- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】Jトラストは調整一巡して強基調に転換の動き、自己株式取得も評価材料
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】Jトラストは調整一巡して強基調に転換の動き、自己株式取得も評価材料
- 2015/8/31 09:27
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
Jトラスト<8508>(東2)は金融事業を主力として、国内外におけるM&Aや事業再編で業容を拡大させている。株価は地合い悪化も影響して8月25日に年初来安値890円まで調整したが、28日には1022円まで戻した。調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。自己株式取得も評価材料として出直り展開だろう。
■金融事業が主力、国内外でM&Aを積極活用して業容拡大
国内金融事業(事業者向け貸付、消費者向け貸付、クレジット・信販、信用保証、債権買取)を主力に、国内外でM&Aや債権承継などを積極活用し、不動産事業、アミューズメント事業、海外金融事業などに業容拡大戦略を推進している。
なお16年3月期から事業セグメントを再構成し、国内金融事業(保証および債権回収業)、韓国金融事業(銀行業、リース・割賦業、債権買取・回収業)、東南アジア金融事業(銀行業、販売金融業)からなる金融事業と、アミューズメント事業(アミューズメント施設運営、娯楽機器製造)、不動産事業(注文住宅建設、収益物件の仕入・販売)、その他非金融事業(ITシステム事業など)からなる非金融事業とする。
■国内金融事業は新規ビジネスも推進
国内金融事業では、日本保証(12年3月ロプロが武富士の消費者金融事業を承継、12年9月ロプロと日本保証が合併)、Jトラストカード(11年8月楽天KCを子会社化、15年1月「KCブランド」事業を譲渡、14年3月に子会社化した個品割賦事業NUCSの「NUCSブランド」事業を承継、15年1月Jトラストカードに商号変更、15年5月完全子会社化)などを傘下に置いている。
15年3月にはJトラストベンチャーキャピタル合同会社が、SmartEbook<2330>の第1回無担保転換社債型新株予約権付社債および第6回新株予約権を引き受けた。企業ニーズに応えるファイナンス支援や事業支援などを通じて支援先企業の企業価値向上を追求し、グループ成長に繋げる方針だ。
15年4月には選択と集中の観点から、子会社クレディアの全株式を売却した。16年3月期第1四半期の個別決算で関係会社売却益を計上するが、連結業績への影響は軽微としている。
また15年4月には、日本最大のビットコイン取引所を営むBTCボックスの第三者割当増資を引き受けて同社を持分法適用会社化した。日本国内のビットコイン決済圏の確立、海外取引所の創設、新興国における新たな決済手段の構築、ビットコインを活用した新規ビジネスの創出を目指すとしている。
■韓国金融事業は総合金融サービス展開に向けた事業基盤整備が概ね完了
韓国金融事業では、12年10月に貯蓄銀行認可を受けた韓国・親愛貯蓄銀行(15年7月JT親愛貯蓄銀行に商号変更)が、未来貯蓄銀行の一部資産・負債を承継し、13年1月韓国・ソロモン貯蓄銀行から、13年6月韓国・エイチケー貯蓄銀行から消費者信用貸付債権の一部を譲り受けた。
また14年3月韓国・ハイキャピタル貸付および韓国・ケージェイアイ貸付を子会社化、14年8月韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付および韓国・ネオラインクレジット貸付(11年4月子会社化)の貸付事業を韓国・親愛貯蓄銀行に譲渡した。
さらに15年1月には韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行の全株式を取得(JT貯蓄銀行に商号変更)し、15年3月には韓国スタンダードチャータードキャピタルの全株式を取得(JTキャピタルに商号変更)した。これによって、韓国において総合金融サービスを展開するうえでの事業基盤の整備が図れたとしている。
なおJTキャピタルは7月24日、住宅割賦金融債権の流動化(MBS)による資金調達(2000億ウォン=約214億円)を実施した。企業価値が韓国市場で認められ、従来のJトラストグループ依存から脱却し、今後の成長エンジンとなる資金調達方法の多様化が可能となった。
■東南アジア金融事業はインドネシアに積極展開
東南アジア金融事業では、13年12月シンガポールの子会社Jトラスト・アジアがインドネシアのマヤパダ銀行と資本業務提携、14年11月インドネシアのムティアラ銀行を連結子会社化(15年6月Jトラスト銀行インドネシアに商号変更)した。
15年5月にはJトラスト・アジアがオートバイ販売金融事業を展開するタイのGLの転換社債を引き受けた。またJトラスト・アジアの子会社Jトラスト・インベストメント・インドネシアを設立した。
なおアジアの不動産分野では、14年9月にシンガポールの不動産開発会社LCDの株式29.5%を取得して筆頭株主となったが、15年2月にLCDの大株主グループの1社であるAFグローバルが実施するTOBに応募して所有する全株式を譲渡した。
■非金融事業も強化
非金融事業の国内不動産分野・アミューズメント分野では、アドアーズ<4712>(12年6月子会社化)を傘下に置いている。アドアーズは14年9月に韓国でカジノ事業を展開するJBアミューズメント(JBA)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主となった。
なおアドアーズは、14年11月に日本介護福祉グループを子会社化して介護事業に進出したが、8月11日に日本介護福祉グループの全株式を譲渡して介護事業を休止すると発表している。
■16年3月期(IFRS任意適用)は黒字予想
15年3月期(日本基準)の四半期別推移を見ると、営業収益は第1四半期(4月~6月)159億28百万円、第2四半期(7月~9月)160億51百万円、第3四半期(10月~12月)161億41百万円、第4四半期(1月~3月)151億61百万円で、営業利益は第1四半期3億58百万円の赤字、第2四半期22億74百万円の赤字、第3四半期6億89百万円の赤字、第4四半期18億96百万円の赤字だった。
韓国・親愛貯蓄銀行で事業基盤強化に向けて積極的に不良債権処理を進めたことや、韓国JT貯蓄銀行および韓国JTキャピタルの株式取得が遅れたことなどで営業赤字、経常赤字だった。純利益は負ののれん発生益計上で黒字だった。
8月12日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、営業収益が前年同期比22.4%増の194億90百万円、営業利益が19億51百万円の赤字(前年同期は3億58百万円の赤字)、経常利益が15億85百万円の赤字(同2億94百万円の赤字)、純利益が27億89百万円の赤字(同3億95百万円の赤字)だった。営業収益は概ね計画水準だったが、Jトラスト銀行インドネシアの収益改善遅れなどで営業利益は計画を下回ったようだ。
営業収益は、国内金融事業でKCカードやクレディアなどが連結除外となって減収だが、一方で韓国や東南アジアで連結子会社が増加し、JT親愛貯蓄銀行の収益増加なども寄与して大幅増収だった。
利益面では、韓国金融事業が営業黒字化したが、Jトラスト銀行インドネシアの新規連結、および貸倒引当金追加繰入、のれん償却などで全体として営業赤字が拡大した。
通期の連結業績予想は前回予想(IFRSを任意適用、5月25日公表)を据え置いて、売上高が819億円、営業利益が75億円、純利益が47億円の黒字予想としている。配当予想も前回予想(5月14日公表)を据え置いて、前期比2円増配の年間12円(第2四半期末5円、期末7円)としている。予想配当性向は30.2%となる。
■中期経営計画で18年3月期ROE10.0%目標
15年5月発表の中期経営計画では、中期ビジョンとして「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業を目指す」を掲げ、目標数値は最終18年3月期の営業収益1421億円、営業利益217億円、ROE10.0%とした。
成長を遂げるアジアにおいて持続的に事業拡大が望める銀行業からの利益貢献を中心として、成長市場におけるIRR15%以上の投資案件をターゲットに3年間で500億円~1000億円の投資を目指す。また株式価値の最大化を経営の最重要課題の一つとして位置付け、株価が割安であると判断したときには機動的に自社株買いを実施する。
国内金融事業では消費者金融事業を縮小し、不動産関連の信用保証事業および債権回収事業を拡大し、M&A活用による新分野への進出を目指す。韓国金融事業ではグループ内の相互連携を通じて各事業を有機的に連携させ、債権残高積み増しと収益拡大に取り組む。東南アジア金融事業では、Jトラスト銀行インドネシアの不良債権回収事業の収益強化と財務健全性の向上に取り組むとともに、さらなるM&Aを推進する方針だ。
中期成長に向けてM&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、当面はM&A・事業再編および事業構造改革に伴う一時的利益・費用の計上で収益が大幅に変動する可能性がありそうだ。ただし韓国事業の収益改善、東南アジアへの積極的な業容拡大、グループシナジーなどの効果で、中期的に収益拡大が期待される。
■株価は調整一巡して強基調に転換の可能性
5月14日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限625万株、取得価額総額の上限75億円、取得期間15年5月26日~16年3月31日)については、7月31日時点で取得株式数0株となっている。
また5月14日には、当社筆頭株主である当社代表取締役藤澤信義氏より、今後の株価動向やその他の市場環境如何によっては、市場内立会取引によって当社株式を買い増す意向があることについて説明を受けたとしている。当然のことではあるが同氏は、金融商品取引法その他関連法令の規制を遵守するとしている。
7月30日には、アプロファイナンシャル貸付(旧商号A&Pフィナンシャル貸付)から提起された損倍賠償請求訴訟について、東京高等裁判所から本件控訴を棄却するとの控訴審判決の言い渡しがあったと発表している。当社の主張が全面的に認められた。
また8月10日には債務不存在確認訴訟の訴状を東京地方裁判所に提出したと発表している。本件訴訟を通じて、Jトラスト銀行インドネシアに関して、ウェストン関連法人に対して債務を負っていないことの確認を求めていく予定としている。
株価の動きを見ると、5月の年初来高値1335円から反落後は調整局面が続き、地合い悪化も影響して8月25日には年初来安値890円まで調整する場面があった。ただし28日には1022円まで戻して調整一巡感を強めている。
8月28日の終値1019円を指標面で見ると、今期予想連結PER(今期会社予想の連結EPS39円77銭で算出)は25~26倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1591円09銭で算出)は0.6倍近辺である。
日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。自己株式取得も評価材料として出直り展開だろう。