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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】翻訳センターは地合い悪化の売り一巡して切り返し、16年3月期増収増益基調
- 2015/8/31 08:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
翻訳センター<2483>(JQS)は翻訳・通訳サービスなどを展開している。第1四半期(4月~6月)の営業損益が改善し、16年3月期は増収増益基調だ。株価は地合い悪化も影響して7月の年初来高値5600円から8月25日の年初来安値3330円まで急落した。ただし27日には4200円まで戻して売り一巡感を強めている。インバウンド関連としても注目され、16年3月期の増収増益基調を評価して切り返し展開だろう。
■企業向け翻訳サービス事業を主力に業容拡大
特許・医薬・工業・法務・金融分野を中心として企業向け翻訳サービス事業を展開している。また業容拡大に向けて、12年9月に通訳・翻訳・国際会議運営のアイ・エス・エス(ISS)を子会社化、13年6月にアイタスからIT関連のローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部譲り受けた。14年10月には医薬品承認申請・取得に関するメディカルライティング業務を専門に受託する子会社パナシアを設立した。
主力の翻訳事業では専門性の高い産業翻訳に特化している。グループ全体で約6200名の登録者を確保し、対応可能言語は約70言語と国内最大規模である。また取引社数は4000社、年間受注件数は5万9000件に達している。
8月21日には工業・ローカライゼーション営業部が、Microsoft Visual Studio2015日本語版の実機翻訳レビューにおいて適切なフードバックを行った功績が認められ、マイクロソフト米国本社から表彰されたと発表している。
企業のグローバル展開加速を背景として、翻訳サービスの需要は企業の知的財産権関連、新薬開発関連、新製品開発関連、海外展開関連、IR・ディスクロージャー関連を中心に拡大基調である。
子会社のISSは国際会議運営の実績も豊富である。外国人旅行客の増加や20年東京夏季五輪開催も背景として、通訳や国際会議の需要増加が期待される。
15年7月には米国の調査会社Commom Senese Advisory社発表の「世界の語学サービス会社ランキング2015」において4年連続でアジア1位にランクインしたと発表した。
■総合的な言語ソリューションを目指してM&A・アライアンスも積極化
翻訳だけではなく、通訳、人材派遣、多言語コンタクトセンターなど総合的な言語ソリューションの提供を目指して、M&A・アライアンス戦略も積極化している。
14年8月には、多言語対応コンタクトセンターサービスのディー・キュービックと、日本国内におけるマルチランゲージ・コンタクトセンターサービス(在日外国人を顧客とする企業や団体を対象とした通訳・翻訳サービス)に関して業務提携した。
15年3月にはISSが100%所有する人材紹介事業のISSコンサルティングの全株式を、同社代表取締役関口真由美氏に譲渡すると発表した。協業関係は継続するとしている。
15年4月には、ディー・キュービックの親会社キューアンドエーと合弁で新会社ランゲージワンを設立した。ディー・キュービックの多言語対応コンタクトセンターサービスを新会社ランゲージワンに移管し、センター運営およびサービスの強化を図る。
15年7月には通訳者・翻訳者教育事業を展開するアイ・エス・エス・インスティテュートが、インバウンド需要の増加に対応すべく電話通訳オペレーター養成講座を開設した。
■16年3月期第1四半期の営業損益改善、通期も増収増益基調
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)21億08百万円、第2四半期(7月~9月)22億53百万円、第3四半期(10月~12月)23億07百万円、第4四半期(1月~3月)25億23百万円、営業利益は第1四半期16百万円、第2四半期1億38百万円、第3四半期1億31百万円、第4四半期2億19百万円だった。第4四半期の構成比が高い収益構造としている。
また15年3月期の配当性向は28.5%だった。ROEは14年3月期比3.4ポイント上昇して10.4%、自己資本比率は同1.1ポイント低下して62.5%となった。
今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は売上高が前年同期比横ばいの21億10百万円だったが、営業利益は同3.2倍の52百万円、経常利益が同3.0倍の49百万円、純利益が同13.4倍の14百万円だった。主力の翻訳事業の増収効果、派遣事業の損益改善などで大幅増益だった。
セグメント別売上高を見ると、翻訳事業は医薬分野や金融・法務分野が好調で同3.8%増の15億61百万円、派遣事業は人材紹介事業の子会社売却などで同33.2%減の2億23百万円、通訳事業はIR関連が増加したが大手食料品企業からの受注減少で同0.3%減の1億62百万円、語学教育事業は同0.5%増の55百万円、コンベンション事業は「第7回太平洋・島サミット」などの受注で同2.4倍の74百万円、その他は同45.5%増の32百万円だった。
通期の連結業績予想は前回予想(5月13日公表)を据え置いて、売上高が前期比3.3%増の95億円、営業利益が同8.9%増の5億50百万円、経常利益が同9.4%増の5億50百万円、純利益が同13.0%増の3億20百万円としている。配当予想は同5円増配の年間53円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は29.7%となる。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が22.2%、営業利益が9.5%、経常利益が8.9%、純利益が5.9%である。低水準の形だが第4四半期の構成比が高い収益構造であり、現時点ではネガティブ要因とはならない。主力の翻訳事業や通訳事業が好調に推移し、粗利率の改善も寄与して増収増益基調だろう。
■中期経営計画で18年3月期ROE10%以上目標
15年5月に発表した第3次中期経営計画(16年3月期~18年3月期)では、目標数値に18年3月期売上高110億円、営業利益7億50百万円、純利益4億50百万円、ROE10%以上を掲げた。営業利益率については中期的に8%を目指すとしている。
重点施策としては、顧客満足度向上のための分野特化戦略のさらなる推進、ビジネスプロセスの最適化による生産性向上、ランゲージサービスにおけるグループシナジーの最大化を推進する。需要は拡大基調であり、中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は地合い悪化の売り一巡して切り返し
株価の動きを見ると、急伸した7月の年初来高値5600円から利益確定売りで反落し、さらに地合い悪化も影響して8月25日の年初来安値3330円まで急落した。ただし27日には4200円まで戻して売り一巡感を強めている。
8月28日の終値4150円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS189円96銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間53円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1671円18銭で算出)は2.5倍近辺である。
週足チャートで見ると長い下ヒゲをつけて26週移動平均線を維持し、13週移動平均線を回復する動きだ。サポートラインを確認した形だろう。インバウンド関連としても注目され、16年3月期の増収増益基調を評価して切り返し展開だろう。