【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クレスコは地合い悪化の売り一巡して切り返し、16年3月期増収増益・増配予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クレスコ<4674>(東1)は独立系のIT企業でビジネス系ソフトウェア開発を主力としている。第1四半期(4月~6月)は大幅増益で、16年3月期増収増益・増配予想だ。株価は地合い悪化の影響で8月25日の年初来安値1517円まで急落したが、27日には1785円まで戻して売り一巡感を強めている。切り返し展開だろう。

■ビジネス系ソフトウェア開発が主力のIT企業

 ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。15年3月期の顧客業種別売上構成比は、ソフトウェア開発の金融・保険関連41.2%、公共・サービス20.1%、流通・その他21.3%、組込型ソフトウェア開発のカーエレクトロニクス6.2%、通信システム3.8%、情報家電・その他6.9%だった。

 中期成長に向けた重点施策としては、品質管理とプロジェクトマネジメント力の向上、組込型ソフトウェア開発事業の再構築、新ビジネスモデル創出と事業領域拡大、クラウド関連ソリューションの展開、グループ連携強化による収益性改善、ニアショア開発・オフショア開発の推進(地方分散開発体制強化と海外開発体制整備)などを掲げている。

■オリジナル製品や次世代技術の開発を推進

 オリジナル製品・サービスに関しては「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」や、14年6月に開始したSAP基幹業務をモバイル化して業務効率を向上させる新ソリューション「モビック」の拡販を推進している。

 15年3月には、旅行などのシーンで行われる点呼確認作業をビーコンとスマートデバイスを使って自動化するソリューション「みんなのてんこ」を発表し、5月から販売開始した。訪日外国人旅行客に対するサービス向上を実現するため16カ国後に対応した適切な言語で通知する機能も備えている。

 15年5月にはBLE(Bluetooth Low Energy)技術に基づくIoT基盤のプラットフォーム「BeaconBridge(ビーコンブリッジ)」を開発した。

 15年6月には、IoT基盤プラットフォーム「BeaconBridge(ビーコンブリッジ)」に対して、Skeed社(東京都)と共同で次世代技術の自律分散型P2Pネットワークを活用する取組に着手すると発表した。

 15年7月には子会社クレスコワイヤレスが丸紅情報システムズと共同開発した単3電池2本型のビーコン(Beacon)デバイスの販売開始を発表した。スマートフォンやタブレットPCなどとBLE通信を行うビーコンデバイスで、従来製品と比較して電池寿命が大幅に向上した。

 また7月30日には、ソフトバンクの「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定されたと発表している。テクノロジーパートナーとして、Pepperをはじめとするロボット、モバイル、パソコンに対するさまざまなアプリケーション開発を通じてWatsonによるビジネス変革を支援する。

■中期成長に向けてアライアンス・M&Aも積極活用

 得意分野を持つビジネスパートナーとのアライアンス・M&A戦略も積極活用している。13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを完全子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、13年9月三谷産業<8285>とクラウドサービス事業で協業、14年3月ゴマブックスと提携して企業内文書デジタルサービスの提供開始、14年8月高速クラウド構築支援サービスでSkeed社と技術提携、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム・スタッフを持分法適用会社化した。

 15年3月には技術提携先のSkeedの第三者割当増資を引き受けて(出資比率12.1%)提携関係を強化した。15年4月にはSAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスの株式100%取得して完全子会社した。ERP事業を一段と強化する。

 15年5月には子会社のクレスコ北陸がアップゾーン(東京都)と資本業務提携してモバイルポータル事業に参入した。アップゾーンが提供するスマホ向けアプリケーション作成プラットフォーム「misterPARK」を中核に置いた多面的なモバイルポータル事業を展開する。

■16年3月期は増収増益・連続増配予想で会社予想に増額余地

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)58億10百万円、第2四半期(7月~9月)61億89百万円、第3四半期(10月~12月)61億55百万円、第4四半期(1月~3月)69億09百万円、営業利益は第1四半期3億80百万円、第2四半期5億89百万円、第3四半期5億43百万円、第4四半期5億01百万円だった。

 また15年3月期の配当性向は28.5%だった。ROEは14年3月期比3.4ポイント上昇して14.1%、自己資本比率は同1.3ポイント上昇して60.8%だった。

 8月7日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比13.0%増の6564百万円となり、営業利益が同11.3%増の4億23百万円、経常利益が同18.4%増の5億25百万円、純利益が同0.7%増の3億61百万円だった。ソフトウェア開発事業および組込型ソフトウェア開発事業とも好調に推移した。

 セグメント別に見ると、ソフトウェア開発事業は売上高が同12.9%増の54億45百万円、営業利益が同9.1%増の5億20百万円だった。流通・その他分野は前年同期並みだったが、主力の金融分野や公共サービス分野が増収だった。

 組込型ソフトウェア開発事業は、売上高が同11.6%増の10億85百万円、営業利益が同10.9%増の1億50百万円だった。通信システム分野は減収だが、カーエレクトロニクス分野が好調だった。その他(商品・製品販売など)は売上高が同2.1倍の33百万円、営業利益が13百万円の赤字(前年同期は8百万円の赤字)だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(5月8日公表)を据え置いて、売上高が前期比7.7%増の270億円、営業利益が同9.3%増の22億円、経常利益が同7.1%増の24億円、純利益が同11.7%増の15億70百万円としている。

 配当予想は同2円増配の年間40円(第2四半期末20円、期末20円)としている。連続増配で予想配当性向は28.2%となる。配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額の配当を継続的に実現することを目指している。

 ソフトウェア開発事業で金融・保険分野や公共・サービス分野、組込型ソフトウェア開発事業でカーエレクトロニクス分野の好調が牽引する。グループ内の連携による受注増加、生産性向上や品質管理徹底によるプロジェクト収益率改善も寄与して増収増益見込みだ。

 国内のIT投資需要は、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などを背景として高水準に推移する見込みだ。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が24.3%、営業利益が19.2%、経常利益が21.9%、純利益が23.0%である。第4四半期の構成比が高い収益構造であることを考慮すれば順調な水準だろう。通期ベースで増収増益基調であり、中期的にも収益拡大基調だろう。

■株価は01年以来の高値水準で堅調

 なお14年11月のドイツ銀行ロンドン支店を割当先とする自己株式を活用した第三者割当による第1回~第3回新株予約権の発行、および新株予約権買い取り契約(行使許可条項付・ターゲット・イシュー・プログラム「TIP・2014モデル」)について、3月12日に第1回新株予約権の権利行使が全て完了した。

 第2回新株予約権については3月18日、5月12日、6月11日、7月9日、7月24日、8月21日に行使許可を発表している。なお大量行使によって7月31日時点での第2回新株予約権の未行使は25万個(25万株)となった。

 株価の動きを見ると、7月の年初来高値2198円から利益確定売りで反落し、地合い悪化の影響を受けて8月25日の年初来安値1517円まで急落した。ただし27日には1785円まで戻して売り一巡感を強めている。

 8月28日の終値1764円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS141円68銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS990円11銭で算出)は1.8倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで急落したが、52週移動平均線近辺で長い下ヒゲをつけて売り一巡感を強めている。16年3月期増収増益・増配予想を評価して切り返し展開だろう。

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