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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パイプドHDは9月1日付で持株会社を設立して新規上場
- 2015/9/3 06:55
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム事業やソリューション事業を展開している。旧パイプドビッツ<3831>が株式移転で設立した持株会社パイプドHDが9月1日付で新規上場した。株価は地合い悪化も影響して旧パイプドビッツ最終売買日8月26日に1081円まで急落する場面があり、新パイプドHD上場後もやや乱高下する展開だ。ただし16年2月期は大幅増収増益・増配予想であり、水準切り上げの展開が期待される。
■国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」が基盤
旧パイプドビッツが株式移転によって15年9月1日付で純粋持株会社パイプドHDを設立した。旧パイプドビッツは15年8月27日付で上場廃止となり、新パイプドHDが15年9月1日付で東証1部に新規上場した。
国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(データ管理などクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、およびソリューション事業(ネット広告制作、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、子会社ペーパレススタジオジャパン(PLSJ)のBIMコンサルティング事業など)を展開している。
情報資産プラットフォーム事業では「スパイラル」、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを主力としている。
また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連のヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」などを展開し、14年3月にはアズベイスを子会社化してコールセンタープラットフォームサービス「BizBase」にも事業領域を広げている。
15年3月にはパイプドビッツ総合研究所を設立した。政府の政策に対して情報通信技術の活用や課題、先行事例などさまざまな調査研究や実証実験を行い、公表や提言などを通じて地域や社会の課題解決に貢献するとしている。そして7月23日に1万人ニーズ調査第8弾「防災・国土強靭化政策の分析レポート」、8月6日に第9弾「医療・介護政策の分析レポート」、8月20日に第10弾「成長分野の人材育成・人材確保政策の分析レポート」を公開した。
15年7月には「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」の提供開始を発表した。マイナンバー運用体制整備をトータルサポートする。また「スパイラル・オムニチャネルソリューション」の提供開始を発表した。マルチクラウドの活用により、オムニチャネル化に向けたスモールスタートを切ることができるオムニチャネル実践基盤で、情報資産プラットフォーム「スパイラル」が顧客情報統一管理を担う。
■M&A・アライアンス戦略も積極展開
M&A・アライアンス戦略では、15年2月に世界有数のソフトウェアベンダーである米スプリンクラー社の日本法人スプリンクラー・ジャパン社に出資(A種優先株式)し、15年3月には米スプリンクラー社に純投資目的で総額約4百万米ドル出資した。また15年3月にはカレン(東京都)に出資して事業連携を強化した。
15年4月には子会社PLSJとエヌ・シーエヌ(岐阜県)が住宅業界向けBIM事業を展開する合弁会社MAKE HOUSEを設立、ソフトブレーン<4779>と業務提携した。15年5月には自治体広報紙へのオープンデータ利活用モデル事業化を目的として新会社パブリカを設立した。
15年7月には講談社が刊行する女性誌「ViVi」のEC事業展開に関して、当社が新設する子会社ウェアハートと講談社との間で業務提携すると発表した。システム開発、ECサイト構築、商品仕入および物流についてウェアハートが担当する。
■16年2月期は増収増益基調
15年2月期(旧パイプドビッツ)の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)7億14百万円、第2四半期(6月~8月)7億98百万円、第3四半期(9月~11月)8億00百万円、第4四半期(12月~2月)8億61百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期1億65百万円、第3四半期1億71百万円、第4四半期1億49百万円だった。
契約数増加に伴って収益が拡大するストック型の収益構造である。15年2月期末の有効アカウント数(全事業合計)は14年2月期末比661件増加の1万757件だった。また15年2月期の配当性向は34.1%で、ROEは14年2月期比2.2ポイント低下の15.9%、自己資本比率は同0.2ポイント低下の77.6%だった。
今期(16年2月期)の連結業績予想(旧パイプドビッツ3月31日公表)は売上高が前期比26.0%増の40億円、営業利益が同31.2%増の8億20百万円、経常利益が同29.2%増の8億20百万円、そして純利益が同31.6%増の4億90百万円としている。16期連続で営業最高益更新の見込みだ。配当予想については同2円増配の年間18円(第2四半期末8円、期末10円)としている。予想配当性向は30.0%となる。
第1四半期(旧パイプドビッツ3月~5月)の連結業績は、売上高が前年同期比30.9%増の9億35百万円、営業利益が同17.0%増の1億64百万円、経常利益が同18.5%増の1億67百万円、純利益が同21.4%増の97百万円だった。
主力の情報資産プラットフォーム事業が好調に推移し、人件費の増加などを吸収して大幅増収増益だった。セグメント別の売上高は、情報資産プラットフォーム事業が同22.0%増の7億48百万円、広告事業が同56.3%増の57百万円、ソリューション事業が同2.0倍の64百万円だった。
第1四半期末の有効アカウント数(全事業合計)は15年2月期末比353件減少して1万404件となった。スパイラルプレースの大型解約で一時的に解約率が上昇した。また14年11月からのネットde青色申告フリーミアム化に伴って継続契約に基づく有償アカウント数が443件減少している。
通期ベースではアカウント数も増加基調で、主力の情報資産プラットフォーム事業の好調が牽引して大幅増収増益予想だ。契約売上高(月額課金)が順調に増加し、名古屋営業所開設による中部圏の販売網拡大も寄与する。
また積極的な事業・育成・開発投資や人材採用を継続する方針だ。スプリンクラー・ジャパン社への出資を通じて、新規事業領域であるソーシャル分野(Sprinklr事業)へも進出する。
なお出資先で持分法適用会社の可能性があるスプリンクラー・ジャパン社とカレンの業績、および純投資目的の出資先である米スプリンクラー社の投資評価損益などについては、現段階では業績への影響は軽微のため業績予想に織り込んでいないとしている。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.4%、営業利益が20.0%、経常利益が20.4%、純利益が19.8%だった。やや低水準の形だが、契約数増加に伴って契約売上高(月額課金)が増加するストック型収益構造であり、現時点では特にネガティブ要因とはならないだろう。
■15年9月持株会社設立して次世代ITベンダーを目指す
14年3月発表の「中期経営計画2017」では、15年2月期から17年2月期を「次世代ITベンダーへと革新する3ヵ年」と位置付けて、目標数値に17年2月期売上高92億円、営業利益28億円を掲げている。ストック型の収益構造であり、情報資産プラットフォーム事業が牽引して中期的にも収益拡大基調だろう。
そして15年9月1日付で純粋持株会社パイプドHDを設立した。経営効率の向上、組織再編の柔軟性・機動性確保、グループ全体の最適化とガバナンス機能の強化を目的として、中長期の持続的成長および企業価値向上を推進するとしている。
なお、5月27日開催の第15回定時株主総会において株式移転を決議したが、6月10日に反対株主から当社株式の買い取り請求を受けた。買い取り請求株式数は普通株式50万株(発行済株式数の6.2%)で、買い取り価格および支払時期は未定としている。買い取り請求を受けた日の当社株価の終値を基準に資産すると想定買い取り価格は8億94百万円となる。また支払時期は株式移転の効力発生日である15年9月1日以降60日以内を予定している。
8月14日には純粋持株会社パイプドHD設立に伴う自己株式消却を発表した。消却日15年9月1日、消却株式数116株である。
■新パイプドHD上場後の株価はやや乱高下
旧パイプドビッツの株価は、地合い悪化も影響して1800円近辺でのモミ合いから下放れの形となり、最終売買日8月26日には1081円まで急落する場面があった。9月1日の持株会社パイプドHDの新規上場まで売買が中断することも影響したようだ。終値は1190円だった。
そして新パイプドHDの株価は、9月1日に1374円まで上伸する場面があったが、2日には一転して旧パイプドビッツ終値と同じ1190円まで調整する場面があった。地合いの不安定さも影響してやや乱高下の展開だ。
9月2日の終値1206円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円76銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS326円10銭で算出)は3.7倍近辺である。
16年2月期は大幅増収増益・増配予想であり、中期成長力を評価して水準切り上げの展開が期待される。