インテージホールディングスは年初来高値更新、24年6月期営業・経常増益予想

インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は、市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。第14次中期経営計画では、Date+Technology企業として、販促最適化への新たな価値を創出することや、社会的課題解決に向けた行政EBPM推進への価値を創出することを目指し、目標値には最終年度26年6月期の営業利益60億円などを掲げた。配当方針については第14次中期経営計画期間中の配当は累進的とし、26年6月期の配当性向を従来の40%から50%に引き上げるとした。24年6月期は消費財メーカーを中心に市況環境復調を見込み、成長戦略を推進して増収、営業・経常増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来高値を更新した。1700円近辺のフシを突破して三角保ち合いから上放れた形であり、上値を試す展開を期待したい。

■国内首位の市場調査が主力

子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。

セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。23年6月期のセグメント別構成比は売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援65%、ヘルスケア分野のマーケティング支援23%、ビジネスインテリジェンス12%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援43%、ヘルスケア分野のマーケティング支援47%、ビジネスインテリジェンス9%だった。

消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社、21年5月に子会社化したリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)などである。

21年11月には、子会社インテージとインティメート・マージャー<7072>の業務提携(21年10月)を強固にすることを目的として、インティメート・マージャーと資本提携した。

ヘルスケア分野のマーケティング支援では、一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務、医薬品開発をサポートするCRO業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。

22年8月にはインテージヘルスケアと岡山大学が悪性腫瘍をはじめとする難治性疾患治療薬開発プロジェクトとして、AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet(ディープカルテット)」を活用した新薬開発の共同研究を開始した。22年12月にはインテージヘルスケアがAI創薬アカデミックプログラム(IAAP)を開始した。AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet」などの新規化合物を得るサービスを活用し、アカデミアとの共同研究プログラムを開始する。23年2月にはインテージヘルスケアと広島大学がAI創薬によるペプチド擬態化合物の共同研究を開始、インテージヘルスケアと名古屋大学がAI創薬による胃酸抑制剤の共同開発を開始した。

ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。

22年12月にはインテージテクノスフィアが、クラウド型健康管理システム「すこやかサポート21」の豊富な機能の中から利用頻度の高い機能だけを厳選したライトプラン「すこやかサポート21 Light」提供開始した。23年2月にはインテージテクノスフィアが、APAC(アジア太平洋地域)で発行されているITビジネス誌APAC CIO OutlookにおいてTop10 BI and Analytics Solution Providers in APAC2022賞を受賞した。

なお海外事業に関して23年1月に連結子会社CSG香港の株式譲渡および特別目的会社IAHの清算を発表した。市場環境の変化に対応してアジアにおける事業展開の役割を本社へ移管するとともに、中国市場への事業展開は英徳知市場諮詢(上海)有限公司を中心に推進する方針に変更した。

■第14次中期経営計画

第14次中期経営計画(24年6月期~26年6月期)では、Date+Technology企業として、販促最適化への新たな価値を創出することや、社会的課題解決に向けた行政EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)推進への価値を創出することを目指し、目標値には最終年度26年6月期の売上高735億円、営業利益60億円、一人当たり利益(=(営業利益+投資)/人員数)GAGR12%、ROE(自己資本利益率)12%などを掲げている。

利益改善については、各セグメントの売上増加、販売価格の最適化、生産性向上などに加えて、SCI刷新によるコストイノベーションや新旧SCIのダブルランコストの解消を見込んでいる。配当方針については、第14次中期経営計画期間中の配当は累進的とし、26年6月期の配当性向を従来の40%から50%に引き上げるとしている。

消費財・サービス分野のマーケティング支援では、リサーチにとどまらず販促・広告市場においても新しい価値創出を目指す新たなプラットフォームとして、子会社のリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)が持つ特許を活用し、CXマーケティングプラットフォームの開発を推進する。第1ステップはRNIのプロダクトにインテージの事業資産を組み込んでマネタイズを加速、第2ステップはRNI特許を活用してSCIをリニューアル、第3ステップはSCI-CODE一体活用によるCXマーケティングプラットフォームの確立(提供ツールを開発してリサーチと広告・販促の一気通貫サービスを提供)を目指す方針としている。

なおINTAGE Open Innovation Fund(SBIインベストメントと共同設立)は、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。23年6月には、一人ひとりに合わせて行動を促す個別化エンジン「Nudge AI」を開発するGodotに出資した。投資先のIPO実績としてはAI CROSS<4476>、QDレーザ<6613>、メンタルヘルステクノロジーズ<9218>がある。23年8月現在の投資実績は26社、合計約26.5億円となっている。

サステナビリティ経営に関しては、23年度からサステナビリティ委員会を設置して取り組みを強化している。

■24年6月期は営業・経常増益予想

23年6月期の連結業績は、売上高が22年6月期比1.9%増の613億87百万円、営業利益が18.6%減の37億85百万円、経常利益が17.7%減の40億73百万円、親会社株主帰属当期純利益が2.5%増の35億05百万円だった。配当22年6月期比4円増配の42円(期末一括)としている。連続増配で配当性向は46.0%となる。

前回予想(売上高633億円、営業利益46億50百万円、経常利益50億円、親会社株主帰属当期純利益40億円)を下回り、営業・経常減益で着地した。マーケティング支援(消費財・サービス)事業が主要顧客群である消費財メーカーのビジネス環境悪化の影響を受けた。親会社株主帰属当期純利益については、特別損失で投資有価証券評価損が3億01百万円減少したことに加えて、法人税等調整額▲6億21百万円を計上して税負担が減少したことも寄与して増益だった。

マーケティング支援(消費財・サービス)事業は、売上高が4.3%増の401億53百万円、営業利益が28.6%減の16億43百万円だった。前期比では増収だが、主要顧客群である消費財メーカーのビジネス環境悪化の影響を受けて売上高が想定を下回り、販売体制強化を目的とした人件費の増加、SCIの刷新を中心とした先行投資などの影響で減益だった。

マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が2.7%減の141億53百万円、営業利益が18.5%減の17億91百万円だった。主力のインテージヘルスケアのリサーチ事業が前期の体制変更の影響で減収だった。なお、CRO(医薬品開発業務受託機関)は構造改革効果で収益性が改善し、協和企画も次年度に向けた案件が活発化して回復軌道となっている。

ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が1.3%減の70億80百万円、営業利益が131.7%増の3億50百万円だった。コロナ禍の影響を受けていた旅行業界を中心に既存業界向けソリューションの売上が回復傾向となり、原価低減や経費削減も寄与して大幅増益だった。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が141億19百万円で営業利益が5億73百万円、第2四半期は売上高が158億41百万円で営業利益が14億03百万円、第3四半期は売上高が179億29百万円で営業利益が20億70百万円、第4四半期は売上高が134億98百万円で営業利益が2億61百万円の損失だった。

24年6月期連結業績予想は売上高が23年6月期比5.1%増の645億円、営業利益が5.7%増の40億円、経常利益が5.6%増の43億円、親会社株主帰属当期純利益が14.4%減の30億円としている。配当予想は23年6月期比1円増配の43円(期末一括)としている。予想配当性向は54.6%となる。

消費財メーカーを中心に市況環境復調を見込み、成長戦略を推進して増収、営業・経常増益予想としている。セグメント別の計画は、マーケティング支援(消費財・サービス)事業の売上高が4.1%増の418億円で営業利益が3.5%増の17億円、マーケティング支援(ヘルスケア)事業の売上高が6.0%増の150億円で営業利益が6.1%増の19億円、ビジネスインテリジェンス事業の売上高が8.8%増の77億円で営業利益が14.3%増の4億円としている。親会社株主帰属当期純利益については、前期の税金費用が減少していた反動で減益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待は毎年12月末の株主対象

株主優待制度は、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。

■株価は年初来高値更新

株価は年初来高値を更新した。1700円近辺のフシを突破して三角保ち合いから上放れた形であり、上値を試す展開を期待したい。8月30日の終値は1780円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS78円80銭で算出)は約23倍、今期予想配当利回り(会社予想の43円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS808円17銭で算出)は約2.2倍、時価総額は約720億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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