- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- ピックルスホールディングスは上値試す、24年2月期1Q高進捗で通期上振れの可能性
ピックルスホールディングスは上値試す、24年2月期1Q高進捗で通期上振れの可能性
- 2023/7/10 09:52
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ピックルスホールディングス<2935>(東証プライム)は漬物・キムチ製品の最大手で、独自の乳酸菌Pne-12を使用した「ご飯がススムキムチ」シリーズや惣菜を主力としている。成長戦略として製品開発の強化、販売エリア・販売先の拡大などを推進するとともに、野菜・発酵・健康の総合メーカーを目指してEC・外食・小売・農業領域への展開も推進している。24年2月期第1四半期は持株会社設立前のピックルスコーポレーションの前年同期との比較で増収増益だった。コンビニエンスストア向けの好調などでコスト増加を吸収した。そして第1四半期の高進捗率を勘案すれば通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は第1四半期業績を好感して高値を更新する場面があった。その後は利益確定売りが優勢になって反落したが、1倍割れのPBRも評価材料であり、目先的な売りが一巡して上値を試す展開を期待したい。
■漬物製品の最大手で「ご飯がススムキムチ」シリーズや惣菜が主力
ピックルスコーポレーションが株式移転で設立した持株会社ピックルスホールディングスが22年9月1日付で東証プライム市場に上場した。漬物・キムチ製品の最大手である。独自の乳酸菌Pne-12(ピーネ12)(15年10月特許取得済)を使用した「ご飯がススムキムチ」シリーズや惣菜などを主力としている。さらに野菜・発酵・健康の総合メーカーを目指してEC・外食・小売・農業領域への展開も推進している。
23年2月期の品目別売上構成比は製品66.6%(浅漬・キムチ40.1%、惣菜25.4%、ふる漬1.1%)および商品(漬物、調味料、その他)33.4%、販路別売上構成比は量販店・問屋等76.3%、コンビニ15.3%、外食・その他8.4%だった。セブン&アイ・ホールディングス<3382>など大手量販店・コンビニが主要取引先である。収益面の特性としては、個人消費動向のほか、天候不順などによる野菜(特に胡瓜と白菜)価格の影響を受ける傾向がある。
■成長戦略として新規事業も推進
中期経営目標値としては、26年2月期売上高430億円(浅漬・キムチ170億58百万円、惣菜109億41百万円、ふる漬4億88百万円、商品145億12百万円)、売上総利益89億50百万円、売上総利益率20.8%、販管費71億50百万円、販管費比率16.6%、営業利益18億円、経常利益19億30百万円、親会社株主帰属当期純利益12億30百万円を掲げている。設備投資は24年2月期からの3年間で合計89億円を計画している。25年2月期には関東でキムチ専用工場、26年2月期には関西で工場新築を検討している。
成長戦略として、製品開発の強化(キムチ製品、惣菜、ドライ商品、調味料)、販売エリアの拡大(特に西日本エリアでの販売拡大)、販売先の拡大(ドラッグストア、量販店、配食事業などの開拓)、新規事業(BtoC事業、農業事業など)を推進している。
製品開発では、主力の「ご飯がススムキムチ」シリーズの新製品、成長分野である惣菜製品の開発に加えて、冷凍食品関連商品(冷凍ご飯がススムキムチ鍋など)、サツマイモ関連商品(あいすやきいもなど)、長期保存が可能なLL(ロングライフ)ガス置換(容器内を一度真空にして不活性ガスに置き換える方法)惣菜などの開発も推進する。
販売エリアの拡大では全国ネットワークを活かした営業戦略を推進し、特に西日本エリアでの販売拡大に注力する。販売先の拡大では既存分野以外の売場への商品展開を推進する。
新規事業では、BtoC領域の外食・小売事業に参入し、20年10月に運営子会社OHが、埼玉県飯能市に複合型観光施設として、発酵のテーマパーク「OH!!!~発酵、健康、食の魔法!!!~」を開業した。日本の伝統的な食文化「発酵」を発信していく。EC販売については22年9月に「OH!!!」のサイトと統合し、施設紹介とEC機能を併せ持つ複合サイト「OH!!!オンラインストア」にリニューアルした。統合により、ブランドを横断した購入が可能になる。
22年3月には子会社ピックルスファームを設立し、埼玉県内で農業事業を開始した。所沢工場向けの小松菜や「OH!!!」向けのさつまいもを生産する。野菜の生産に関わることで安全・安心な原料野菜を安定的に調達するとともに、農業を通じた雇用創出や地域活性化にも貢献することを目指す。
SDGsへの取り組みとしては、太陽光発電の導入、LED電灯の100%導入、子ども食堂への支援、オリジナルエコマーク「ピックルスのECO」の導入などに加えて、野菜残さを餌としたウニの養殖研究にも取り組んでいる。また23年2月には健康経営宣言を策定し、健康経営を推進している。
■上場維持基準の適合に向けた計画書
なお、23年2月末日時点で、プライム市場の上場維持基準のうち流通株式時価総額が基準に適合していない状況になったため、23年5月30日付で上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示した。
26年2月末を計画期間として、中期経営計画で掲げた各種戦略の着実な実行によって業績の向上を図るほか、IR活動の充実、サステナビリティ活動の充実、株主還元の強化、流通株主数の増加などに取り組み、企業価値の向上(時価総額の増大)に努めるとしている。
■24年2月期増収増益予想、1Q高進捗で通期上振れの可能性
24年2月期連結業績予想は、売上高が23年2月期比2.8%増の422億円、営業利益が5.3%増の16億20百万円、経常利益が6.3%増の17億55百万円、親会社株主帰属当期純利益が1.0%増の11億50百万円としている。配当予想は23年2月期と同額の22円(期末一括)としている。23年2月期の22円には持株会社移行記念配当2円が含まれているため、普通配当ベースでは2円増配の形となる。予想配当性向は24.1%である。
第1四半期(22年9月1日に単独株式移転で設立した純粋持株会社が新規上場したため前年同期実績はなし)は、売上高が114億85百万円、営業利益が7億51百万円、経常利益が7億89百万円、親会社株主帰属四半期純利益が5億26百万円だった。
ピックルスコーポレーションの前年同期実績(売上高105億17百万円、営業利益6億72百万円、経常利益6億99百万円、親会社株主帰属四半期純利益4億76百万円)との比較で見ると、売上高は9.2%増収、営業利益は11.7%増益、経常利益は12.8%増益、親会社株主帰属四半期純利益は10.4%増益だった。
売上面では、コンビニエンスストア向けの好調に加えて、巣ごもり需要の反動減の影響が落ち着いたことも寄与した。コスト面では調味料や包装材などの原材料価格、光熱費や物流費の高騰の影響を受けたものの、増収効果で吸収して2桁増益だった。
通期の連結業績予想は据え置いて、拡販、製品価格見直し、生産性向上などを推進して増収増益予想としている。品目別の売上高は製品が2.0%増の279億05百万円(浅漬・キムチが1.6%増の167億46百万円、惣菜が2.6%増の106億79百万円、ふる漬が2.8%増の4億79百万円)で商品(漬物、調味料、その他)が4.4%増の142億94百万円、販路別の売上高は量販店・問屋等が2.8%増の321億88百万円、コンビニが3.0%増の64億95百万円、外食・その他が2.2%増の35億15百万円の計画としている。
営業利益の要因別増減分析(予想)は、商品原価改善による売上総利益の増加5億37百万円、製品増収による売上総利益増加1億21百万円、商品増収による売上総利益増加1億13百万円、販管費減少10百万円、製品原価増による売上総利益減少▲7億01百万円としている。
収益力向上に向けた取り組みとして、野菜調達の地域ごとの調達、不採算アイテムの見直しおよびアイテムの集約、カップから袋への容器見直し、生産の機械化・省人化、グループ内物流や事務処理の効率化、消費期限または賞味期限の延長に向けた製造技術の研究などを推進する。さらにESGやSDGsへの取り組みも強化し、事業を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するとしている。
第1四半期の進捗率は、売上高が27.2%、営業利益が46.4%、経常利益が45.0%、親会社株主帰属当期純利益が45.7%だった。第1四半期の高進捗率を勘案すれば通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益回復基調だろう。
■株主優待制度は毎年2月末の株主が対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年2月28日時点の100株(1単元)以上保有株主を対象として商品詰め合わせセットなどを贈呈する。21年9月1日付株式2分割後も100株(1単元)以上を対象として実施しているため、実質的に株主優待制度の大幅拡充となっている。
■株価は上値試す
株価は第1四半期業績を好感して高値を更新する場面があった。その後は利益確定売りが優勢になって反落したが、1倍割れのPBRも評価材料であり、目先的な売りが一巡して上値を試す展開を期待したい。7月7日の終値は1284円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS91円40銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の22円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1362円11銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約165億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)