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マルマエは下値切り上げ、24年8月期収益回復期待
- 2023/8/25 09:24
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マルマエ<6264>(東証プライム)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工を展開し、成長戦略として消耗品の拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営の推進などを推進している。23年8月期は大幅減収減益予想だが、市場環境悪化への対応策として半導体分野の新規顧客からの認証取得を実現し、新規受注が24年8月期の売上高に本格寄与する見込みとしている。またFPD分野では、市場環境が停滞するなかでも新型G8装置向け部品の受注に成功している。積極的な事業展開で24年8月期の収益回復を期待したい。株価は上値が重くモミ合う形だが、徐々に下値を切り上げている。調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。なお10月6日に23年8月期決算発表を予定している。
■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工を展開
半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工、および電子ビーム溶接(EBW)を展開している。
22年8月期の分野別受注高は半導体分野が44.9%増の70億27百万円、FPD分野が25.9%増の14億61百万円、その他分野が3.0倍の7億円、分野別売上高は半導体分野が51.2%増の63億82百万円、FPD分野が84.0%増の15億42百万円、その他分野が2.6倍%増の4億45百万円だった。半導体分野は良好な市場環境を背景に過去最高水準だった。FPD分野は市場が横ばいだったがシェア拡大が牽引した。その他分野は太陽電池製造装置部品の受注が増加した。
半導体・FPD製造装置の真空パーツを作るノウハウ、同業他社に比べて高い生産性・低コスト、急変動する半導体・FPD市場に柔軟に対応できる設備力、ワンストップ受注に対応する多工程生産能力などを強みとしている。
また、作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。
■シェア拡大やESG経営を推進
長期ビジョンとして「幅広い分野の総合メーカーを支える部品加工のリーディングカンパニー」を目指し、中期事業計画「Innovation2025」では、成長戦略として消耗品拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営の推進、目標数値として最終年度25年8月期売上高140億円、営業利益42億円、資産ベースROIC23%以上、負債ベースROIC19%以上、配当性向35%以上、年間最低配当額20円(最終損益が赤字となる場合は見直し)を掲げている。設備投資計画(CFベース)は、増産投資およびカーボンニュートラルに向けた太陽光発電投資を中心に23年8月期20億円、24年8月期20億円、25年8月期12億円としている。
売上拡大戦略として、22年8月期実績見込(全社売上高83億円)に対して、半導体分野の既存顧客からの受注拡大で+29.5億円、新規顧客からの量産受注拡大で+20億円、FPD分野・その他分野で+7.5億円を目指す。半導体分野は引き続き需要が拡大基調である。FPD分野は23年末までテレビ向け液晶G10.5関連の設備投資が停滞する見込みだが、EBW活用によるシェア拡大や有機ELのパネル大型化が寄与する見込みだ。なお消耗品の売上構成比は22年8月期実績で半導体分野が65.6%、FPD分野が19.7%となっている。更なる消耗品受注の拡大で受注安定化を狙う方針だ。
また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。自社の再生可能エネルギー活用によってCO2削減を推進し、2030年に50%削減、2050年に100%削減を目指す。さらに人材力最大化に向けて、6つの向上施策(多様化の推進、人材戦略の推進、誰もが働ける職場環境の整備、人事制度改善、育成プラン作成、育成計画推進)を推進する方針だ。21年12月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、22年3月には統合報告書を発表している。
■23年8月期大幅減収減益予想だが24年8月期収益回復期待
23年8月期の業績(非連結)予想(6月30日付で下方修正)は、売上高が22年8月期比20.8%減の68億03百万円、営業利益が69.1%減の7億30百万円、経常利益が72.3%減の6億55百万円、当期純利益が66.3%減の6億12百万円としている。配当予想は22年8月期比12円減配の36円(第2四半期末18円、期末18円)としている。予想配当性向は74.3%となる。
従来予想に対して売上高を18億97百万円、営業利益を9億50百万円、経常利益を10億05百万円、当期純利益を5億88百万円、それぞれ下方修正した。半導体分野における市場環境悪化が長引き、デバイスの停滞以上に装置部品の在庫調整の影響が想定以上となり、第4四半期の半導体分野の売上高が大幅に減少する見込みとなった。修正後の通期分野別売上高の計画は半導体分野が29.4%減の45億05百万円、FPD分野が50.6%減の7億61百万円、その他分野が207.6%増の13億69百万円としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比11.7%減の53億81百万円、営業利益が55.7%減の7億71百万円、経常利益が58.0%減の7億32百万円、四半期純利益が59.2%減の5億09百万円だった。市場環境の悪化で在庫調整の影響が想定以上だった。
受注高は全社合計が44.0%減の40億45百万円で、分野別内訳は半導体分野が48.0%減の27億51百万円、FPD分野が66.8%減の4億23百万円、その他分野が32.9%増の8億70百万円だった。分野別の売上高は半導体分野が14.5%減の38億79百万円、FPD分野が49.1%減の5億98百万円、その他分野が258.9%増の7億61百万円だった。
半導体分野は市場環境悪化で在庫調整の影響が想定以上だった。FPD分野も市場停滞の影響で減少した。その他分野は太陽電池製造装置部品の好調で大幅伸長した。利益面は売上減少と稼働率低下、受注損失引当金と棚卸評価損の増加、減価償却費の増加などで大幅減益だった。
なお四半期別にみると、第1四半期は売上高が24億87百万円で営業利益が6億68百万円、第2四半期は売上高が17億53百万円で営業利益が2億59百万円、第3四半期は売上高が11億41百万円で営業利益が1億56百万円の損失だった。第3四半期は大幅に落ち込んだ。
23年8月期は下方修正して大幅減収減益見込みとなったが、市場環境悪化への対応策として半導体分野の新規顧客からの認証取得を実現し、新規受注が24年8月期の売上高に本格寄与する見込みとしている。またFPD分野では、市場環境が停滞するなかでも新型G8装置向け部品の受注に成功している。受注好調な太陽電池製造装置部品については、顧客装置メーカーの組立能力補強のため出水事業所内に新たな組立工場を新設した。積極的な事業展開で24年8月期の収益回復を期待したい。
■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上継続保有株主対象
株主優待制度は、毎年8月末日現在で6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象として、クオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は下値切り上げ
株価は上値が重くモミ合う形だが、徐々に下値を切り上げている。調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。8月24日の終値は1815円、今期予想PER(会社予想のEPS48円43銭で算出)は約37倍、今期予想配当利回り(会社予想の36円で算出)は約2.0%、前期実績PBR(前期実績のBPS578円06銭で算出)は約3.1倍、そして時価総額は約237億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)