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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本マニュファクチャリングサービスは利益確定売り一巡、16年3月期通期利益予想も増額が濃厚
- 2015/8/31 09:46
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本マニュファクチャリングサービス<2162>(JQS)は製造請負・派遣および製造受託EMSの大手である。16年3月期第2四半期累計(4月~9月)の利益予想を増額した。通期も増額が濃厚で収益改善基調だ。株価は急伸した8月18日の上場来高値1270円から一旦反落したが、利益確定売りが一巡して8月高値を目指す展開だろう。
■製造請負・派遣事業、EMS事業、および電源関連のPS事業を展開
製造請負・派遣、修理・検査受託、技術者派遣のヒューマンソリューション(HS)事業、子会社の志摩電子工業グループとTKRグループが展開する開発・製造受託のエレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス(EMS)事業、およびパナソニック<6752>から事業譲り受けたパワーサプライ(PS)事業を展開している。
15年3月には兼松<8020>と資本・業務提携し、兼松が当社の第3位株主となった。兼松の部材調達力および販売力、当社の技術・製造ノウハウを相互活用することで、EMS事業拡大、戦略的部材調達、海外事業展開などで大きなシナジー効果が見込まれる。
■基本コンセプトは人材ビジネスとEMSの融合による「neo EMS」
基本コンセプトとして、日本、中国、アセアン諸国における人材ビジネス事業とEMS事業の融合によるトータルソリューションサービス「neo EMS」を掲げている。
製造アウトソーシング企業NO.1を目指すとともに、サービスの一段の高付加価値化に向けて、開発・設計といった製造業の上流プロセス分野の機能を強化している。単なる製造アウトソーサーから、キーテクノロジーを有して技術競争力を備えた企業グループへの変革を推進する戦略だ。
13年10月にはTKRが日立メディアエレクトロニクス(日立ME)の電源事業、トランス事業、車載チューナー事業、映像ボード事業を譲り受け、水沢工場(岩手県)を取得した。
14年10月にはパナソニックから車載向けを除く電源・電源関連部品事業(高圧電源、低圧電源、マグネットロール、トランス)を譲り受け、受け皿会社パワーサプライテクノロジー(PST)が操業を開始した。パナソニックから引き継いだ取引社数は海外111社および国内90社である。
日立MEおよびパナソニックからの事業譲受により、当社グループの電源事業は国内電源メーカー上位に匹敵する規模となった。電源に関する技術ノウハウの蓄積・融合を図り、電源関連事業を当社グループのキーテクノロジー分野として、LED照明、空気清浄器、エアコン、複写機向けなどに新規顧客開拓を推進し、EMS事業の高付加価値化も推進する方針だ。
14年10月には日本通運<9062>と、国内外の製造業務と物流業務を組み合わせた新たなワンストップサービスの構築に向けて業務提携した。製造業をターゲットに物流分野のサービスを拡充し、19年度に売上高300億円を目指すとしている。
■アジアへの展開も加速
中国での事業展開に関しては、14年3月施行の「中国労務派遣暫定規定」によって中国の労働政策が派遣から請負に転換する見込みとなり、14年5月には当社と子会社の北京中基衆合国際技術服務有限公司が、中国労務派遣専門委員会において発足した承欖(製造請負)研究プロジェクトに参画した。
16年3月の承欖(製造請負)法制化を目指しており、中国の製造業において製造請負の市場拡大が予想されるとともに、プロジェクトに参画している当社の競争優位性が期待されている。
アジアへの展開では14年9月に子会社nmsタイランドを設立し、カンボジアの人材エージェントと連携して製造業向けにタイ人とカンボジア人の派遣を開始した。14年10月には子会社nmsベトナムがNMSIRと事業提携してベトナムでの労働派遣ライセンスを取得した。
14年12月には子会社nmsタイランドがカンボジアの人材会社SOKおよびUNGの2社と、カンボジア人材のタイへの派遣事業について業務提携した。今後3年間でカンボジア人派遣在籍数1万人を目指すとしている。
■16年3月期第2四半期累計の利益予想を増額、通期も増額が濃厚
なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)116億30百万円、第2四半期(7月~9月)121億57百万円、第3四半期(10月~12月)108億15百万円、第4四半期(1月~3月)146億43百万円だった。営業利益は第1四半期87百万円、第2四半期1億49百万円、第3四半期1億10百万円の赤字、第4四半期3億67百万円だった。
第4四半期はパナソニックから譲り受けた一般電源事業の子会社PSTの新規連結(PS事業)が寄与した。また15年3月期の配当性向は8.1%だった。ROEは14年3月期比3.3ポイント低下して12.2%、自己資本比率は同6.6ポイント低下して17.1%となった。
今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は売上高が前年同期比33.4%増の155億12百万円、営業利益が同5.3倍の4億59百万円、経常利益が同15.6倍の4億66百万円、純利益が同59.7倍の2億51百万円だった。
前期第4四半期から開始したPS事業が寄与して大幅増収増益だった。EMS事業も国内では工作機械関連、海外ではマレーシアの白物家電関連などが好調に推移し、事業構造改革の効果も寄与して営業損益が大幅に改善した。
セグメント別に見ると、HS事業は売上高が同0.8%減の32億14百万円、営業利益(全社費用等調整前)が28百万円の赤字(前年同期は36百万円の赤字)だった。EMS事業は売上高が同3.6%減の80億91百万円、営業利益が同65.5%増の2億円だった。PS事業は売上高が42億07百万円、営業利益が2億84百万円だった。
8月7日に第2四半期累計(4月~9月)の利益予想を増額修正した。前回予想(5月15日公表)に対して、売上高は据え置いて前年同期比35.3%増の321億80百万円、営業利益は5億10百万円増額して同3.8倍の9億円、経常利益は5億80百万円増額して同5.8倍の8億50百万円、純利益は3億65百万円増額して同5.4倍の4億50百万円とした。
海外EMS事業において白物家電を中心に高収益案件の受注が増加したことに加えて、PS事業の製造コストおよび販管費が想定を下回るようだ。
通期の連結業績予想については前回予想(5月15日公表)を据え置いて、売上高が前期比36.8%増の673億80百万円、営業利益が同2.2倍の11億円、経常利益が同26.8%増の9億30百万円、純利益が同8.2%減の5億25百万円としている。配当予想も前回予想を据え置いて前期と同額の年間5円(期末一括)としている。予想配当性向は9.4%となる。
パナソニックから譲り受けたPS事業の通期連結で大幅増収、大幅営業増益見込みだ。通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.0%、営業利益が41.7%、経常利益が50.1%、純利益が47.8%と高水準である。不透明要素が多いとして通期会社予想を据え置いたが、第2四半期累計の利益増額に続いて、通期利益も増額が濃厚だろう。
■中期目標として総還元性向20%
中期目標数値として20年3月期の売上高1000億円、売上高営業利益率3.5%を掲げている。利益還元については中期目標として総還元性向20%を目指している。
国内HS事業では採用の確保が課題となるが、海外HS事業におけるアセアン諸国での製造派遣・製造請負事業の拡大、海外EMS事業における事業構造改革の効果や好採算案件の受注拡大、そしてPS事業の本格寄与で中期的に収益拡大が期待される。
■株価は利益確定売り一巡して8月高値目指す
株価の動きを見ると、第2四半期累計の増額修正を好感し、600円台でのモミ合いから上放れて8月18日の上場来高値1270円まで急伸した。その後は過熱感を強めて利益確定売りが優勢になったが、700円台から切り返しの動きを強めている。
8月28日の終値890円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS53円15銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は0.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS537円16銭で算出)は1.7倍近辺である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から切り返す動きだ。サポートラインを確認した形だ。利益確定売りが一巡し、16年3月期の収益改善基調を評価して8月高値を目指す展開だろう。