ファーストコーポレーションは反発の動き、24年5月期収益拡大基調

ファーストコーポレーション<1430>(東証プライム)は造注方式を特徴として分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。年商500億円企業の実現に向けて中核事業強化の継続、再開発事業への注力、事業領域拡大による新たな価値創出、人材の確保・育成および働き方改革を推進している。23年5月期(連結決算に移行)は前期非連結業績との比較で小幅増益予想としている。受注残が豊富であり、積極的な事業展開で24年5月期も収益拡大基調だろう。株価は年初来高値圏から5月末の権利落ちも影響して急反落の形となったが、売り一巡して反発の動きを強めている。高配当利回りも評価材料であり、出直りを期待したい。なお7月15日に23年5月期決算発表を予定している。

■造注方式が特徴のゼネコン

東京圏(1都3県)中心に分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。

造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。大手を中心とする優良なマンション・デベロッパーである。

品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。

20年10月には、東京理科大学の認定ベンチャーであるサイエンス構造と、新たな免震集合住宅の工法として「ジーナス(ZENAS)工法」を開発し、建築構造物の「新構造システム」に関する特許および実用新案を共同出願した。

■年商500億円企業目指す

22年7月に公表した中期経営計画「Innovation2022」では目標数値に、25年5月期の売上高310億円(完成工事高179億53百万円、不動産売上105億円、共同事業収入20億円、その他売上5億47百万円)、売上総利益38億40百万円、完成工事総利益率13%以上(22年5月期実績10.7%)、営業利益24億80百万円、経常利益24億円、当期純利益15億95百万円、そして受注高250億円(うち造注70億円)を掲げている。完成工事総利益率については、安定した事業用地確保による造注比率向上、生産性向上による利益率の底上げを推進する。

ROE(自己資本純利益率)は20%以上、自己資本比率は50%以上、配当性向は30%以上を目指す。内部留保の蓄積による自己資本の充実、手持不動産の売却および有利子の圧縮による財務体質の向上を図る方針だ。なお収益は不動産売上(マンション用地販売)によって変動する可能性がある。

将来像である年商500億円企業の実現に向けて業容の拡大と利益水準の向上に継続的に取り組む。重点施策としては中核事業(造注方式、建築事業)強化の継続、再開発事業への注力、事業領域拡大(大規模修繕や収益不動産等の周辺事業、M&A、新たな建築技術の開発など)による新たな価値創出、人材の確保・育成および働き方改革の推進に取り組む。

再開発事業への注力では、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に共同施工者として参画し、20年11月に施設建築物新築工事を着工(JV受注、24年完成予定)した。前橋市内初の超高層免震タワーマンションとなる。21年4月に名称を「Brillia Tower」に決定し、販売活動を開始している。

21年9月には新ジャンルの分譲マンション「CANVAS」ブランドを立ち上げた。暮らす方々の身体的・精神的・社会的な健康状態がバランス良く調和の取れた状態であることを意味する概念「ウェルビーイング」をブランドコンセプトとして、ファーストエボリューション(20年11月設立)が新ブランドコンセプトを実現すべく竣工後の管理・販売代理・入居者サービス提供を行う。第一弾として中央住宅および中央日本土地建物との共同事業「ウェルビーイングシティ構想」を始動し、分譲マンション「CANVAS南大沢」(東京都八王子市)が22年11月に竣工した。

また22年11月には(仮称)千葉駅東口西銀座B地区優良建築物等整備事業新築工事を受注した。工期は22年11月着工で26年3月完成予定としている。

■プライム市場の上場維持基準適合に向けた計画書

22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示(21年12月21日付)している。流通株式時価総額がプライム市場上場維持基準を充たしていないため、中期経営計画で掲げた各種取り組みを推進し、業績目標達成、株主還元拡充、コーポレートガバナンス充実などによって継続的に企業価値の向上(時価総額の増大)を図る。さらに流通株式比率の向上に向けた施策にも取り組み、25年5月期末までにプライム市場上場維持基準への適合を目指すとしている。

22年8月には22年5月期末時点における計画の進捗状況を開示した。企業価値の向上と株式市場で適正な評価を得ることが課題であることを認識し、引き続き計画に基づく各種取り組みを推進するとしている。また、コーポレートガバナンス・コードに対する取り組み方針・状況も合わせて公表している。

■23年5月期(連結決算に移行)小幅増益予想、24年5月期収益拡大基調

23年5月期(ファーストエボリューションを新規連結して連結決算に移行)は売上高が252億円、営業利益が19億20百万円、経常利益が19億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が13億20百万円としている。配当予想は22年5月期比3円増配の35円(期末一括)としている。

22年5月期の非連結業績(売上高301億78百万円、営業利益19億19百万円、経常利益18億91百万円、当期純利益12億69百万円)との単純比較で、売上高は16.5%減収だが、営業利益は横ばい、経常利益は2.1%増益、親会社株主帰属当期純利益は4.0%増益で小幅増益予想となる。従来の非連結業績予想(売上高が22年5月期比7.2%減の280億円、営業利益が6.5%増の20億44百万円、経常利益が5.8%増の20億円、当期純利益が8.0%増の13億70百万円)に対しては、不動産売上を減額し、ファーストエボリューションの業績を織り込んだ。

第3四半期累計は、売上高が前年同期比18.7%減の178億23百万円、営業利益が13.1%増の13億38百万円、経常利益が13.8%増の13億21百万円、そして四半期純利益が15.3%増の9億13百万円だった。不動産売上高が前年の反動で減少したが、完成工事高の順調な推移が牽引し、全体として2桁増益で着地した。全体の売上総利益率は13.0%で3.4ポイント上昇した。

完成工事高は23.0%増の143億69百万円、完成工事総利益は21.7%増の15億53百万円、不動産売上高は81.8%減の17億81百万円、不動産売上総利益は74.1%減の2億09百万円、共同事業収入は4.3倍の10億25百万円、共同事業収入総利益は23.8倍の3億58百万円、その他の売上高は3.0倍の6億47百万円、その他の売上高総利益は45.8倍の1億93百万円だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が47億30百万円で営業利益が2億57百万円、第2四半期は売上高が54億47百万円で営業利益が3億95百万円、第3四半期は売上高が76億46百万円で営業利益が6億86百万円だった。

受注高は23年5月31日時点で8件合計351億85百万円となり、通期計画の7件合計310億円(うち造注方式90億円)を超過達成している。建築資材価格上昇に伴い、受注金額も上昇傾向としている。7月5日には販売用不動産の取得(引渡は7月28日予定)を発表している。積極的な事業展開で24年5月期も収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年11月末の株主対象

株主優待制度は、毎年11月末現在の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は反発の動き

株価は5月末の権利落ちも影響して年初来高値圏から急反落の形となったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。高配当利回りも評価材料であり、出直りを期待したい。7月7日の終値は793円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS114円91銭で算出)は約7倍、前期推定配当利回り(会社予想の35円で算出)は約4.4%、前々期実績PBR(前々期実績の非連結BPS585円00銭で算出)は約1.4倍、そして時価総額は約106億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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