- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- マーケットエンタープライズは目先的な売り一巡して反発の動き、24年6月期大幅増収増益予想
マーケットエンタープライズは目先的な売り一巡して反発の動き、24年6月期大幅増収増益予想
- 2023/8/29 09:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は、持続可能な社会を実現する最適化商社を目指してネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。新3ヶ年中期経営計画では、主に個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。この中期経営計画に基づき24年6月期は大幅増収増益予想としている。第1四半期は新規拠点開発に伴って費用が先行するが、通期ベースでは全セグメントが順調に拡大する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は決算発表を機に急落の形となったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。
■持続可能な社会を実現する最適化商社
持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。
23年6月期セグメント別売上構成比(調整前)はネット型リユース事業55%、メディア事業5%、モバイル通信事業40%、営業利益構成比(調整前)はネット型リユース事業27%、メディア事業36%、モバイル通信事業37%だった。23年6月期は全事業とも大幅増益だった。
なお、大株主だったYJ1号投資事業組合から信託期間満了により保有株式売却の意向が寄せられたことに伴い、市場売却による株価形成への影響を避けるため、22年9月14日付でSBI証券と差金決済型自社株価先渡取引に係る契約を締結した。そして22年9月15日付の立会外終値取引(ToSTNeT―2)によって、YJ1号投資事業組合が保有していた同社株式40万株をSBI証券が取得した。今後の会計上の取り扱いとしては、各四半期末時点で時価評価を実施し、前四半期末との差額を営業外収益または費用に計上する。
■「高く売れるドットコム」と「おいくら」
ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。
20年7月には「高く売れるドットコム」と、19年2月に事業を譲り受けた日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」のシステム連携・送客を開始した。21年6月には内閣府が運営する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に参画した。なお買取・物流拠点のリユースセンターについては、23年9月に大阪市内と広島市内に新拠点を開設し、全国16拠点となる。
地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進しており、21年6月には北海道絵恵庭市と「おいくら」を活用した持続可能な循環型社会に関する連携協定を締結、21年7月には三重県いなべ市と持続可能な循環型社会に関する包括協定を締結、22年4月には川崎市および東京都墨田区における粗大ごみリユース事業として「おいくら」が本格導入された。22年7月には埼玉県川越市と、地域社会における課題解決を目的とした連携による楽器寄附ふるさと納税の取り組みを開始した。
リユースプラットフォーム「おいくら」を導入した不用品リユース事業は、22年10月に東京都東村山市、兵庫県神戸市、茨城県ひたちなか市、埼玉県坂戸市、大阪府大阪市、22年11月に兵庫県西宮市、埼玉県所沢市、静岡県藤枝市、22年12月に東京都渋谷区、東京都北区、北海道倶知安町、福島県福島市、23年1月に広島県広島市、福岡県筑後市(実証実験)、岡山県岡山市、大阪府豊中市、23年2月に埼玉県東松山市、埼玉県吉見町、埼玉県鶴ヶ島市、神奈川県座間市、23年3月に徳島県吉野川市、三重県桑名市、神奈川県横浜市、神奈川県愛川町、静岡県浜松市、大阪府藤井寺市、千葉県船橋市、大阪府松原市、埼玉県狭山市、23年4月に大阪府茨木市、愛知県一宮市、千葉県白井市、香川県三木町、茨城県つくばみらい市、23年5月に大阪府東大阪市、愛知県名古屋市、埼玉県飯能市、23年6月には徳島県徳島市、大阪府門真市、茨城県守谷市、山梨県上野原市、埼玉県富士見市、埼玉県新座市、京都府長岡京市、群馬県桐生市、大阪府吹田市、23年7月には和歌山県かつらぎ町、福井県若桜町、山口県下松市、岐阜県羽島市、京都市、埼玉県神川町、23年8月には茨城県常総市、大阪府岬町で導入された。
■中古農機具
中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。
21年10月にマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設、21年11月に北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始し、中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進している。22年4月にはファーマリーが展開する中古農機具の買取・販売事業を譲り受けた。
なお販売商流の多様化を目指し、カーチスホールディングス<7602>のグループ会社で中古車輸出のアガスタと業務提携した。そして22年12月には、海外向け中古車販売サイト「PicknBuy24.com」を通じて、アフリカへの販路開拓を目的とした中古農機具のテスト販売を開始した。
23年3月には就農者支援と新規就農促進を目的として中古農機具を用いたリユース連携を開始すると発表した。第1弾として福島市と連携した。中古農機具市場の活性化を促進することで、農業の観点からも持続可能な社会形成を目指すとしている。
■メディア事業とモバイル通信事業
メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。
モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。
なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。
モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。
23年2月には「カシモWiMAX」が、カカクコムの「価格.com」内の「モバイル回線プロバイダ 人気ランキング2022年」において、モバイルルーター部門・ホームルータ部門でともに年間1位となり、総合ランキング1位を獲得したと発表している。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示した。中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。
なお中期経営計画については、23年6月期の業績を踏まえて、23年8月14日付で新3ヶ年中期経営計画(ローリング方式により見直し、24年6月期~26年6月期)を公表し、26年6月期の目標値に売上高300億円、営業利益20億円を掲げた。主に個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。
なお同社のIRサイトは、22年12月には大和インベスター・リレーションズの2022年インターネットIR表彰において4年連続4度目の優良賞を受賞、23年1月には日興アイ・アールの2022年度全上場企業ホームページ充実度ランキングにおいて総合部門の最優秀サイトに初めて選出された。
■23年6月期大幅増収・黒字転換、24年6月期大幅増収増益予想
23年6月期の連結業績は、売上高が22年6月期比27.3%増の152億57百万円、営業利益が94百万円(22年6月期は3億19百万円の損失)、経常利益が2億78百万円(同3億28百万円の損失)、親会社株主帰属当期純利益が2億90百万円(同4億04百万円の損失)だった。
大幅増収で黒字転換した。営業利益+4億13百万円の要因分析は増収要因+11億65百万円、粗利益率改善+3億87百万円、人件費・採用費増加▲5億円、広告宣伝費増加▲2億75百万円、その他販管費増加▲2億30百万円、拠点関連費増加▲72百万円、信託型ストックオプション一時費用▲60百万円だった。
計画との比較では、売上高は全体としては計画水準だったものの、ネット型リユース事業の売上高が計画を下回ったことに加えて、信託型ストックオプション関連費用計上や新規拠点開設前倒しに伴う費用増加など一過性要因により、営業利益は計画を2億05百万円下回った。経常利益については、SBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約により発生したデリバティブ評価益2億19百万円を計上して計画水準で着地した。親会社株主帰属当期純利益については、投資有価証券売却益3億45百万円を計上して計画を上回った。
ネット型リユース事業は、売上高が26.6%増の83億92百万円(計画は98億04百万円)で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が195.6%増の3億29百万円だった。売上高の内訳は個人向けリユースが19.6%増の61億46百万円、マシナリー(農機具)が54.1%増の21億04百万円、おいくらが12.8%増の1億41百万円だった。個人向けリユースがバイヤーの採用・育成遅延などにより、おいくらが従量課金から月額課金への変更に伴う一時的現象により、いずれも計画を下回ったものの、前期比では各事業とも大幅伸長した。
メディア事業は、売上高が29.4%増の7億75百万円で、利益が28.3%増の4億43百万円だった。主力のモバイル通信分野を中心に、グループ内外各分野への送客数が増加した。
モバイル通信事業は、メディア事業との連携強化や新規回線獲得数の増加などにより、売上高が27.6%増の62億04百万円、利益が236.8%増の4億54百万円だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が36億71百万円で営業利益が57百万円の損失、第2四半期は売上高が37億15百万円で営業利益が14百万円、第3四半期は売上高が37億76百万円で営業利益が83百万円、第4四半期は売上高が40億94百万円で営業利益が55百万円だった。第4四半期の営業利益は一過性要因を除くベースでは1億15百万円だった。第2四半期から営業黒字基調となっている。
24年6月期の連結業績予想は、売上高が23年6月期比31.1%増の200億円、営業利益が745.3%増の8億円、経常利益が167.5%増の7億45百万円、親会社株主帰属当期純利益が27.4%増の3億70百万円としている。全セグメントが伸長して大幅増収増益予想としている。
セグメント別売上高の計画は、ネット型リユース事業が45.4%増の122億円(個人向けリユースが46.4%増の90億円、マシナリーが42.6%増の30億円、おいくらが41.2%増の8億円)、メディア事業が3.1%増の8億円、モバイル通信事業が12.8%増の70億円としている。
24年6月期も大幅増収増益予想としている。第1四半期は新規拠点開発(大阪市内および広島市内の新規拠点開設、およびコンタクトセンター増設)に伴って費用が先行するが、通期ベースでは全セグメントが順調に拡大する見込みだ。なお、前期計上したSBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約により発生したデリバティブ評価益については、23年6月末現在と同等の株価水準を前提としている。特別利益では投資有価証券売却益が剥落する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。
■株価は目先的な売り一巡して反発の動き
株価は決算発表を機に急落の形となったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。8月28日の終値は1220円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS69円50銭で算出)は約18倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS253円92銭で算出)は約4.8倍、そして時価総額は約65億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)