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綿半ホールディングスは調整一巡、24年3月期1Q減収減益だが通期は増収増益予想
- 2023/8/14 10:58
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
綿半ホールディングス<3199>(東証プライム)は、経営方針に「地域に寄り添い、地域と共に新しい価値を創造する」を掲げ、ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとして戸建木造住宅分野にも展開する建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。24年3月期第1四半期は前期に大幅伸長した建築事業の反動などにより減収減益だったが、通期の増収増益予想を据え置いている。各事業とも概ね順調に推移する見込みだ。小売事業の23年7月の既存店売上は前年比104.8%と順調だった。積極的な事業展開により通期ベースでの収益拡大基調に変化はないだろう。株価は反発力の鈍い展開だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。
■小売事業、建設事業、貿易事業を展開
ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとして戸建木造住宅分野にも展開する建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。
23年3月期は小売事業の売上高が22年3月期比1.4%増の776億11百万円で営業利益(全社費用等調整前)が58.0%減の7億62百万円、建設事業の売上高が55.8%増の496億02百万円で営業利益が122.7%増の18億88百万円、貿易事業の売上高が3.2%増の60億01百万円で営業利益が17.4%減の5億76百万円、その他(不動産事業など)の売上高が284.9%増の10億83百万円で営業利益が17.2%増の1億68百万円だった。
■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進
小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。
基本戦略として、M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、子会社の綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革、ネット通販の拡大などを推進している。スーパーセンターは10万点を超える豊富な品揃えに加えて、生鮮食品を加えることで主婦層を取り込み、平日・土日の平準化を図っていることが特徴である。
22年8月には綿半スーパーセンター上田店(長野県上田市)をオープンした。食品スーパー、ホームセンター、ドラッグストアの3業態を一つにまとめたグループ最大級の店舗である。22年9月には、長野市中心部・行政庁舎にも近い権藤地区に綿半スーパーセンター権堂店(長野県長野市権堂町)をオープンした。中心市街地型店舗開発を推進しており、生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗としての出店である。
周辺領域への展開では、22年7月に綿半パートナーズが、ネットショップ立ち上げに必要な機能をワンパッケージで提供する「PayTouch」をオープンした。23年2月には綿半ドットコムが、創業25年で年間利用者2万人・年間買取100万品を誇る買取専門店「買取けんさく君」の四谷営業所をオープンした。23年4月には長野県でドラッグストアを展開する綿半ドラッグが通販サイトをオープンした。
M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネット(現:綿半ドットコム)を子会社化、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店(現:綿半三原商店)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県)を子会社化、21年3月に組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県)を子会社化、21年11月にヴィンテージスタイルの家具・インテリアショップ「藤越 FUGGICOSI」を展開する藤越(静岡県)を子会社化した。
22年4月には建物管理・不動産売買のAIC(東京都新宿区)を子会社化した。また藤越とリグナを合併(新社名リグナ)した。家具・インテリアの仕入機能やネット通販のノウハウを融合し、家具販売事業の効率化と収益性向上を図る。22年7月には中村ファームを子会社化(綿半ファームへ商号変更)して養豚事業に参入した。
23年3月には子会社の綿半ホームエイドを通じて小諸動物病院の全株式を取得した。綿半ドラッグと連携した動物用医薬品の取り扱い、犬猫療法食等の企画販売、店舗におけるワクチン投与やトリミング事業の展開など、幅広くペット市場に参入する方針としている。またSMBCコンシューマーファイナンスと業務提携した。綿半パートナーズが運営するネットショップ運営サービス「PayTouch」において、SMBCコンシューマーファイナンスが展開するローンが申込できるようになった。
小売事業の月次売上(速報値)を見ると、23年7月は全店が108.6%、既存店が104.8%(2ヶ月連続の前年比プラス)だった。エアコンなどの季節商品が好調だった。なお既存店の客単価は21年12月から20ヶ月連続前年比プラスとなっている。また23年4月~7月累計は全店が105.6%、既存店が102.0%となった。
■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み、木造住宅も拡大
建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。長尺屋根工事は、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行う「WKカバー工法」で特許を取得している。自走式立体駐車場工事は、柱が少なく利用者が使いやすい「stage W」など、多数の国土交通省認定を有して国内トップシェアを誇っている。
19年8月には戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(静岡県)を子会社化、21年8月には戸建木造住宅販売・加盟店運営の夢ハウス(新潟県)を子会社化した。木造住宅分野を第4の柱として注力する。
22年12月には、自然素材・天然無垢材で造る木造住宅の新ブランド「cotton1/2」(木造軸組パネル工法)を発表した。子会社の綿半林業の生産ラインと品質、および子会社のサイエンスホームの合理化工法と販売戦略を合わせて、第3の住宅グループとして23年1月より始動した。将来的には年間1万2000棟という目標を掲げ、木造住宅のニュースタンダードを目指すとしている。23年5月には木造システム建築「PREST WOOD」の販売を開始した。
23年6月には綿半ソリューションズが埼玉県川島町および東急不動産と、川島町における持続可能なまちづくりに係る協定書締結を発表した。再生可能エネルギー導入拡大を推進する。また、三井ショッピングパークららぽーと門真、三井アウトレットパーク大阪門真(12年4月グランドオープン)に、綿半ソリューションズの自走式立体駐車場「stage W」が採用され、竣工したと発表している。
23年7月には木造住宅「夢ハウス」のブランドロゴを刷新して新CMの放映を開始した。また綿半ソリューションズが超軽量太陽光システムLIGHTON SOLARの販売を開始した。
8月9日には、木造住宅の柱・梁・床・壁材など総合木質建材メーカーである征矢野建材(8月9日付で民事再生手続きを申し立て)へのスポンサー支援に関する契約を締結した。戸建木造住宅FC事業とのシナジーなどにより、木造建築事業の拡大を推進する。なお民事再生計画の認可決定後に、民事再生に基づく100%減資と征矢野建材に対する新たな出資を行う予定としている。
■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを販売
貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。
ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。
21年12月には、海外市場への販売拡大に向けてAlibaba.comに自社サイトを掲載し、自社原料商品の取引を開始した。22年7月には、100%天然植物由来の動物飼料添加物「Nutrafito Plus」の販売を開始した。
23年1月には綿半トレーディングが、果実・野菜等の食品輸入を展開するカサナチュラルの株式20%取得して資本業務提携した。天然原料の新規開拓・調達を加速し、グループ小売業店舗で取り扱う食品の拡充にも取り組む方針としている。
■中期経営計画
23年5月に新・中期経営計画(24年3月期~27年3月期)を策定した。物価上昇・電気代高騰など外部環境の変化に対応し、前・中期経営計画(23年3月期~25年3月期)を見直した。経営方針は引き続き「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」として、目標数値は最終年度27年3月期の売上高1500億円、経常利益45億円、経常利益率3.0%としている。
地域との繋がりを大切にしながら、地域の発展に尽くすとともに、目標数値達成に向けて諸施策を実践し、企業価値向上を図るとしている。なお23年5月には、綿半グループ従業員持株会の奨励金付与率引き上げを発表した。また、従業員の生活支援とモチベーション向上を目的として、物価支援一時金の支給(23年3月に5万円支給)に加え、最大12%の賃上げ(持株会の奨励金付与率引き上げを含む)を決定した。
■24年3月期1Q減収減益だが、通期増収増益予想を据え置き
24年3月期連結業績予想は売上高が23年3月期比2.8%増の1380億円、営業利益が13.4%増の27億24百万円、経常利益が2.0%増の31億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が11.9%増の18億50百万円としている。配当予想は23年3月期比1円増配の23円(期末一括)としている。9期連続増配予想で、予想配当性向は24.7%となる。
第1四半期は、売上高が前年同期比3.9%減の297億62百万円、営業利益が51.6%減の2億40百万円、経常利益が39.4%減の3億92百万円、親会社株主帰属四半期純利益が31.2%減の2億28百万円だった。前期に大幅伸長した建築事業の反動などにより減収減益だった。
小売事業は売上高が3.9%増の199億56百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が29.2%減の3億58百万円だった。売上面は前期第2四半期にオープンした2店舗(綿半スーパーセンター上田店、綿半スーパーセンター権堂店)も寄与して増収だが、利益面は店舗改装費用、電力料金高止まり、人件費増加などの影響で減益だった。
建設事業は売上高が24.9%減の79億54百万円、利益が2億18百万円の損失(前年同期は1億84百万円の利益)だった。前期に大幅伸長した反動で大幅減収減益だった。
貿易事業は売上高が50.1%増の16億48百万円、利益が567.2%増の2億91百万円だった。前期との納入時期のズレの影響で大幅増収増益だった。その他(不動産事業など)は売上高が174.0%増の2億03百万円、利益が35.4%増の49百万円だった。
通期連結業績予想は据え置いている。セグメント別の計画は、小売事業の売上高が3.6%増の804億35百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が25.9%増の9億60百万円、建設事業の売上高が0.4%増の498億円で利益が0.1%増の18億90百万円、貿易事業の売上高が2.3%増の61億37百万円で利益が27.3%増の7億34百万円としている。
各事業とも概ね堅調に推移する見込みだ。小売事業は既存店売上高103%を見込み、利益面では生鮮・PB商品の構成比上昇も寄与する。建設事業は前期の大幅増収増益の反動を考慮して横ばい見込みとしている。貿易事業は原材料コスト上昇の価格転嫁の進展や、研究開発効果による利益率上昇を見込んでいる。
重点施策として、小売事業では店舗改装・新業態開発(ペット×ドラッグ「綿半ウエルネスエアイフガーデン」開発、調剤薬局導入)の推進、流通網拡大(飯田物流センターの本格稼働)、オリジナル商品開発・SPA化加速(24年3月期目標1.4万SKU、売上構成比15.0%)に取り組む。建設事業では地場産木材加工・流通網の構築、木を使った商品開発(木造システム建築「PREST WOOD」の販売開始、非住宅木造建築の開発)の推進、鉄骨分野の海外ネットワーク構築(海外ファブリケーターとの連携による大型物件対応)に取り組む。貿易事業では食品分野への進出(新たな天然原料の開拓)、肥料・飼料分野の拡大(小売事業との連携による6次産業化推進)に取り組む。
なお第2四半期累計の計画については、売上高が前年同期比2.3%増の657億63百万円、営業利益が20.6%減の8億95百万円、経常利益が26.9%減の10億40百万円、親会社株主帰属四半期純利益が10.5%減の6億30百万円としている。期初時点で全体として下期偏重の計画としている。
第1四半期は前期に大幅伸長した建築事業の反動などにより減収減益だったが、通期ベースでは各事業とも概ね順調に推移する見込みだ。小売事業の23年7月の既存店売上は前年比104.8%と順調だった。また建設事業の受注・売上とも足元では計画どおりの進捗としている。積極的な事業展開により通期ベースでの収益拡大基調に変化はないだろう。
■株主優待制度は毎年9月末の継続保有株主対象
株主優待制度は毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続的に保有している株主を対象として、信州特産品や綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなどを贈呈(100株以上継続保有は1点、300株以上継続保有は2点を選択)している。なお22年8月に株主優待制度の変更(拡充)を発表し、選択優待品を従来の13点から14点に拡充(詳細は会社HP参照)した。22年9月末対象から実施した。
■株価は調整一巡
株価は反発力の鈍い展開だが、一方では大きく下押す動きも見られず、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。8月10日の終値は1358円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS92円99銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の23円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1068円23銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約271億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)