世界同時株安後のリカバリー期待相場では好需給要因銘柄ほどリバウンド優位性=浅妻昭治

編集長の視点

さすがに「絶好の買い場」だの、「バーゲンセール」だのの威勢のよい買い方のマーケット・コメントは聞こえてこなかった。下げ幅が半端でなかったから当然である。8月18日から26日取引時間中の安値までの6営業日続落で、日経平均株価は、2900円安となり、日々の下落幅も331円安、597円安、895円安、733円安と瞬間風速が大きく、26日に至っては、朝方の793円安から前引け間際に1000円高と大きく戻したものの、大引けは、733円安とほぼ往って来いの続急落で、1日に2度、セリング・クライマックスに見舞われたような乱高下を演じた。

この乱高下は、世界各国共通で、米国のニューヨーク・ダウ工業株30種平均も、似たりよったりに取引時間中に急上昇、急下落を繰り返すジェットコースター相場を演じた。中国人民銀行の人民元の実質切り下げが、世界第2位の経済大国・中国の景気減速懸念を強め、資源価格を急落させ、為替・株式市場を揺さぶった。

幸いなことにその後、前週末28日にかけて日経平均株価は、直近安値から1400円超幅の大幅反発をして急落幅の半値戻し目前となった。米国ニューヨーク・ダウ工業株30種平均も同様で、6日間で1870ドル余り下げ、前週末に掛けて2日間で1000ドル近く戻した。それでも日経平均株価の先行きについては、「半値戻しは全値戻し」などの手放しの楽観コメントは少数派に止まっているようである。9月16日から開催されるFOMC(公開市場委員会)でFRB(米連邦準備制度理事会)が、政策金利を引き上げるのか見送るのか見極めなければならない、中国の景気と株価が、その後、同国で相次いで発表された大手銀行への資金供給、貸し出しと預金の基準金利や預金準備率の引き下げなどの追加金融緩和策で持ち直しにつながるか時間を掛けて見守らなければならないなどと慎重である。

個人の投資家サイドでも、強気にはなり切れないフトコロ事情が働いていそうである。株価の乱高下で個々の銘柄の適正株価がわからなくなり、方向感を喪失、大袈裟にいえば株価感覚が、破壊されるまでに至った衝撃を与えたからだ。さらにショック安相場のセオリー通りにリスク回避の手仕舞い売りを優先したところ、今度は、反発場面では売却価格を上回って急伸、相場に振るい落とされたとの敗北感が強まり、再度の買い参戦は、高値でハシゴを外されるのではないかと疑心暗鬼が先に立ち前向きにはなれないとも推測される。

今週は「売り」、「買い」、「休み」のいずれが正解か結論は出難いと想定するが、それでも敢えて「買い」にトライする投資家は、よほどしっかりした買い材料をテコにしなくてならないのは当然だ。この買い手掛かりに一角に浮上するのは、需給関係である。この需給要因で急落中にまず目立ったのが、自己株式取得を発表した銘柄の逆行高である。自己集計で漏れがあるかもしれないが、8月17日から前週末28日まで全市場で自己株式取得を発表した銘柄は、36銘柄を数え、うち過半の19銘柄が、スポット的な自己株式立会外買付取引だったが、例えばテクマトリックス<3762>(東1)が、翌日の立会外取引実施日にストップ高したのが代表例だ。また逆需給要因では、新株式発行・株式売出しを発表して株価が44%も急落したノジマ<7419>(JQS)が、同ファイナンスの中止を発表して今度はストップ高を交えて急反発し、急落幅の半値戻しをクリアするケースも出ている。

信用取引では、週末28日の空売り比率が36.1%に達しており、売り方と買い方の攻防が注目されるが、これは今後の全般相場の先行きも絡み、売り方ペースか買い方有利かの決着は、なお時間が掛かりそうだ。そこで自己株式取得と同様に即効性のある好需給銘柄として注目したいのが、株価指数への新規組み入れで需給好転が期待できる銘柄群である。MSCI(モルガン・スタンレー・インターナショナル)株価指数の構成銘柄入れ替えに関係する3銘柄と、直近に東証第1部に市場変更されたばかりの4銘柄である。(本紙編集長・浅妻昭治)

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