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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インテリジェントウェイブは地合い悪化の売り一巡して切り返し、16年6月期も増収増益基調
- 2015/8/28 08:27
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテリジェントウェイブ<4847>(JQS)は金融分野や情報セキュリティ分野を中心にシステムソリューション事業を展開している。株価は地合い悪化の影響で25日に389円まで急落したが、27日には494円まで戻した。地合い悪化の売りが一巡したが依然として売られ過ぎ感の強い水準だ。16年6月期の増収増益基調を評価して切り返す展開だろう。サイバーセキュリティ関連も注目点だ。
■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力
大日本印刷<7912>の連結子会社で、ソフトウェア開発中心にソリューションを提供する金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野中心にパッケージソフトウェアや保守サービスを提供するプロダクトソリューション事業を展開している。クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスが収益柱だ。
金融システムソリューション事業では、クレジットカード決済のフロント業務関連システムから、バックオフィス業務関連など基幹業務システム関連への事業領域拡大を目指している。またプロダクトソリューション事業では、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。
15年6月には情報漏えい対策システムCWAT(シーワット)の最新版となる「CWAT Version5.5」の出荷を開始した。CWATはPCなど情報端末のファイル操作、メール送信、外部メディアへの書き込み、接続などを監視し、企業の情報を守る情報漏えい対策システムである。最新バージョンではオプション機能としてWindows Server監視機能を追加した。
新規事業分野では大日本印刷との連携を強化して、自社開発コミュニケーションツール「Face(フェイス)コンシェル」の販売を強化している。口語解析技術を駆使したコンシェルジュ(画面上の人物画)が簡単な質問に自動応答するシステムだ。
15年3月には、損害保険ジャパン日本興亜のウェブサイトでバーチャルナビゲーションシステムとして採用された。また15年7月には、みずほ銀行の法人向けインターネットバンキング「みずほビジネスWEB」に、バーチャルナビゲーションシステムのキャラクター「Mi-na(ミーナ)」として導入された。
■アライアンス戦略も積極化
アライアンス戦略では14年2月、ジーフィー(GIFI)と個人投資家向け次世代オンライントレードシステム分野で業務提携した。
15年2月にはCyberArk社(イスラエル)と国内販売代理店契約を締結した。世界65ヶ国以上、1750社以上で導入実績がある同社の特権アカウントセキュイリティソリューションを販売する。
15年2月にはDevexperts Japan社と業務提携した。Devexperts社はトレーディングソフトウェア開発に優れたノウハウを持つ会社である。戦略的業務提携によって、これまで実績のある高速取引、リアルタイム市況情報分析のソリューションから、デリバティブシステムを中心とした金融業務執行系プラットフォーム開発へ業務範囲を拡大し、金融業務の幅広いニーズに対応したソリューションを提供するとしている。
15年5月には、大日本印刷が米パロアルトネットワークスと販売代理店契約を締結したことに伴って、同社の標的型攻撃対策ソフトウェア「アドバンストエンドポイント プロテクションTraps」の販売を開始した。17年度までの3年間累計で約20億円の売上を目指すとしている。
なお15年7月には、クレジットカード会員データを安全に取り扱うためのセキュリティ基準「PCI DSS」を推進する国際カードブランドの業界団体PCI SSC主催「PCI SSC Community in APAC」(10月14日~15日、ウェスティンホテル東京)に、ゼネラルスポンサーとして参加すると発表した。
■16年6月期も増収増益基調
8月5日に発表した前期(15年6月期)連結業績(1月28日に純利益を増額、7月29日に売上高を減額、利益を増額)は売上高が前々期比6.1%減の61億60百万円、営業利益が同3.3倍の4億84百万円、経常利益が同2.7倍の4億90百万円、純利益が同5.4倍の4億71百万円だった。
配当予想は前々期と同額の年間5円(期末一括)で配当性向は28.0%となる。またROEは同8.2ポイント上昇して10.1%、自己資本比率は同4.3ポイント低下して74.6%となった。
金融システムソリューション事業でソフトウェア開発が計画を下回ったため減収だったが、不採算プロジェクトが一巡し、プロジェクト管理を強化して外注費が大幅に減少したこと加えて、セキュリティ関連のパッケージソフトが大幅増収だったことも寄与して大幅増益だった。
売上総利益率は28.9%で同8.4ポイント上昇、販管費比率は21.0%で同2.8ポイント上昇した。純利益については、特別損失に退職給付費用2億08百万円を計上したが、一方で特別利益に投資有価証券売却益2億96百万円を計上したことも寄与した。
セグメント別に見ると、金融システムソリューションは売上高が同8.2%減の55億33百万円、営業利益が同59.2%増の7億61百万円、プロダクトソリューションは売上高が同17.8%増の6億27百万円、営業利益が2億76百万円の赤字(前々期は3億32百万円の赤字)だった。
なお15年6月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)14億26百万円、第2四半期(10月~12月)14億18百万円、第3四半期(1月~3月)14億57百万円、第4四半期(4月~6月)18億58百万円、営業利益は第1四半期94百万円、第2四半期89百万円、第3四半期99百万円、第4四半期2億01百万円だった。
今期(16年6月期)の連結業績予想(8月5日公表)は、売上高が前期比5.5%増の65億円、営業利益が同11.6%増の5億40百万円、経常利益が同10.2%増の5億40百万円、純利益が同25.7%増の3億50百万円としている。配当予想は前期と同額の年間5円(期末一括)で予想配当性向は37.6%となる。
セグメント別に見ると、金融システムソリューションは売上高が同3.0%増の57億円、営業利益が同29.0%減の5億40百万円、プロダクトソリューションは売上高が同27.6%増の8億円、営業利益が0百万円(前期は2億76百万円の赤字)の計画としている。
金融システムソリューションでは、ハードウェアと自社製パッケージを減収見込みとして、ソフトウェア開発は増収だが利益率の低下を見込んでいる。ただし保守的な計画のようだ。プロダクトソリューションは、サイバーセキュリティ関連の他社製パッケージソフトの大幅増収と、経費削減効果で営業損益が大幅に改善する見込みだ。
■カード・金融業界のシステム投資は高水準
クレジットカード・金融業界では、システム・ハードウェア更新投資、クレジットカード会社の資本関係変化に伴うシステム開発投資、不正検知を含むFEPシステム投資、ブランドプリペイドカードやモバイル端末決済など決済サービス多様化に対応したシステム投資、訪日外国人旅行客の増加に伴うコンビニエンスストアATMや海外カードに対応した新規投資などで、設備投資が高水準に推移する見通しだ。
高水準の投資需要を背景としてクレジットカード・金融関連の開発案件受注増加が期待され、さらにサイバー攻撃対策や情報漏えい対策などセキュリティ関連の需要増加も期待される。16年6月期も増収増益基調だろう。
■株価は地合い悪化の売り一巡して切り返し
株価の動きを見ると、7月29日の年初来高値690円から利益確定売りで反落し、さらに地合い悪化の影響で8月25日に389円まで急落する場面があった。ただし27日には494円まで戻す場面があり、地合い悪化の売りが一巡して切り返しの動きを強めている。
8月27日の終値471円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円29銭で算出)は35~36倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS183円55銭で算出)は2.6倍近辺である。
8月25日の安値から切り返したが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が18%程度で、依然として売られ過ぎ感の強い水準だ。また週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、26週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。16年6月期の増収増益基調を評価して切り返す展開だろう。サイバーセキュリティ関連も注目点だ。