LibWorkは調整一巡、24年6月期大幅増益予想

LibWork<1431>(東証グロース)は熊本県を地盤として九州圏および首都圏に展開する注文住宅メーカーである。デジタルマーケティングによる独自の集客手法を特徴・強みとして、新中期経営計画「NEXT STAGE 2026」では目標値に26年6月期営業利益30億円、EOE30%などを掲げた。24年6月期は大幅増収増益予想としている。売上高は過去最高で、各利益はV字回復の見込みだ。重点施策としてエリア・顧客層・販売チャネル拡大を推進するとともに、グループ全体でコスト削減を推進する方針としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。

■熊本県を地盤として住宅のプラットフォーマーを目指す注文住宅メーカー

熊本県を地盤として九州圏(熊本県、佐賀県、福岡県、大分県)および首都圏(千葉県)に展開する注文住宅メーカーである。第一次取得層を主ターゲットとして省エネ性能に優れた住宅を提供している。20年7月にはタクエーホーム(神奈川県横浜市)を子会社化した。また23年7月には、製材加工販売を展開する幸の国木材工業(熊本県山鹿市)を子会社化して木材の安定供給体制を構築した。HOUSE TECH COMPANYとして住宅のプラットフォーマーを目指している。

■デジタルマーケティングによる独自の集客手法が特徴

一般的な常設展示場(モデルハウス)への集客ではなく、戸建関連カテゴリーポータルサイト(土地探しサイトのe土地net、施工例サイトのe注文住宅net、平屋サイトのe平屋net、建売物件に特化したe建売net、多種多様な住宅ブランドのカタログを電子カタログとしてまとめたeマイホームnetなど)によるデジタルマーケティングによる独自の集客手法を特徴として、大幅なコストダウンを実現している。WEBはエリアに依存しないため全国展開も容易になる。またポータルサイトの広告掲載料と仲介手数料を不要としているため、多数の最新の土地情報が集まりやすい。22年2月には戸建のWEBメディア「家づくりオンライン」を開設した。住宅を建てる際のさまざまな疑問や知りたい情報を得ることができる。

20年1月に開設したYouTubeチャンネル「LibWork ch」の活用も推進し、同社が実際に建築した住宅を玄関からリビング、それぞれの居室まで同社社員自らが紹介する「ルームツアー動画」を配信している。23年6月末時点の登録者数は6万人となった。なお「LibWork IRチャンネル」も開設している。

■異業種ブランドとのコラボレーションも活用した商品・出店戦略

異業種ブランドとのコラボレーションも積極活用した商品・出店戦略を推進している。MUJI HOUSEとネットワーク加入契約(フランチャイズ契約)した「無印良品の家」については、熊本エリアと福岡エリアで独占営業権を取得している。

アダストリア<2685>と提携した「ink」ブランド住宅については、22年12月に大分県内最大級の複合商業施設「パークプレイス大分」に、ショッピングモール向けインショップ型モデルハウス「sketch」を「ink」ブランド住宅で開設した。さらに23年5月には、アダストリアのスタイルエディトリアルブランド「niko and ...」がプロデュースする戸建商品「niko and ... EDIT HOUSE」のIPライセンス販売を、全国のハウスメーカー・工務店向けに開始した。一般的な住宅FCと異なり「niko and ... EDIT HOUSE」の世界観を表現するものであれば、その範囲内で加盟業者が価格を自由に設定・受注・建築できる。

サザビーリーグと提携した「Afternoon Tea HOUSE」ブランド住宅については21年9月に大分市に初出店、22年1月に千葉市に2店舗目、22年5月に福岡市に3店舗目、22年9月に熊本市に4店舗目を出店した。

21年12月には、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)<6085>が運営する「プロトバンクステーション」への加盟契約を締結した。PROTO BANKはASJ社の建築家ネットワークで設計された約1000件の高級既成住宅の図面を再利用できるプラットフォームである。本契約によって「Lib Work ステーション」として高級既成住宅を販売する。

22年8月には、千趣会<8165>とのコラボレーションによる通販チャネルを用いた戸建新商品の共同開発契約を締結した。23年を目途に商品の完成を予定している。23年3月には再春館製薬所との戸建商品共同開発契約締結を発表した。新商品を開発し、九州エリアで販売開始した後に全国に販売エリアを拡大する方針だ。

■新中期経営計画「NEXT STAGE 2026」

23年8月に策定した新中期経営計画「NEXT STAGE 2026」では定量目標として、最終年度26年6月期の売上高285億円、営業利益30億円、ROE30%を掲げた。収益性の改善と戸建住宅のプラットフォーマーを目指し、基本方針は戸建住宅のプラットフォーマーへ加速化(さまざまな住宅ソリューションを全国の工務店・ビルダーに提供していく)、戸建住宅事業におけるエリア・顧客層・販売チャネルの拡大と利益率の改善・拡大(住宅版SPAモデルの再構築)、そして「家」を再定義する-未来の家をつくる-(3Dプリンターハウスの開発・販売)とした。

プラットフォーマーへ加速化では、住宅ソリューション事業サービスであるマイホームロボ事業やIPライセンス事業などの住宅プラットフォーム事業において、開発フェーズから投資回収フェーズへの移行を推進する。

マイホームロボ事業は、全国の工務店・建築事業者向けに、22年6月に安心計画と共同開発した住宅プラン提案サービス「My Home Robo」である。AIを活用した全国の工務店・ビルダー支援システムで、サブスクリプションモデル(1ライセンス月額6.8万円~)によって全国の工務店にサービス展開する。スタート当初は安心計画の取引先である約4000社への営業を開始し、今後は代理店なども活用して全国の工務店、ビルダー、設計事務所、不動産会社など合計10万社以上にアプローチする方針としている。23年5月にはOpenAI社が提供するAIツール「ChatGPT」を活用して新機能を搭載した。

IPライセンス事業では、人気ブランドとのコラボによる圧倒的な集客力を活用するため、アダストリアとの戸建商品「niko and ... EDIT HOUSE」のIPライセンス販売をはじめとして、今後さまざまな企業ブランドと提携して新たな商品の開発を推進し、26年6月期に売上高1.8億円、営業利益1億円、累計アカウント数54社を目指すとしている。

戸建住宅事業におけるエリア・顧客層・販売チャネルの拡大では、強みとするデジタルマーケティング集客のエリア拡大やサイト拡充によるリード獲得拡大および来場率引き上げ、YouTubeやオウンドメディアを活用した顧客エンゲージメントの向上、通販チャネル活用による住宅販売など販売チャネルの拡大、異業種とのコラボによる顧客層の拡大、関東圏への本格進出による出店エリアの拡大、コラボ商品を活用した建売事業の拡大、利益率の改善・拡大では主要工事(基礎工事や給排水工事など)内製化による住宅版SPAへの再加速、木材プレカット工場(幸の国木材工業)買収による木材事業への進出、ジョブ型雇用へのシフトによる人材投資強化などを推進する。

「家」を再定義する-未来の家をつくる-では、3Dプリンターハウスの開発・販売を推進する。3Dプリンターハウスについては23年7月に、熊本県で廃校(山鹿市立山内小学校)となった3階建の校舎をフルリノベーションしたセカンドオフィス「Lib Work Lab」を開所した。第2の本社オフィスとして使用するとともに、3Dプリンターハウスや子ども食堂の拠点としても活用する。世界有数の建築物の構造設計を手掛けたグローバル企業であるARUPと共同で3Dプリンターハウス「Earth House」の開発を推進し、25年6月期に認定取得・一般販売開始を目指す。

■サステナビリティ経営

SDGsへの取り組みを強化するため21年3月にSDGs宣言を行い、サスティナブルな住まいづくりを通じて、豊かな暮らしと幸せの実現、地球環境への配慮に貢献する方針を打ち出した。

22年9月には、自社事業活動で排出するCO2排出量を30年までに実質ゼロとするカーボンニュートラル宣言、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同およびTCFDコンソーシアム参画を発表した。22年10月にはGX(グリーントランスフォーメーション)リーグ基本構想への賛同を表明した。

22年12月には木造戸建てモデル住宅について業界初となるSuMPO環境ラベルプログラムのCFP(カーボンフットプリント)宣言登録を発表した。より環境負荷の少ない資材の利用等に取り組むことでCO2排出量の削減に努め、サスティナブルな家づくりに取り組むとしている。さらに、くまもとSDGsアワード2022において「くまもとSDGs牽引部門優秀賞」に選出された。

23年3月には同社の瀬口力代表取締役社長による初の著書「2代目社長の住宅イノベーション」(幻冬舎)が出版された。また健康経営優良法人2023において2年連続(22年は中小規模法人部門、23年は大規模法人部門)で認定された。23年5月には、パリ協定の目標達成を目指したSBT(Science Based Targets)の認定を取得した。

■24年6月期は大幅増益予想

23年6月期の連結業績は売上高が22年6月期比3.1%増の141億83百万円、営業利益が55.1%減の2億99百万円、経常利益が55.5%減の3億14百万円、親会社株主帰属当期純利益が61.0%減の1億73百万円だった。配当は22年6月期比60銭増配の6円40銭(四半期配当で各四半期末1円60銭)とした。配当性向は81.6%である。

売上高は3期連続増収で過去最高だが、各利益は大幅減益で着地した。消費マインド低下などで受注が伸び悩んだことに加えて、資材価格の高騰や成長に向けた先行投資などが影響した。なお前回予想(23年5月11日付の下方修正値、売上高142億円、営業利益2億66百万円、経常利益2億80百万円、親会社株主帰属当期純利益1億55百万円)との比較では、各利益は前回予想を上回る水準だった。

四半期別に見ると第1四半期は売上高が21億87百万円で営業利益が2億64百万円の損失、第2四半期は売上高が43億37百万円で営業利益が3億48百万円、第3四半期は売上高が27億45百万円で営業利益が23百万円の損失、第4四半期は売上高が49億14百万円で営業利益が2億38百万円だった。

24年6月期の連結業績予想は、売上高が23年6月期比19.9%増の170億円、営業利益が97.2%増の5億90百万円、経常利益が91.0%増の6億円、親会社株主帰属当期純利益が113.2%増の3億70百万円としている。配当予想は23年6月期と同額の6円40銭(四半期配当で各四半期末1円60銭)としている。予想配当性向は38.2%である。

24年6月期は大幅増収増益予想としている。売上高は過去最高で、各利益はV字回復の見込みだ。重点施策としてエリア・顧客層・販売チャネル拡大を推進するとともに、グループ全体でコスト削減を推進する方針としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は保有期間・株式数に応じて贈呈

株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、各四半期(9月、12月、3月、6月)末時点の株主を対象に、保有期間および保有株式数に応じて、株主優待ポイントおよびクオカードを贈呈している。

■株価は調整一巡

株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。8月29日の終値は776円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS16円74銭で算出)は約46倍、今期予想配当利回り(会社予想の6円40銭で算出)は約0.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS149円99銭で算出)は約5.2倍、そして時価総額は約181億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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