And Doホールディングスは利益確定売り一巡、24年6月期も収益拡大基調

And Doホールディングス<3457>(東証プライム)は住まいのワンストップサービスを展開し、不動産×金融サービスの深化による高収益化を目指す不動産テック企業である。ストック収益を積み上げるフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融事業、および不動産売買事業を成長強化事業と位置付けて収益の柱としている。なお23年7月に古田敦也氏イメージキャラクター10周年を迎えた。23年6月期はハウス・リースバック事業や不動産売買事業が牽引して大幅増収増益予想としている。さらに24年6月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は6月末の権利落ちも影響して年初来高値圏から急反落の形となったが、低PERや高配当利回りも評価材料であり、利益確定売りが一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■住まいのワンストップサービスを展開する不動産テック企業

FCチェーンネットワーク構築による不動産情報のオープン化と、時代に即した不動産ソリューションサービスを提供する不動産サービスメーカーとして、住まいのワンストップサービスを展開している。さらにFinTechを活用して「不動産×金融」サービスの進化による高収益化を目指す不動産テック(不動産×IT)企業である。

不動産流通事業で創業し、リフォーム事業、不動産売買事業、不動産売買仲介「HOUSEDO」FC加盟店に各種サービスを提供するフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、不動産担保ローン事業、金融機関と提携したリバースモーゲージ保証事業へと展開し、業容を拡大している。そして22年1月1日付で事業持株会社に移行(ハウス・リースバック事業は移行後も同社が運営)し、商号をAnd Doホールディングスに変更した。

FCチェーンネットワークや高齢化社会に対応した不動産ソリューションなど顧客接点・地域密着ネットワークを構築し、売買仲介を起点として住まい関連サービスにつなげる事業シナジーを強みとしている。さらに不動産事業を通じて世の中を安心、便利なサービスを提供する「不動産コンビニ」構想も掲げている。

23年4月にはハウスドゥ住宅販売が経済産業省の「IT導入補助金2023」でIT導入支援業者として採択(6度目の採択)され、不動産売買仲介WEBシステム「DO NETWORK」および不動産賃貸仲介WEBシステム「RENT Doシステム」が補助金対象ツールとして登録された。

■ストック収益型事業が収益柱

ロイヤリティー収入、賃貸収入、金利収入など、ストック収益を積み上げるフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融事業、および不動産売買事業を成長強化事業と位置付けて収益の柱としている。ハウス・リースバック事業では取得した収益不動産物件の売却も進める。

22年6月期のセグメント別営業利益構成比(全社費用等調整前)は、成長強化事業が86%(フランチャイズ事業が34%、ハウス・リースバック事業が25%、金融事業が2%、不動産売買事業が25%)、不動産流通事業が11%、リフォーム事業が3%、その他が▲0%だった。22年6月期第3四半期からセグメント区分を変更し、小山建設グループの事業を不動産売買事業、不動産流通事業、ハウス・リースバック事業に振り分けた。不動産売買事業は大型物件などによって構成比が変動しやすい。

フランチャイズ事業の加盟契約数は22年6月期末時点で21年6月期末比19店舗減少して683店舗となった。20年9月に全国47都道府県すべてに出店契約を達成し、21年1月からはブランドロゴと店舗デザインを一新している。また賃貸不動産仲介事業の新ブランド「レントドゥ!」も展開している。中期的には25年に国内1000店舗、アジア5万店舗を目標としている。

なお23年3月には、持分法適用会社(現地合弁会社)であるタイのH-DO社がタイのAAA社とFC契約を締結し、タイでのFC1号店をオープンした。

ハウス・リースバック事業では、22年6月期期末の保有物件数が21年6月期末比306件増加して645件、保有物件総額(簿価ベース)が43億20百万円増加して89億14百万円となった。契約件数は187件増加の1090件、物件取得数は209件増加の1010件だった。

金融事業では、22年6月期のリバースモーゲージ保証残高が34億62百万円増加の88億05百万円、保証件数が267件増加の829件、不動産担保融資残高が49億22百万円減少の48億22百万円となった。リバースモーゲージの保証件数は23年1月末時点で累計1000件を突破、保証残高は23年4月末時点で120億円を突破した。リバースモーゲージ保証事業は地域金融機関等との提携を推進している。23年5月には、りそなグループ3行と提携した。さらに、リバースモーゲージのさらなる普及拡大に向けて銀行代理業許可を取得している。楽天銀行の銀行代理業者として「楽天銀行リバースモーゲージ」の申込媒介を行う。なお不動産担保融資は戦略的に縮小させている。

■M&A・アライアンスも活用

M&A・アライアンスでは、19年8月に埼玉県草加市を中心に不動産売買・仲介を展開する小山建設グループを子会社化、20年7月に子会社の草加松原住建の商号をハウスドゥ・ジャパンに変更した。21年7月には加盟店を対象とする業務支援サービスの利用に関して、不動産サービス比較サイト「リビングマッチ」運営のリビン・テクノロジーズ<4445>と業務提携した。21年9月には識学<7049>と業務提携した。識学の「成長する組織つくり」を加盟店が導入することで加盟店の組織力および業績拡大につなげる。

22年5月には、ドキュサイン・ジャパンと不動産売買取引における電子契約システムで業務提携した。ハウスドゥオリジナル基幹システム「DO NETWORK」と、ドキュサイン・ジャパンの電子署名サービス「DocuSign eSignature」との連携で電子契約が可能になる。

22年12月には、総合生活トラブル解決サービスを展開するジャパンベストレスキューシステム(JBR)<2453>と提携した。ハウスドゥで契約した顧客に対して会員制生活トラブル解決サービス「ハウスドゥ持ち家の長期サポート」を開始する。

23年1月にはハウスドゥ住宅販売が、手付金が不要となる住宅購入支援サービス「ゼロテ」を開発・提供するGOGENと業務提携した。住宅購入顧客に対して現金不要の新しい住宅取得の仕組みを提供する。23年3月にはハウスドゥ住宅販売が、完全会員制の家探しサービスHousii(ハウシー)を展開するSpeeeと業務提携した。加盟店向け支援サービスの一層の充実を図る。

■中期経営計画(23年6月期~25年6月期)

中期経営計画(23年6月期~25年6月期)では目標数値に、25年6月期の売上高518億19百万円、営業利益41億79百万円、経常利益40億円、親会社株主帰属当期純利益26億40百万円、経常利益率7.7%を掲げている。配当性向は30%以上を基本水準とする。

事業セグメント別の25年6月期の計画は、フランチャイズ事業の売上高41.8億円で営業利益29.0億円、ハウス・リースバック事業の売上高214.2億円で営業利益28.3億円、金融事業の売上高14.1億円で営業利益6.0億円、不動産売買事業の売上高207.6億円で営業利益18.0億円、不動産流通事業の売上高20.4億円で営業利益6.4億円、リフォーム事業の売上高27.0億円で営業利益2.3億円としている。

成長強化事業の主要指標の計画(25年6月期)は、フランチャイズ累計加盟店舗数が865店舗、ハウス・リースバック事業の年間仕入契約数が1440件、リバースモーゲージ保証残高が506億円、リバースモーゲージ提携金融機関が100行、不動産売買のたな卸資産残高が140億円としている。

成長戦略として、成長強化事業(フランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融・リバースモーゲージ事業、不動産売買事業)のさらなる拡大、不動産×金融サービスの深化、高収益体質化の促進を推進する。なお20年8月にはDX推進本部を設立している。

23年6月には、Sanu社が提供する新たな法人向け会員制宿泊サービス「SANU 2nd Home(サヌセカンドホーム)の導入を発表した。福利厚生の一環として社員に対し、都市生活だけでは得られない創造的なインスピレーションとの出会いを提供する。

なお22年9月に、22年6月30日時点においてプライム市場の上場維持基準のうち流通株式時価総額が基準を満たしていない状態となったため、上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示している。中期経営計画の達成、IR・PR活動の充実、コーポレート・ガバナンスの強化など、各種取組を推進して25年6月期までに基準値の充足を目指すとしている。

■23年6月期大幅増収増益予想、24年6月期も収益拡大基調

23年6月期の連結業績予想は、売上高が22年6月期比12.5%増の465億82百万円、営業利益が20.2%増の34億52百万円、経常利益が12.0%増の33億円、親会社株主帰属当期純利益が11.4%増の21億78百万円としている。配当予想は4円増配の40円(期末一括)としている。連続増配予想である。

セグメント別営業利益(調整前)計画はフランチャイズ事業が10.3%増の25億38百万円、ハウス・リースバック事業が38.9%増の23億87百万円、金融事業が34.2%増の1億85百万円、不動産売買事業が5.4%減の16億円、不動産流通事業が14.7%減の6億23百万円、リフォーム事業が17.5増の2億30百万円、調整額が▲41億11百万円としている。

第3四半期累計は、売上高が前年同期比23.2%増の359億39百万円、営業利益が28.4%増の24億43百万円、経常利益が35.4%増の24億72百万円、親会社株主帰属四半期純利益が33.9%増の15億95百万円だった。大幅増収増益で、第3四半期累計として過去最高だった。ハウス・リースバック事業や不動産売買事業が牽引した。

フランチャイズ事業は、売上高(調整前)が7.3%減の24億07百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が13.0%減の15億39百万円だった。累計加盟店数(レントドゥ含む)は689店舗で前年同期比2店舗減少したが、さらなる新規加盟獲得を加速させる方針としている。

ハウス・リースバック事業は、売上高が75.5%増の152億01百万円、利益が143.1%増の22億11百万円だった。充実した在庫を活かしてHLBファンドへの譲渡を実施した。契約件数は135件増加の922件、物件取得数は96件増加の853件、期末保有物件数は60件増加の745件、保有物件総額(過去分除く簿価ベース)は11億57百万円増加の108億65百万円となった。

金融事業は、売上高が32.3%減の4億12百万円で、利益が19.5%減の1億27百万円だった。不動産担保融資を戦略的に縮小(融資実行件数が19件減少の72件、融資残高が23億42百万円減少の28億78百万円)しているため減収減益だが、リバースモーゲージ保証は伸長(新規保証件数が47件増加の282件、保証残高が39億85百万円増加の119億60百万円)している。

不動産売買事業は、売上高が7.6%増の152億38百万円、利益が16.2%増の15億38百万円だった。取引件数は30件増加の445件だった。積極的な仕入により、来期に向けて在庫も十分に確保している。

不動産流通(仲介)事業は、仲介件数の減少で売上高が22.2%減の13億78百万円、利益が19.6%減の4億20百万円だった。仲介件数は622件減少して1573件だった。減収減益だが、店舗統合などによって利益率が向上した。

リフォーム事業は、売上高が1.8%減の18億57百万円、利益が35.9%増の1億53百万円だった。不動産流通(仲介)事業の店舗統合の影響で中古+リフォームの受注が減少したが、販管費抑制効果などで利益率が向上した。リフォーム契約件数は166件減少の1232件、完工件数は18件減少の1286件だった。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高96億12百万円、営業利益3億43百万円、経常利益2億90百万円、第2四半期は売上高158億24百万円、営業利益14億06百万円、経常利益15億63百万円、第3四半期は売上高105億03百万円、営業利益6億94百万円、経常利益6億19百万円だった。四半期業績はハウス・リースバック事業におけるファンドへの譲渡、不動産売買事業における大型物件によって変動する傾向がある。

通期予想は据え置いている。第3四半期累計の進捗率は売上高77.2%、営業利益70.8%、経常利益74.9%、親会社株主帰属当期純利益73.2%と概ね順調だった。なお6月29日に、ハウス・リースバックで取得した個人住宅など不動産の信託受益権について、HLB4号ファンドへの譲渡が完了(譲渡価格48億82百万円、帳簿価格39億02百万円、譲渡益9億80百万円)したと発表している。さらに24年6月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を再開

株主優待制度については22年6月期末対象をもって廃止したが、5月8日に株主優待制度の再開を発表した。毎年6月末日現在の5単元(500株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じて、株主限定特設ウェブサイト「And Doホールディングス・プレミアム優待倶楽部」で商品に交換できるポイントを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は利益確定売り一巡

株価は6月末の権利落ちも影響して年初来高値圏から急反落の形となったが、低PERや高配当利回りも評価材料であり、利益確定売りが一巡して戻りを試す展開を期待したい。7月6日の終値は1113円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS111円33銭で算出)は約10倍、前期推定配当利回り(会社予想の40円で算出)は約3.6%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS706円07銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は約218億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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