納税の取り組みを開始した。

リユースプラットフォーム「おいくら」を導入した不用品リユース事業は、22年10月に東京都東村山市、兵庫県神戸市、茨城県ひたちなか市、埼玉県坂戸市、大阪府大阪市、22年11月に兵庫県西宮市、埼玉県所沢市、静岡県藤枝市、22年12月に東京都渋谷区、東京都北区、北海道倶知安町、福島県福島市、23年1月に広島県広島市、福岡県筑後市(実証実験)、岡山県岡山市、大阪府豊中市、23年2月に埼玉県東松山市、埼玉県吉見町、埼玉県鶴ヶ島市、神奈川県座間市、23年3月に徳島県吉野川市、三重県桑名市、神奈川県横浜市、神奈川県愛川町、静岡県浜松市、大阪府藤井寺市、千葉県船橋市、大阪府松原市、埼玉県狭山市、23年4月に大阪府茨木市、愛知県一宮市、千葉県白井市、香川県三木町、茨城県つくばみらい市、23年5月に大阪府東大阪市、愛知県名古屋市、埼玉県飯能市、23年6月には徳島県徳島市、大阪府門真市、茨城県守谷市、山梨県上野原市、埼玉県富士見市、埼玉県新座市、京都府長岡京市、群馬県桐生市、大阪府吹田市で導入され、「おいくら」導入自治体が全国で50となった。

■中古農機具

中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。

21年10月にはマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設し、グループ全体のリユースセンターは12拠点となった。そして21年11月には北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始した。中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進する。22年4月にはファーマリーが展開する中古農機具の買取・販売事業を譲り受けた。

なお販売商流の多様化を目指し、カーチスホールディングス<7602>のグループ会社で中古車輸出のアガスタと業務提携した。そして22年12月には、海外向け中古車販売サイト「PicknBuy24.com」を通じて、アフリカへの販路開拓を目的とした中古農機具のテスト販売を開始した。

23年3月には就農者支援と新規就農促進を目的として中古農機具を用いたリユース連携を開始すると発表した。第1弾として福島市と連携した。中古農機具市場の活性化を促進することで、農業の観点からも持続可能な社会形成を目指すとしている。

■メディア事業とモバイル通信事業

メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。

モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。

なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。

モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。

23年2月には「カシモWiMAX」が、カカクコムの「価格.com」内の「モバイル回線プロバイダ 人気ランキング2022年」において、モバイルルーター部門・ホームルータ部門でともに年間1位となり、総合ランキング1位を獲得したと発表している。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示している。21年8月公表の中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

21年8月公表の中期経営計画では目標として24年6月期売上高200億円、営業利益12億円を掲げている。主力の個人向けリユースの成長回帰、マシナリー(農機具・建機)および「おいくら」の成長加速などの売上成長により、まずは中期経営計画の達成を目指し、さらに25年6月期も含めて2期合計営業利益25億円を稼ぐ収益構造を構築する。

24年6月期売上高計画の内訳は、ネット型リユース事業137億44百万円(個人向けリユース100億円、マシナリー30億円、「おいくら」7億44百万円)、メディア事業8億円、モバイル通信事業55億円としている。さらに25年6月期以降は、リユースの継続的成長に加えて、「おいくら」およびモバイルのストック収益を中心に持続的な収益拡大を目指すとしている。

22年9月には計画の進捗状況をリリースした。中期経営計画の初年度22年6月期が想定どおりの進捗だったため、基本方針および計画期間等に変更はないとしている。

なお同社のIRサイトは、22年12月には大和インベスター・リレーションズの2022年インターネットIR表彰において4年連続4度目の優良賞を受賞、23年1月には日興アイ・アールの2022年度全上場企業ホームページ充実度ランキングにおいて総合部門の最優秀サイトに初めて選出された。

■23年6月期黒字転換予想で24年6月期も収益拡大基調

23年6月期の連結業績予想は、売上高が22年6月期比25.1%増の150億円、営業利益が3億円の黒字(22年6月期は3億19百万円の赤字)、経常利益が2億75百万円の黒字(同3億28百万円の赤字)、そして親会社株主帰属当期純利益が1億67百万円の黒字(同4億04百万円の赤字)としている。

個人向けリユースを中心に成長戦略を加速するため、広告・採用等の先行投資を継続するが、事業を譲り受けたファミリーの中古農機具買取・販売事業とのシナジー効果なども寄与して大幅増収・黒字転換予想としている。そして、中期経営計画の最終年度24年6月期の目標値である売上高200億円、営業利益12億円の達成に向けて、成長戦略再構築の進捗は順調としている。

部門別売上高(調整前)の計画は、ネット型リユース事業が47.9%増の98億04百万円(個人向けリユースが45.9%増の75億円、マシナリーが46.5%増の20億円、おいくらが2.4倍の3億04百万円)、メディア事業が16.9%増の7億円、モバイル通信事業が2.9%増の50億円としている。

第3四半期累計は売上高が前年同期比30.8%増の111億63百万円、営業利益が39百万円の黒字(前年同期は2億23百万円の赤字)、経常利益が89百万円の黒字(同2億40百万円の赤字)、そして親会社株主帰属四半期純利益が1億06百万円の赤字(同2億13百万円の赤字)だった。

全セグメントが大幅増収となり、成長に向けた先行投資(広告展開、人員拡充、新規拠点開設など)による費用の増加を吸収して営業・経常黒字転換した。連結売上高は第3四半期累計として過去最高だった。

ネット型リユース事業は売上高が29.7%増の61億37百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が171.9%増の2億17百万円だった。各種リソース拡充の成果で3事業領域(個人向けリユース、マシナリー、おいくら)とも増収となり、増収効果で営業損益が改善した。個

メディア事業は、主力のモバイル通信分野が堅調に推移し、売上高が38.1%増の5億74百万円、利益が38.0%増の3億30百万円だった。新たな領域へのメディア展開など収益基盤の多様化も寄与した。

モバイル通信事業は、メディア事業との連携強化や新規回線獲得数の増加などにより、売上高が31.6%増の45億42百万円、利益が104.7%増の2億67百万円だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が36億71百万円で営業利益が57百万円の赤字、第2四半期は売上高が37億15百万円で営業利益が14百万円の黒字、第3四半期は売上高が37億76百万円で営業利益が83百万円の黒字だった。第2四半期から営業黒字基調となった。

通期の連結業績予想は据え置いている。成長に向けた先行投資による費用の増加を吸収して黒字転換予想としている。なお第4四半期に投資有価証券売却に伴う特別利益を計上(約3億円)する見込みで、業績予想の修正が必要となった場合は速やかに公表するとしている。

通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74%、営業利益が13%、経常利益が32%である。利益進捗率が低水準の形だが、第2四半期から営業黒字基調となっていることを勘案すれば、通期会社予想の達成は可能と考えられる。積極的な事業展開で中期経営計画が順調に進捗し、24年6月期も収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

株価は年初来高値圏で堅調だ。週足チャートで見ると13週移動平均線が支持線の形となっている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。7月4日の終値は1598円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS31円39銭で算出)は約51倍、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS197円95銭で算出)は約8.1倍、そして時価総額は約85億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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