【どう見るこの相場】米国の金融引き締め策とチャイナ・リスクで四面楚歌、半導体製造装置株と増配銘柄が光る

■トリプル安への反旗は中間期末に向けトリプル権利取りの回り道投資も一考余地

 まるで『風とともに去りぬ』のタイトルのようである。決算発表の終了に合わせるかのように、業績相場期待も株高そのものも、アッという間に消失してしまった。残されているのは、米国の10年物国債利回りの10カ月ぶりの水準への上昇、米国銀行の格付け格下げ、「悪い円安」と揃った債券・株式・為替のトリプル安で、中国の景気不安や中国恒久集団の破産法適用申請の「チャイナ・リスク」まで懸念されている。

 先行きも、来週24日から26日に開催されるジャクソンホール会議でのパウエルFRB(米連邦準備制度会議)議長の講演内容次第とするのが、市場コンセンサスとなっているようである。パウエル議長が、講演で金融引き締め策長期化のタカ派か、政策金利引き上げの打ち止め示唆のハト派かのいずれをアピールするかに関心が集まっている。昨2022年8月26日の同会議の講演では、インフレ抑制の金融引き締め策の継続を訴え、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は1008ドル安と急落し、翌週週明け29日の日経平均株価は、762円安と急反落しており、この再現も警戒されている。

 四面楚歌、五里霧中の相場環境下、リスク・オフに傾き勝ちで、諦めの白旗を掲げて取り損ねた夏休めを遅く取る投資家も少なくないだろう。ただまったく見込みがないわけではないようでもある。その一つは、例えばエスケーエレクトロニクス<6677>(東証スタンダード)だ。同社株は、今年8月14日に今9月期業績の再上方修正と増配を発表、配当は期初予想の33円から一気に144円(前期実績64円)に連続増配し、株価は2日間のストップ高を交え前週末18日の年初来高値まで約8割高した。年間配当利回り5.29%は、前週末現在の全市場ベースの高配当利回りランキングの第41位に急浮上したが、それでもまだPERは9倍台、PBRは0.9倍と割安である。逆風下でインカムゲインとキャピタルゲインが目出度く両立した稀有なケースとなった。

 今回の決算発表では、業績を上方修正した銘柄のうち目の子で4分の1程度は、合わせて増配も発表した印象がある。エスケーエレクトロニクスは、9月期決算会社だが、3月期決算会社も含めて9月の中間期末まであと1カ月強、一段の増配に踏み切る銘柄もないとはいえず、第2のエスケーエレクトロニクスへの期待を高め、インカムゲインや配当異動が注目のカタリスト(株価材料)になる可能性も示唆する。

 もう一つの期待材料は、前週末18日に半導体製造装置株の軒並み高である。これは、米国の半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズの4~6月期決算や8~10月期業績見通しが、市場予想を上回り株価が上昇したことにツレ高したものだが、このうちアドバンテスト<6857>(東証プライム)とSCREENホールディングス<7735>(東証プライム)が、この9月末割り当てで株式分割を予定している。両社株は、業績が伸び悩みSCREENは、今期第2四半期業績を下方修正したが、株価はこの株式分割を手掛かりに意外と下げ渋ってきた。

 しかもこの半導体製造装置株は、AI(人工知能)や自動運転向けで世界トップのエヌビディアが、今週央の23日に5~7月期業績を発表予定にある。きょう21日付けの日本経済新聞では、半導体の世界主要10社の2023年度の設備投資は、前年度比16%減と4年ぶりに減少すると報道されているが、エヌビディアの決算内容や業績見通しが、アプライド・マテリアルズと同様に市場予想を上回るようなら、再度のツレ高も有力となる。

 そこで今週の当特集では、9月中間期末を前にインカムゲイン狙いの高配当利回り株の配当権利取りをリスクを軽減しつつリターンも実現できる有力選択肢として取り上げることにした。これに加えて増配と自己株式取得を並行実施し総還元性向の向上に意欲的な銘柄の配当権利取り、株式分割株の権利取りと3本柱とすれば、債券安、株安、円安のトリプル安をカバーするトリプル権利取りとなる。白旗を掲げる前に取り敢えず反旗を翻し、権利取りから権利落ち後の秋相場へつなぐ活路を拓く回り道投資ににトライするのも一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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