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ミロク情報サービスは目先的な売り一巡、24年3月期1Q小幅減益だが通期増益予想
- 2023/8/21 09:36
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ミロク情報サービス<9928>(東証プライム)は財務・会計ソフトをベースとして、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新規事業領域の統合型DXプラットフォームの構築を目指している。8月1日には、新規事業として取り組んでいる統合型DXプラットフォーム事業において、中所企業向けDXプラットフォームサービス「Hirameki7」が、サービス開始から1年で累計導入社数が1万社を突破したと発表している。24年3月期第1四半期は先行投資となる新卒入社社員の積極採用、ベースアップや昇給による人件費の増加、広告宣伝・販売促進費の増加などで小幅減益だったが、通期は増益予想としている。不透明感、サブスクリプション型への移行スピード加速、戦略投資などを考慮して小幅増益にとどまる予想としているが保守的な印象が強い。会社予想に上振れ余地があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は第1四半期業績を嫌気する形で戻り高値圏から急反落の形となったが、目先的な売りが一巡して出直りを期待したい。
■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス
会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。
会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業の支援にも繋がるトータルソリューションを強みとして、全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有している。中堅・中小企業向けERP「MJSLINKシリーズ」は、矢野経済研究所「2022ERP市場の実態と展望」における年商50億円未満の企業向け財務会計管理ソリューションのライセンス売上高シェアで09年から13年連続売上高シェアNo.1、およびデロイト トーマツ ミック経済研究所「基幹業務パッケージソフトの市場展望2021年度版」の中規模企業向けERPシステム部門で売上高シェアNo.1となり、ダブルでNo.1を獲得している。
21年3月に中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」提供開始、22年4月に中堅企業向け新ERPシステム「Galileopt DX」提供開始、22年6月にクラウド型電子契約サービス「MJS e-ドキュメントCloudサイン」提供開始、22年9月に新税務システム「MJS税務DX」提供開始、23年1月に「MJSLINK DX」においてクラウド型の新機能「MJS DX伝票入力」提供開始した。
23年3月期の品目別売上高は、フロー型のシステム導入契約売上高が22年3月期比16.8%増の236億46百万円(内訳は、ハードウェア売上高が26.7%増の39億39百万円、ソフトウェア売上高が11.2%増の138億02百万円、ユースウェア売上高が25.4%増の59億04百万円)で、ストック型のサービス収入が9.6%増の142億55百万円(内訳は、会計事務所向け総合保守サービスTVSが0.6%増の25億34百万円、ソフトウェア使用料収入が41.6%増の39億34百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が1.6%増の56億84百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が0.9%増の15億18百万円、サプライ・オフィス用品が3.9%減の5億82百万円)だった。その他は6.1%増の35億59百万円だった。
なお、23年3月期のシステム導入契約売上高の販売先別売上高構成比は、企業向けが55%、会計事務所向けが28%、その他が17%だった。企業向けに占める新規企業比率は27.4%だった。主力ERP製品のサブスク提供数は93.6%増の2059件、ARPU(23年3月度の1顧客当たり平均値)は768千円、サブスク比率(通期金額ベース)は18.0%、契約継続率は99.1%だった。また、主力ERP製品のサブスク・IaaS提供のARR(各四半期末のソフト使用料課金収入の12倍)は、22年3月7億01百万円、22年6月9億10百万円、22年9月11億72百万円、22年12月13億87百万円、23年3月15億85百万円と拡大基調である。
■M&A・アライアンスも積極活用
21年1月に信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画、ゼロ知識証明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合し、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。21年6月には税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携、21年9月にはアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社と資本業務提携した。
22年2月には子会社DX Tokyoを設立した。全国の中小企業を対象にIT専門家シェアリング/サブスク事業を展開する。22年9月には顧客管理・営業支援システム開発・販売のBizMagicを子会社化した。
■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進
中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、経営目標値として26年3月期売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げている。内訳は、単体ベース(ERP事業)が売上高360億円で経常利益75億円、グループ会社が売上高150億円で経常利益25億円、グループ新規事業(DX事業)が売上高50億円で経常利益25億円としている。
基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、新規事業領域の統合型DXプラットフォーム戦略、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進している。
単体ベース(ERP事業)では、クラウドサービスの拡充とサブスクリプション型収益モデルの比率を高めて、安定的な収益基盤の更なる強化を目指すとともに、価値創造を最大化する総合的なソリューションを展開する。グループ会社では、コンサルティング&技術力の発揮と、グループ再編による生産性の向上を目指す。
グループ新規事業(DX事業)では、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームを構築し、新たなコミュニケーション&クラウドサービスを展開する。グループとして提供する4つのDXプラットフォーム(マーケティングDX、ビジネスDX、オペレーティングDX、ファイナンスDX)をプラットフォーム上で同時に実現することで、デジタル化時代の中小企業・小規模事業者が抱える4つの経営課題(新規顧客開拓および顧客満足度・ロイヤルティ向上、フロントオフィス系のBtoB取引の効率化、バックオフィス系の管理業務の効率化、資金管理・資金調達)を解決するソリューションを目指す戦略だ。
23年7月には、子会社のMJS Finance & Technologyが営むSPALO事業(音声AIを用いたドキュメント作成サービス「SPALO」開発・販売)を承継し、同社のDX事業に組み込んだ。
8月1日には、新規事業として取り組んでいる統合型DXプラットフォーム事業において、子会社のトライベックが運営する中所企業向けDXプラットフォームサービス「Hirameki7」が、22年7月のサービス開始から1年で累計導入社数が1万社を突破したと発表している。
■サステナビリティ経営を推進
22年5月に、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、サステナビリティ基本方針の策定、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定、サステナビリティ委員会の設置を発表した。サステナビリティ基本方針は、DX推進による地球環境への貢献、会計事務所と中小企業の経営革新や成長・発展を支援、多様なプロフェッショナル人材が活躍する働きがいのある職場づくり、健全成長のためのガバナンスの強化としている。
22年12月には、人的投資強化の一環として一般職正社員の基本給のベースアップ、通常賞与(夏季・冬季)の増額等を行った結果、23年3月期の一般職正社員の平均年収は9.6%増額となったとリリースしている。また一般職正社員への冬季賞与支給に合わせて、管理職正社員ならびに非正規従業員への臨時手当の支給も実施した。
23年2月にはJリーグ「東京ヴェルディ」およびWEリーグ「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」と、2023年シーズンもCSRパートナー(スポンサー)契約を締結した。CSR活動の一環として2008年シーズンから「東京ヴェルディ」のスポンサー契約を継続して今年で16年目となる。2011年からは「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」ともスポンサー契約を締結している。
■社会全体のDXを推進
なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表している。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げている。
20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。
22年9月には、国際規格「Peppol」に準拠した電子インボイスの送受信、ならびにインボイスの電子化に対応するデジタルインボイス送受信クラウドサービス「MJS e―Invoice」を提供開始した。
23年6月には、デジタルインボイス送受信クラウドサービス「MJS e―Invoice」とROBOT PAYMENTの請求・債権管理クラウド「請求管理ロボ」について、デジタルインボイスデータの送受信テストが完了した。
■24年3月期1Q小幅減益だが通期は増益予想、さらに上振れ余地
24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比0.3%増の416億円、営業利益が0.3%増の61億円、経常利益が6.2%増の62億円、親会社株主帰属当期純利益が8.8%増の41億円としている。配当予想は23年3月期と同額の45円(期末一括)としている。予想配当性向は32.8%となる。
品目別売上高の計画は、システム導入契約売上高が8.2%減の217億10百万円(ハードウェアが25.4%減の29億39百万円、ソフトウェアが9.6%減の124億80百万円、ユースウェアが6.5%増の62億90百万円)で、サービス収入が9.4%増の155億89百万円(ソフトウェア使用料収入が33.7%増の52億62百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が1.6%増の57億74百万円、会計事務所向け総合保守サービスTVSが0.3%増の25億42百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が5.5%減の14億34百万円、サプライ・オフィス用品が1.2%減の5億75百万円)、その他が20.8%増の43億円としている。
ソフトウェア使用料収入(サブスク契約におけるソフト保守料を含む)は、売り切り型からサブスク型への移行により高成長を見込んでいる。主力ERP製品のサブスク比率は25%(23年3月期は18%)の計画としている。ハードウェアは、半導体不足による納期遅延分が23年3月期に売上計上された反動減を見込んでいる。
第1四半期は、売上高が前年同期比7.9%増の104億84百万円、営業利益が4.9%減の14億30百万円、経常利益が5.1%減の14億55百万円、親会社株主帰属四半期純利益が3.6%減の9億30百万円だった。
先行投資となる新卒入社社員の積極採用、ベースアップや昇給による人件費の増加、広告宣伝・販売促進費の増加などで小幅減益だった。ただし売上面は順調だった。会計事務所向けおよび中小企業向けの各種業務システムが好調に推移し、中堅・中小企業向けERP製品のサブスクリプション型での提供によりソフトウェア使用料収入が大幅に伸長した。
品目別売上高は、システム導入契約売上高が7.6%増の59億02百万円(内訳はハードウェアが15.8%増の9億63百万円、ソフトウェアが4.1%増の33億84百万円、ユースウェアが10.8%増の15億54百万円)で、サービス収入が10.6%増の38億09百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスのTVSが0.8%増の6億35百万円、ソフトウェア使用料収入が40.9%増の12億20百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が1.5%増の14億50百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が2.4%増の3億84百万円、サプライ・オフィス用品が17.9%減の1億18百万円)だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期の進捗率は売上高が25%、営業利益が23%、経常利益が23%、親会社株主帰属当期純利益が23%と概ね順調である。24年3月期は不透明感、サブスクリプション型への移行スピード加速、戦略投資による売上原価・販管費の増加(新製品発売によるソフトウェア資産償却負担増、新卒新入社員の積極採用など)などを考慮して、小幅な営業・経常増益にとどまる予想としている。ただし保守的な印象が強い。会社予想に上振れ余地があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は目先的な売り一巡
株価は第1四半期業績を嫌気する形で戻り高値圏から急反落の形となったが、目先的な売りが一巡して出直りを期待したい。8月18日の終値は1502円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS137円09銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の45円で算出)は約3.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS813円13銭で算出)は約1.8倍、そして時価総額は約523億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)