【アナリスト水田雅展の銘柄分析】サクセスホールディングスは15年12月期業績増額余地や中期成長力を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 サクセスホールディングス<6065>(東1)は保育園運営事業を展開している。株価は第2四半期累計(1月~6月)の大幅増益を好感する場面があったが、地合い悪化の影響で急反落して8月25日の年初来安値1061円まで調整した。ただし28日には1164円まで戻して地合い悪化の売り一巡感を強めている。ジェイコムホールディングスとの連携強化の効果も期待され、15年12月期業績の増額余地や中期成長力を見直す動きが強まるだろう。

■神奈川と東京を地盤に保育園運営

 保育園を運営するサクセスアカデミーの持株会社で、病院・大学・企業などが設置主体の事業所内保育室を受託運営する受託保育事業と、認可保育園・認証保育所・学童クラブ・児童館・全児童対策事業施設など公的保育施設を運営する公的保育事業を展開している。保育園業界3位の売上規模である。

 従量制の請求方法や24時間365日の運営対応など、利用者の視点に立った最適な保育サービスを提供していることが強みだ。受託保育事業では委託先の予算や要望に合わせた保育設計で、さまざまな利用定員数、施設場所、利用時間帯、保育内容などを実現している。公的保育事業は利用者から徴収する利用料と自治体からの補助金が当社の収入となる。

 14年12月期末時点の運営施設数は、受託保育事業が167施設(13年12月期末比5施設増加)、公的保育事業が88施設(認可保育園43施設、認証保育所5施設、学童クラブ等27施設、小規模保育等13施設)(同16施設増加)の合計255施設(同21施設増加)である。地域別には神奈川県と東京都を地盤としている。

 成長に向けた重点戦略として、受託保育事業は広域エリアでの拡充、公的保育事業は首都圏中心の新規開園と小規模施設の運営を進め、施設運営の効率向上、親会社となったジェイコムホールディングスグループとの人材確保・育成面での連携強化、認可保育園開設用不動産の確保などを掲げている。24時間保育や英語教育の実施など高付加価値の保育サービスの提供、多様な保育需要に応じたサービスの提供も強化している。

■ジェイコムホールディングスによる連結子会社化で決算期を4月に変更

 当社の筆頭株主であるジェイコムホールディングス<2462>が、TOBによって議決権所有割合50.10%の親会社となり、当社はジェイコムホールディングスの連結子会社となった。

 またジェイコムホールディングスとの効率的な事業運営を図るため、決算期(事業年度の末日)を毎年12月31日から毎年4月30日に変更する。これによって現在進行中の今期15年12月期は12ヶ月決算、来期16年4月期は4ヶ月決算(1月~4月)となる予定だ。

■15年12月期減益予想だが、第2四半期累計高進捗率で増額余地

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)23億66百万円、第2四半期(4月~6月)24億75百万円、第3四半期(7月~9月)25億41百万円、第4四半期(10月~12月)27億31百万円、営業利益は第1四半期59百万円、第2四半期40百万円、第3四半期1億64百万円、第4四半期1億06百万円、経常利益は第1四半期57百万円、第2四半期2億81百万円、第3四半期1億55百万円、第4四半期1億89百万円だった。

 毎年4月に新規施設の開園が集中して開園準備費用負担が先行し、期後半に向けて施設稼働率が上昇するため、営業利益は期前半が低水準、期後半が高水準となりやすい。また経常利益は営業外での公的保育事業に係る設備補助金収入の増減も影響する収益構造だ。

 8月7日に発表した今期(15年12月期)第2四半期累計(1月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比17.1%増の56億71百万円、営業利益が同42.6%増の1億41百万円、経常利益が同54.9%増の5億24百万円、純利益が同63.0%増の3億11百万円だった。

 前期および今期に新設した施設が寄与して大幅増収となり、利益面では新規保育施設開園準備費、保育士募集採用費、人件費の増加を吸収して大幅営業増益だった。経常利益と純利益は新規開園数の増加に伴う設備補助金の増加も寄与した。

 なお新規開設は、受託保育事業が合計9施設(病院内保育施設5施設、企業内等の保育施設4施設)、公的保育事業が合計15施設(認可保育園等8施設、学童クラブ・児童館7施設)、合計が24施設だった。

 セグメント別動向を見ると、受託保育事業は売上高が同3.7%増の18億98百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同47.0%減の86百万円、そして公的保育事業は売上高が同25.3%増の37億73百万円、営業利益が同51.1%増の3億16百万円だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)27億49百万円、第2四半期(4月~6月)29億22百万円で、営業利益は第1四半期40百万円、第2四半期1億01百万円、経常利益は第1四半期35百万円、第2四半期4億89百万円である。

 通期の連結業績予想は前回予想(2月10日公表)を据え置いて、売上高が前期比12.5%増の113億75百万円、営業利益が同36.8%減の2億33百万円、経常利益が同3.5%減の6億58百万円、純利益が同7.1%減の3億68百万円としている。配当予想は前期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)で予想配当性向は42.6%となる。

 利益面では新規保育施設開園準備費、保育士募集採用費、人件費などの増加を考慮して営業減益予想としている。ただし新規施設開設などで2桁増収見通しだ。経常利益と純利益については営業外収益での公的保育事業に係る設備補助金収入が寄与する。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は、売上高が49.9%、営業利益が60.5%、経常利益が79.6%、純利益が84.5%と高水準である。保育士の確保などが課題となるが、営業利益は期後半が高水準となりやすい収益構造であり、通期会社予想に増額余地がありそうだ。

 全国の保育所利用児童数は増加基調で、待機児童数は緩やかに減少傾向となっているが依然として解消せず、潜在需要も顕在化して都市部を中心に保育サービスの需要は高水準である。そしてアベノミクス成長戦略では「女性活用推進」を重点分野に位置付け、17年度の待機児童解消を目指して15年4月に「子ども・子育て新支援制度」がスタートした。さらに規制緩和、制度面での支援、運営補助金拡大などの動きが活発化している。

 アベノミクス成長戦略が追い風であり、ジェイコムホールディングスとの連携強化の効果も期待される。国の重点政策を追い風とする中期成長シナリオに変化はなく、規模拡大に伴って収益改善が期待される。

■株価は地合い悪化の売り一巡、15年12月期の増額余地を見直し

 株価の動きを見ると、第2四半期累計の大幅増益を好感して8月11日に戻り高値1370円まで上伸したが、地合い悪化の影響を受けて急反落し、8月25日の年初来安値1061円まで調整した。ただし28日には1164円まで戻して地合い悪化の売り一巡感を強めている。

 8月28日の終値1156円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS70円36銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当30円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS378円49銭で算出)は3.1倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、急落場面で下ヒゲをつけて売り一巡感を強めている。アベノミクス成長戦略が追い風であり、ジェイコムホールディングスとの連携強化の効果も期待される。15年12月期業績の増額余地や中期成長力を見直す動きが強まるだろう。

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