エイトレッドは反発の動き、24年3月期収益拡大基調

エイトレッド<3969>(東証スタンダード)はワークフローシステムの開発・販売およびクラウドサービスを展開し、大手・中堅企業向けのパッケージ型AgileWorksおよび小規模企業向けのクラウド型X-point Cloudを2本柱としている。7月10日にはAgileWorksの13年ぶりとなるメジャーバージョンアップ版をリリース(8月4日より出荷開始)した。社内文書電子化のリーディングカンパニーで、シリーズ累計導入数は4000社以上、クラウド型ワークフローシステム国内市場シェアは1位となっている。24年3月期は2桁増益で連続増配予想としている。企業におけるDX化進展の流れでワークフローの需要が拡大し、クラウドサービスの成長が牽引する見込みだ。事業環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価はやや小動きだが下値固め完了して反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。

■ワークフローシステムの開発・販売

ソフトクリエイトホールディングス<3371>の連結子会社で、ワークフローシステム(ソフトウェア)の開発・販売およびクラウドサービスを展開している。

ワークフローシステムとは、企業における稟議書、経費精算申請書、各種届け出書など、稟議・申請から承認・決裁に至る事務工程(ワークフロー)を電子化(システム化)するソフトウェア製品である。ワークフローシステムを導入することにより、業務プロセスの効率化(作業工数削減や時間短縮)、ペーパーレス化によるコスト削減(用紙・印刷・郵送・保管に係るコストの削減)、内部統制の強化(意思決定プロセスや承認日時のデータ化・可視化)などのメリットが得られる。

主力製品は、大手・中堅企業向けのパッケージ型AgileWorks、および小規模企業向けのクラウド型X-point Cloudである。22年8月にはX-point Cloudの最新版「X-point Cloud V3.2」の提供を開始した。22年12月には、セールスフォース社の顧客管理プラットフォームSalesforceとの連携サービスX-point Cloud for Salesforceの提供を開始した。さらに7月10日には、AgileWorksの13年ぶりとなるメジャーバージョンアップ版(R3.0)をリリースした。8月4日より出荷開始する。

クラウド型X-point Cloudへの移行により、以前の主力製品であった小・中規模企業向けのパッケージ型X-pointは22年3月に新規ライセンス販売を終了した。さらに25年3月には通常サポート終了、27年3月には延長サポート・追加ライセンス販売終了予定である。X-pointの新規ライセンス販売終了に伴って、AgileWorksへのアップセル、またはX-point Cloudへの移行を促進している。

23年3月期の製品別売上高は、クラウドサービスX-point Cloudが22年3月期比17.8%増の8億71百万円、大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorksが1.7%減の9億69百万円、パッケージ型X-pointが15.9%減の3億26百万円だった。AgileWorksは半導体不足の影響を受けた。X-pointは、クラウドサービスへの移行に伴って27年3月に製品サポート終了予定のため、22年3月に新規ライセンス販売を終了している。

ストック売上高は第1四半期が4億16百万円、第2四半期が4億26百万円、第3四半期が4億44百万円、第4四半期が4億56百万円、ストック売上比率は第1四半期が78.3%、第2四半期が81.1%、第3四半期が78.3%、第4四半期が83.8%だった。

■社内文書電子化のリーディングカンパニー

社内文書(申請書・稟議書)電子化のリーディングカンパニーで、22年10月にはワークフローシステムのシリーズ累計導入社数が4000社を突破した。また複数の市場調査レポートでワークフロー市場における出荷金額・売上金額実績シェア1位を獲得している。

アイ・ティ・アールの「ITR Market View:RPA/OCR/BPM市場2021」では、AgileWorksの伸長も寄与してワークフロー市場における20年度ベンダー別売上金額シェア1位、X-point CloudがSaaS型ワークフロー市場ベンダー別売上金額で16年度から6年連続シェア1位を獲得した。

富士キメラ総研の「ソフトウェアビジネス新市場2021年版」においては、X-point CloudがSaaSワークフロー市場占有率推移(金額)で2015年度から6年連続シェア1位(2020年度実績シェア21.7%)を獲得した。

デロイト トーマツ ミック経済研究所の「コラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望2022年度版」では、X-point CloudがSaaS・ASP型ワークフロー市場シェア(出荷金額)で11年連続シェアNO.1(21年度実績は金額シェア30.8%)となった。また、SMB(100人未満)向けワークフロー市場シェアは11年連続シェアNO.1(同51.3%)で、ワークフロー市場全体のベンダー別売上金額シェアは11年連続2位となった。特に小・中規模企業向けを強みとしている。

MS―Japanが運営するビジネスメディア「Manegy」が実施した「Manegy Award 2021」では、X-point CloudとAgileWorksが総務部門で優秀賞を受賞した。

アイティクラウド「ITreview Grid Award 2023 Winter」では、AgileWorksおよびX-point Cloudが、ワークフロー部門において最高位の「LEADER」を4期連続で受賞した。

23年3月には、テクノ・システム・リサーチが調査した2022年SaaSワークフロー市場データにおいて、X-point Cloudが、従業員数別メーカーシェア100人未満カテゴリーおよび100人以上1000人未満カテゴリー、売上高別メーカーシェア100億円未満カテゴリーおよび100億円以上1000億円未満カテゴリーで、それぞれシェアNO.1を獲得した。

23年6月には、スマートキャンプが今もっとも評価されているSaaSを表彰するBOXIL SaaS AWARD Summer 2023 ワークフローシステム部門において、X-point CloudがGood Serviceを受賞した。

■開発特化型企業

事業戦略の基本は、日本型業務プロセスに適した製品によって他社製品との差別化を図る、導入企業ごとの個別カスタマイズを行わずに開発コストを抑制する、開発に特化して販売パートナー企業(販売代理店)を活用するとしている。販売パートナーは大手SIerなどで構成され、全国に営業網を構築している。

■ワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」市場は拡大基調

電子文書を導入せずに、依然として紙・手書きベースで事務処理を行っている企業が多いが、今後は中堅・中小企業においても、業務効率化を実現するワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」の導入が加速し、市場は拡大基調が予想される。

こうした事業環境に対応し、AgileWorksとX-point Cloudを2本柱として、カバレッジ拡張や他社サービスとの連携を強化しながら売上拡大を推進する方針だ。なお同社の主力3製品による紙削減量は年間約50トンと試算されている。

22年1月にはワークフローの認知度向上に向けて、中小企業のチカラが運営する「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」に参画し、同プロジェクト公式アンバサダーの郷ひろみ氏を起用したPR活動を開始した。また毎月26日を「フローの日」と定め、マーケットリサーチ等を活用した情報のマンスリー発信も開始した。

22年3月にはクラウド型のX-point Cloudについて、ウェブ上で外部のクラウドサービスと連携できる機能を公開した。顧客の利便性向上を目指すとともに、認知度向上や新たなサービス・市場創出につなげるとしている。22年6月には、SaaS事業者向け連携開発のストラテジットと業務提携、チャットボット大手のチャットプラスと業務提携した。

■24年3月期2桁増益・連続増配予想で収益拡大基調

24年3月期の業績(非連結)予想は売上高が23年3月期比10.3%増の23億90百万円、営業利益が10.1%増の11億円、経常利益が10.0%増の11億円、当期純利益が11.6%増の7億48百万円としている。配当予想は23年3月期比2円増配の26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。連続増配予想で、予想配当性向は26.0%となる。

製品別売上高の計画は、X-point Cloudが21.6%増の10億60百万円、AgileWorksが10.6%増の10億72百万円、X-point(22年3月に新規ライセンス販売終了)が20.9%減の2億58百万円としている。

なお、経常利益1億01百万円増益の要因分析(計画)は、クラウドサービス売上増加で+1億88百万円、パッケージ売上増加で+34百万円、人件費増加で▲1億18百万円、減価償却費増加で▲14百万円、クラウドインフラコスト増加で▲16百万円、その他で+27百万円としている。

24年3月期も人件費やクラウドインフラコストなどの増加を吸収して、2桁増益で連続増配予想としている。企業におけるDX化進展の流れでワークフローの需要が拡大し、クラウドサービスの成長が牽引する見込みだ。そしてクラウドサービスの拡大でSaaSベンダーへの転換を目指す方針としている。事業環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は9月末と3月末の年2回

株主優待制度は年2回、毎年9月末および3月末時点の株主を対象として、保有株式数に応じてオリジナルQuoカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は反発の動き

株価はやや小動きだが下値固め完了して反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。7月14日の終値は1463円、今期予想PER(会社予想のEPS99円90銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の26円で算出)は約1.8%、前期実績PBR(前期実績のBPS537円79銭で算出)は約2.7倍、そして時価総額は約110億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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