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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリナップは地合い悪化の売り一巡感、0.6倍近辺の低PBRを見直し
- 2015/8/31 09:05
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手である。株価は第1四半期(4月~6月)赤字に対するネガティブ反応が限定的で8月11日の戻り高値959円まで上伸したが、地合い悪化の影響で8月26日の年初来安値793円まで急反落した。ただし28日には847円まで戻して売り一巡感を強めている。16年3月期営業減益予想は織り込み済みであり、0.6倍近辺の低PBRを見直してレンジ下限から切り返し展開だろう。
■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開し、中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を目指している。
重点施策として、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、ブランド力の強化、中高級システムキッチンの市場シェア上昇および普及クラスの強化、全国のショールームへの集客強化と総合競争力の強化、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化とリフォーム需要の取り込み、トータルコストの低減、CPS活動の全社展開による業務効率化、20年サポートを支える業務システムの整備、そして海外事業の強化などを推進している。
全国101ヶ所のショールームへの集客を強化するため、リニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。15年3月期は帯広、藤沢、鹿児島、和歌山、新潟の5ヶ所の移転リニューアル、大宮、大阪、岡山、大分の4ヶ所のリニューアルを実施した。さらに15年4月は石巻(移転リニューアル)、仙台(リニューアル)の2ヶ所を実施した。15年4月現在で過去4年間のリニューアルは約50ヶ所となった。
商品力の面では、普及クラスで人気のシステムキッチン「ラクエラ」のリニューアル効果で、普及クラスの15年3月期の市場シェアが前期比0.9ポイント上昇して21.0%となった。
リフォーム政策では会員登録制組織「水まわり工房」加盟店が、15年3月期に前期比514社増加して5346社となった。海外展開では中国で瀋陽や蘇州など4地区にキッチン等の提供を開始した。台湾やベトナムでの販売も拡大しているようだ。
また7月30日には、7月29日にオープンしたキッチン専用撮影スタジオ「南青山キッチンスタジオ-supported by クリナップ」にサポート協賛すると発表した。
■消費増税の影響長期化で16年3月期第1四半期赤字、通期純利益は増益予想
なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)319億24百万円、第2四半期(7月~9月)284億53百万円、第3四半期(10月~12月)288億39百万円、第4四半期(1月~3月)270億23百万円、営業利益は第1四半期19億68百万円、第2四半期5億49百万円、第3四半期11億13百万円、第4四半期6億02百万円の赤字だった。
また15年3月期の配当性向は96.0%だった。ROEは14年3月期比7.0ポイント低下して1.5%、自己資本比率は同2.5ポイント上昇して65.7%となった。
8月6日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比15.0%減の271億23百万円で、営業利益が32百万円の赤字(前年同期は19億68百万円の黒字)、経常利益が34百万円の赤字(同18億76百万円の黒字)、そして純利益が1億22百万円の赤字(同10億95百万円の黒字)だった。
消費増税前駆け込み需要の反動影響が長期化して減収となり、各利益とも赤字となった。部門別の売上高は厨房部門が同17.1%減の207億18百万円、浴槽・洗面部門が同8.7%減の49億49百万円だった。
通期の連結業績予想は前回予想(5月11日公表)を据え置いて、売上高が前期比1.5%増の1180億円で、営業利益が同7.5%減の28億円、経常利益が同9.4%減の24億50百万円、そして純利益が同52.7%増の13億50百万円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は61.6%となる。
消費増税後の厳しい事業環境が継続して微増収にとどまり、営業減益、経常減益見込みとしている。純利益については特別損失や繰延税金資産取崩の影響が一巡して大幅増益見込みだ。
ただし食住イベントやフェアの開催によるブランド力向上、ショールーム全面リニューアルによる集客力強化、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携などの販売強化施策を推進する。そしてショールームへの来場者数の回復が期待される。システムキッチンの市場シェアは上昇基調であり、原価低減なども寄与して中期的には収益拡大が期待される。
■株価は地合い悪化の売り一巡、レンジ下限から切り返し
株価の動きを見ると、第1四半期の赤字に対するネガティブ反応は限定的で8月11日の戻り高値959円まで上伸したが、地合い悪化の影響で8月26日の年初来安値793円まで急反落した。ただし28日には847円まで戻す場面があり売り一巡感を強めている。
8月28日の終値832円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS32円46銭で算出)は25~26倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1358円69銭で算出)は0.6倍近辺である。
週足チャートで見ると再び26週移動平均線を割り込んだが、大勢としては800円~950円近辺でのボックス展開の形だ。16年3月期の営業減益予想は織り込み済みであり、0.6倍近辺の低PBRも見直してレンジ下限から切り返し展開だろう。