【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ASIANSTARは売り一巡して底打ちの可能性、財務基盤改善も評価して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ASIANSTAR(エイシアンスター)<8946>(JQS)(15年4月、陽光都市開発から商号変更)は不動産関連事業を展開している。株価は地合い悪化が影響して8月25日に年初来安値110円まで急落したが、28日には148円まで戻した。地合い悪化の売りが一巡して底打ちした可能性がありそうだ。財務基盤改善や中期成長に向けた積極投資を評価して切り返し展開だろう。

■国内と中国で不動産管理事業を展開

 15年4月1日付で陽光都市開発からASIANSTAR(エイシアンスター)に商号変更した。

 投資用マンション「グリフィンシリーズ」の企画・販売事業を一旦縮小し、国内の不動産管理・賃貸・仲介事業のストック型フィービジネスへ事業構造を転換した。

 そして13年8月にアパマンショップホールディングス<8889>の子会社アパマンショップネットワークとFC加盟契約締結、13年10月にストライダーズ<9816>と資本業務提携した。

 その後、11年12月の上海徳威グループとの資本提携効果などで財務基盤改善が進展し、さらに国内不動産管理・賃貸・仲介事業の安定的な収益体系が構築できたとして、14年2月に中国における不動産関連事業(サービスアパートメント運営管理事業、ワンルームマンション賃貸事業)へ進出した。また15年2月には国内で一旦縮小した不動産販売事業をあらためて拡大する方針を打ち出した。

 中国における不動産関連事業に関しては、14年2月に香港柏雅および子会社でサービスアパートメント運営・管理コンサルティングを展開する柏雅酒店管理(上海)などベルグラビアグループ3社を連結子会社化した。このうち上海柏雅投資管理は14年6月に売却し、14年7月には香港柏雅の子会社として陽光智寓(香港)を設立した。

 14年11月には15年後半開業予定の世界有数の大型テーマパークから約5km圏内に位置する上海市周浦エリアにおいて、周浦印象春城サービスアパートメント1棟(220戸)の管理受託契約を締結した。14年12月には陽光智寓(香港)が中国上海市で新規事業の実務を行うため上海陽光智寓を設立した。

 また7月30日には、連結子会社の柏雅酒店管理と東急不動産上海が中国に合弁会社の上海雅東企業発展有限公司を設立(15年8月、柏雅酒店管理の出資比率55%)すると発表した。

 柏雅酒店管理が持つ数多くのサービスアパートメント運営管理実績、中国国内の物件情報開発力および許認可取得交渉力と、東急不動産上海が持つ日本人向けサービスアパートメント運営ノウハウ、東急不動産グループの企画・設計力ならびに信用力・知名度を活用して、両社の強みを融合したサービスアパートメント運営管理事業を展開する。

■新規事業としてリゾート開発事業を開始方針

 一層の事業規模拡大を図ることを経営課題として、一旦縮小した国内不動産販売事業をあらためて拡大する方針を打ち出し、15年2月に新規事業としてリゾート開発事業の開始を発表した。

 日本国内で約70ヶ所合計約46万坪の事業用地を取得し、ログハウスを開発・建設して日本国内および海外セカンドハウス・移住者向け住宅として販売する事業、概ね10年を目途に別荘地として区画分譲する事業、開発や区画分譲を開始するまでの期間を固定資産として賃貸する事業を計画している。事業運営は連結子会社の合同会社TYインベスターズ(15年2月設立)が行う。

■15年12月期は減収減益予想だが、中期的に収益改善基調を期待

 8月10日発表の今期(15年12月期)第2四半期累計(1月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比42.7%減の6億03百万円、営業利益が同57.7%減の37百万円、経常利益が同57.8%減の30百万円、純利益が同56.1%減の20百万円だった。

 不動産販売件数が伸び悩んで売上高は計画を55百万円下回ったが、費用抑制効果などで営業利益は19百万円、経常利益は17百万円、純利益は7百万円、それぞれ計画を上回った。

 四半期別にみると、売上高は第1四半期(1月~3月)2億77百万円、第2四半期(4月~6月)3億26百万円、営業利益は第1四半期22百万円、第2四半期15百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(2月16日公表)を据え置いて売上高が前期比33.2%減の14億44百万円、営業利益が同55.6%減の67百万円、経常利益が同66.2%減の59百万円、純利益が同65.4%減の47百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 今期は不動産販売事業において竣工・販売物件の計画がないため大幅減収減益見込みだ。ただし不動産管理事業では国内で管理戸数が順調に増加し、中国におけるサービスアパートメント管理事業の収入も加わる。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が41.8%、営業利益が55.2%、経常利益が50.9%、純利益が42.6%と概ね順調な水準である。15年12月期は減収減益予想だが、中期的には不動産管理事業の安定収益に加えて、不動産販売事業、新規リゾート開発事業の拡大も寄与して収益改善基調が期待される。

■財務改善も進展

 新株予約権行使や第三者割当増資などで財務面の改善も進展している。自己資本比率は13年12月期末9.0%から14年12月期末46.7%、さらに15年12月期第1四半期末58.5%、第2四半期末59.1%に改善した。

 また1株当たり純資産(BPS)は13年12月期末19円92銭から14年12月期末72円12銭、さらに15年12月期第1四半期末100円86銭、第2四半期末102円25銭に改善した。

 なお15年2月発表の第三者割当増資(徳威国際発展有限公司210万株、香港富心国際有限公司77万株の合計287万株、発行価額1株230円)について、調達資金(差引手取概算額)約6億52百万円は借入金返済、新規事業用地取得後の諸費用、新規事業における開発資金に充当する。

■株価は売り一巡して切り返し

 株価の動きを見ると、7月31日に234円まで急伸する場面があったが買いが続かず、逆に地合い悪化が影響して8月25日に年初来安値110円まで急落する場面があった。ただし28日には148円まで戻して売り一巡感を強めている。

 8月28日の終値144円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円60銭で算出)は40倍近辺、実績連結PBR(第1四半期実績の連結BPS100円86銭で算出)は1.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形で水準を切り下げた。ただし安値圏で長い下ヒゲをつけた、地合い悪化の売りが一巡して底打ちした可能性がありそうだ。財務基盤改善や中期成長に向けた積極投資を評価して切り返し展開だろう。

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