【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジョルダンは売り一巡して切り返し、訪日外国人旅行客増加が追い風

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジョルダン<3710>(JQS)は経路検索ソフトなどの乗換案内事業を主力としている。第3四半期累計(10月~6月)は減益だったが、外国人旅行客の増加も追い風として中期的に収益拡大が期待される。株価は7月の戻り高値1246円から地合い悪化も影響して8月25日の年初来安値720円まで急落した。ただし28日には870円まで戻して売り一巡感を強めている。出直り展開だろう。

■経路探索ソフトなどの乗換案内事業が主力

 乗換案内事業(無料版「乗換案内」、有料サービス「乗換案内NEXT」「乗換案内Plus」、総合旅行サービス「乗換案内トラベル」、および広告、グルメ・運行情報サービスなど)を主力として、マルチメディア事業(電子出版・紙媒体出版、ニュース、教育、その他コンテンツ)や、その他事業(受託ソフトウェア開発、その他新サービス)も展開している。

 有料サービス「乗換案内NEXT」「乗換案内Plus」の15年3月末有料会員数は約42万人で、無料を含めた「乗換案内」の各種インターネットサービス検索回数は15年3月に月間約2億2000万回となった。また当該サービスの月間利用者数は約1200万人となっている。

 乗換案内事業では、鉄道の経路検索にとどまらず、路線バスの経路検索にも対応している。さらに利便性の高い「乗換案内」を目指して、今後は「駅から駅」「バス停からバス停」の案内にとどまらず、徒歩ルートを含めた「地点から地点」「場所から場所」案内を強化する方針だ。

■「移動に関するNO.1情報プロバイダー」目指す

 そして「移動に関するNO.1情報プロバイダー」を目指し、新サービス開発や機能充実に向けてM&A・アライアンス戦略も積極活用している。12年9月にグルメぴあネットワークを子会社化(13年4月吸収合併)、12年11月にネット旅行販売・情報提供のイーツアーを子会社化、14年7月に合弁で「ミール・プラス」事業のRemunera Jorudan(レムネラ・ジョルダン)を設立した。一方ではマルチメディア事業における不採算事業からの撤退を進めるとともに、新たな採算事業も模索している。

 15年4月には東京国際空港ターミナルと連携して、羽田空港国際線旅客ターミナルから目的地へ、また各地から羽田空港国際線旅客ターミナルへ、鉄道やバスを利用して移動する経路のアクセス検索サービス「TIAT ROUTE MASTER」のサービスを開始した。日本語だけでなく英語、中国語(簡体字・整体字)、韓国語の検索も可能だ。

 15年5月には訪日外国人旅行客をターゲットにしたルート案内ソリューション「乗換案内Visit」の提供を開始した。英語、中国語(簡体字・整体字)、韓国語に日本語を含めた5言語に対応する。乗換経路検索だけでなく、ゼンリン<9474>提供の多言語地図との連携により、多言語でのトータルルート案内サービスを実現した。

 15年5月にはVAIRON(東京都)と提携して、中国のTencentが運営するスマートフォン向けコミュニケーション・チャットアプリ「WeChat」の企業アカウント開設だけでなく、企業が効果的に「WeChat」を活用するための独自の開発を行う体制を整えた。訪日中国人の購買行動へ結びつけるブランドコミュニケーションを行うには、7億人ユーザーの「WeChat」への企業アカウント開設および運営が必須とされるため、共同で「WeChat」を活用するマーケティング活動をコンサルティングから開発まで提供する。

 15年6月には日本マイクロソフトのクラウド型グループウェア「Office365」と連携した「乗換案内Biz for Office」をリリースした。15年7月にはサイボウズ<4776>のクラウド型アプリケーション作成サービス「Kintone」と連携した旅費交通費精算用アプリ「旅費交通費精算with乗換案内Biz」をリリースした。いずれも企業における交通費精算業務の負担を軽減できる。

 8月5日には当社のスマートフォンアプリ「乗換案内」と、カーシェア・マップが開発したオリックス自動車専用スマートフォンアプリの連携を開始すると発表した。業界初の経路探索サービスとカーシェアの連携となる。

■15年9月期第3四半期累計は減益だが、通期は増益予想

 8月11日発表の今期(15年9月期)第3四半期累計(10月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比1.9%増の31億91百万円だが、営業利益が同29.7%減の3億17百万円、経常利益が同30.2%減の3億25百万円、純利益が同36.2%減の1億75百万円だった。

 子会社イーツアーの旅行関連の好調が牽引して増収だったが、新製品・サービス開発に係る費用の増加、持分法投資損益の悪化、負ののれん発生益の一巡などで減益だった。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、乗換案内事業は売上高が同1.1%増の30億23百万円、営業利益が同23.6%減の5億57百万円だった。旅行関連が大幅増収だったが、モバイル向け有料サービスやグルメ関連が減収となり、旅行関連の増収に伴う仕入増加、新製品・サービス開発に係る費用の増加で減益だった。

 マルチメディア事業は売上高が同3.2倍の89百万円、営業利益が18百万円の赤字(前年同期は50百万円の赤字)だった。前期第4四半期に設立して連結化した悟空出版の事業開始で大幅増収となり、費用削減効果などで赤字が縮小した。その他はソフトウェア受託開発案件の完了が減少して売上高が同33.4%減の96百万円、営業利益が同26.1%減の16百万円だった。なお第3四半期末時点で受託開発の未完了案件は増加しているようだ。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)10億57百万円、第2四半期(1月~3月)11億76百万円、第3四半期(4月~6月)9億58百万円、営業利益は第1四半期94百万円、第2四半期1億84百万円、第3四半期39百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(11月13日公表)を据え置いて、売上高が前期比4.2%増の45億円、営業利益が同3.3%増の6億円、経常利益が同1.2%増の6億20百万円、純利益が同2.7%増の3億90百万円としている。配当予想は前期と同額の年間13円(期末一括)で予想配当性向は17.4%となる。

 乗換案内事業ではスマートフォン向け有料サービスの機能強化で会員獲得を推進し、スマートフォン向け無料サービスにおける広告、法人・自治体向け案件、旅行関連パッケージ商品などの販売拡大を見込んでいる。

 製品・サービス別の売上高の計画は、乗換案内事業が同2.1%増の42億30百万円(モバイルが4.8%減の10億20百万円、広告が4.9%増の3億円、個人向けが11.8%減の90百万円、法人向けが6.0%増の9億20百万円、旅行が8.0%増の17億10百万円、グルメが18.6%減の1億80百万円、他乗換が11.1%増の10百万円)、およびマルチメディア事業が同4.2倍の1億40百万円、その他が同7.1%減の1億30百万円としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.9%、営業利益が52.8%、経常利益が52.4%、純利益が44.9%である。やや低水準の形だが、訪日外国人旅行客の増加も追い風として第4四半期(7月~9月)の挽回が期待される。さらに20年東京夏季五輪開催も追い風となって中期的に収益拡大が期待される。

■株価は売り一巡して切り返し

 株価の動きを見ると、7月の戻り高値1246円から反落し、さらに地合い悪化も影響して8月25日の年初来安値720円まで急落した。ただし28日には870円まで戻して売り一巡感を強めている。

 8月28日の終値850円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS74円72銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS764円87銭で算出)は1.1倍近辺である。

 週足チャートで見ると一気に26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線近辺で長い下ヒゲをつけて切り返す動きだ。サポートラインを確認したようだ。訪日外国人旅行客増加を追い風として収益拡大が期待され、指標面に割高感はない。出直り展開だろう。

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