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ネオジャパンは戻り歩調、24年1月期減益予想だが上振れの可能性
- 2023/9/11 10:17
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ネオジャパン<3921>(東証プライム)は自社開発グループウェアdesknet‘s NEOのクラウドサービスを主力として、製品ラインアップ拡充による市場シェア拡大戦略、アライアンス戦略、東南アジア市場開拓戦略を推進している。なお9月28日より、グループウェアdesknet‘s NEOのChatGPTとの連携機能を搭載した最新バージョンV8.0、およびビジネスチャットChatLuckとChatGPTの連携機能を提供開始する。24年1月期はクラウドサービスが牽引して増収だが、広告宣伝費や人件費の増加で減益予想としている。ただし保守的な印象が強く、第1四半期が大幅増益だったことなどを勘案すれば、通期会社予想は増収効果で上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は下値を切り上げて戻り歩調の形だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■自社開発グループウェアのクラウドサービスが主力
ビジネス・ITコミュニケーションツール開発企業である。自社開発のグループウェアdesknet‘s NEOのクラウドサービス(月額課金収入)を主力に、大企業向け中心のプロダクト(パッケージソフト販売のライセンス収入およびサポートサービス収入)も展開している。
19年8月にはシステム開発のPro-Spireを子会社化した。22年10月には、現代ビジネスパーソンのコミュニケーション実態を把握・研究すべくNEOビズコミ研究所を新設した。
海外展開は19年6月米国子会社DELCUIを設立、19年12月マレーシアに合弁会社NEOREKA ASIAを設立、21年2月タイに子会社Neo Thai Asiaを設立した。当面は投資先行だが、ASEAN全域においてグループウェアdesknet‘s NEOブランドの確立を目指す。なお6月20日には、タイの子会社Neo Thai AsiaがRICOH(THAILAND)と販売代理店パートナー契約を締結したと発表している。
23年1月期売上高構成比は、グループウェアを中心とするビジネスICTツールのソフトウェア事業が70%(クラウドサービスが45%、プロダクトが24%、技術開発が1%)、子会社Pro-Spireのシステム開発サービス事業が30%、海外事業が0%、調整額が▲%、営業利益構成比はソフトウェア事業が99%、システム開発サービス事業が8%、海外事業が▲7%、調整額が▲0%だった。ソフトウェア事業のストック型売上比率は77%(22年1月期は73%)だった。23年1月期第4四半期のARRは前年比10.3%増加の33億51百万円となった。なお収益面では下期の構成比が高い傾向がある。
■グループウェアdesknet‘s NEOは使いやすさが強み
グループウェアdesknet‘s NEOは、ローカライゼーション(日本語、日本の商習慣やビジネス習慣など)に対応した27の基本機能を備え、多機能・使いやすさ・高品質・低価格を強みとしている。23年3月にはdesknet‘s NEO最新バージョン7.5の提供を開始した。利用ユーザーの声を受けて15機能・50項目以上の機能改善を行った。
グループウェアdesknet‘s NEOの累計ユーザー数(クラウド版契約ユーザー数とパッケージ版販売ユーザー数の合計)は、23年1月期末時点で前期末比21万ユーザー増加の484万ユーザーとなった。業種・業態・規模を問わず幅広く企業・官公庁・自治体に採用され、自治体・政府機関1100以上(都道府県庁18含む)に導入されている。中長期的には累計ユーザー数1000万ユーザーを目指すとしている。なお23年1月期末時点のdesknet‘s NEOクラウドのユーザー数は前期末比3.1万人増加の48.3万人となった。解約率は概ね0.2%~0.4%程度で推移している。
大規模導入事例として、21年7月にはカー用品専門店チェーンのイエローハット<9882>に、グループが運営する全国740店舗の従業員・スタッフをつなぐ情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO大規模パッケージ版(3000ライセンス)が採用された。22年7月には、神奈川県横浜市が整備する最大6万人が利用する市区局共通グループウェアとして、desknet‘s NEOが全面的に採用(東芝デジタルソリューションズが市区局共通グループウェア構築事業を受託)された。
■製品ラインアップ拡充
成長戦略として国内累計販売ユーザー数1000万ユーザー、グループウェア国内トップシェア、売上高100億円を目指し、グループウェアdesknet‘s NEOを核とするエンタープライズ向け製品ラインアップ拡充戦略、市場シェア拡大戦略、シナジーが見込めるアライアンスへの戦略投資、マレーシアの合弁会社を拠点とするクラウドサービスの東南アジア市場開拓戦略などを推進している。
製品ラインアップ拡充戦略としては、ノーコードアプリ作成ツールAppSuite、新しいコミュニケーションツールとしてのビジネスチャットChatLuckを提供し、グループウェアdesknet‘s NEOとの連携も強化している。
23年1月には、国や地方自治体、民間企業などが一体となって、日本全国あらゆる人のスキルをアップデートする“リスキング”に取り組む新たな試みである「日本リスキングコンソーシアムに、リスキングパートナーとしてトレーニングプログラムの提供を開始すると発表した。ノーコードツールAppSuiteを使いこなすためのメニューからスタートし、順次追加していく予定としている。
23年4月には経済産業省のIT導入補助金2023においてIT導入支援事業者として採択され、グループウェアdesknet‘s NEO、ノーコードアプリ作成ツールAppSuite、ビジネスチャットChatLuckが補助金の対象ツールとして認定された。
なお9月28日より、グループウェアdesknet‘s NEOのChatGPTとの連携機能を搭載した最新バージョンV8.0、およびビジネスチャットChatLuckとChatGPTの連携機能を提供開始する。また24年2月より、グループウェアdesknet‘s NEOのパッケージ版であるスモールライセンスとエンタープライズライセンスを統合、ノーコードアプリ作成ツールAppSuiteのパッケージ版であるスモールライセンスとエンタープライズライセンスを統合し、それぞれパッケージ版ライセンスとして販売開始予定である。
■さまざまな賞を受賞
23年2月には、法人向けIT製品・サービス比較サイトITトレンドが選出する2022年下半期Good Productバッジにおいて、グループウェアdesknet‘s NEOがグループウェア部門を受賞した。
23年7月には、アイティクラウドのIT製品比較・レビューサイトであるITreview Grid Awaed 2023 Summerにおいて、グループウェアdesknet‘s NEO、ビジネスチャットChatLuck、ノーコードアプリ作成ツールAppSuiteの主力3製品が8部門で受賞した。
23年8月には、日経コンピュータ誌(日経BP発行)の「日経コンピュータ顧客満足度調査2023~2024」において、グループウェア/ビジネスチャット部門で第1位を獲得した。
9月5日にはスマートキャンプ社のBOXIL SaaS AWARD Autumn 2023において、主力3製品がそれぞれ3部門で10の賞を受賞したと発表している。
■アライアンスも活用
22年3月には、東京都多摩市が実施した「令和3年度多摩市民間提案制度」において、desknet‘s NEOとAppSuiteで作成した「ワクチン接種記録等の効率化と工数削減に向けた管理向上」事業が採用候補に認定された。ワクチン関連の行政の業務効率化において採用された事例としては、茨城県つくば市「つくば市新型コロナワクチン配送システム」に続く2例目となる。
22年5月には、中小企業のDXを支援するAppSuiteアプリ集「ネコの手アプリ」シリーズを提供するシステムアプローチ(愛知県名古屋市)と、AppSuiteアプリの開発・販売活動で連携した。
22年11月には、横浜市が募集した民間企業のデジタル技術を活用して行政サービスのDX化を進めるプロジェクト「YOKOHAMA Hack!」の第1回実証実験事業者に選定され、横浜市と共同で「要配慮施設利用者の安全を守る避難確保計画の取組強化」の実証実験を開始した。AppSuiteとdesknet‘s NEOを活用する。そして23年4月には実証実験の結果、システム化により作業工数41%削減効果が得られたとリリースしている。
22年12月には神奈川県鎌倉市の市区局共通の情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO、ビジネスチャットChatLuck、業務アプリ作成ツールAppSuiteの3製品が実証実験を終えて採用決定した。
9月1日にはフィリピン経済特区庁(PEZA)と、適切なICTシステムの開発と導入に関する基本合意(MOU)を締結した。海外政府機関とのMOU締結は同社にとって初となる。
■サステナビリティ経営
サステナビリティ経営への取り組みとして22年4月にはバスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)の東京羽田ヴィッキーズとスポンサーシップ契約を締結した。22年11月にはクラウドサービス情報開示認定機関ASPISより、クラウドサービスにおける信頼・安全性の推進に多大なる貢献をしたサービス・事業者として最優秀・資格継続賞を受賞した。08年7月に7番目の事業会社として情報開示認定企業に認定されて以来、この資格を14年維持している。
23年2月にはIR室を新設して齋藤晶議代表取締役社長が管掌すると発表した。これまで以上にIRへの取り組みを推進する方針だ。23年3月には経済産業省と日本健康会議が推進する健康経営優良法人認定制度「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に4年連続で認定された。23年4月には神奈川県「かながわSDGsパートナー」に認定された。また、横浜市のSDGs認証制度Y-SDGsにおいて上位認証である「Superior(スーペリア)」を取得した。
さらにESG経営への取り組みを強化するため、23年5月にサステナビリティ委員会を設置、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明した。また23年5月には、芸人や動画クリエイターとしても活躍中の江頭2:50を起用し、グループウェアdesknet‘s NEOのTVCMを全国主要5エリアで放映開始した。なお23年10月29日に開催される横浜マラソン2023に大会協賛予定である。
■上場維持基準適合に向けた計画書
23年1月31日時点で流通時価総額がプライム市場の上場維持基準に適合しない状況となったため、23年4月26日付で上場維持基準適合に向けた計画を作成・公表した。
広告宣伝費については26年1月期まで24年1月期と同水準程度の投資を継続するが、認知度向上効果やストック型売上の安定的成長を基盤として、業績の向上(中期業績目標26年1月期売上高78億75百万円、営業利益16億95百万円、当期純利益11億70百万円、1株当たり利益78円50銭、1株当たり配当31円、配当性向39.5%)を図るとともに、株主還元施策の強化、IR活動強化による認知度向上、ESG/サステナビリティへ経営の取り組み強化、流通株式比率の向上などを推進し、企業価値の向上(時価総額の増大)に努めるとしている。計画期間は26年1月末までとしている。
■24年1月期減益予想だが上振れの可能性
24年1月期の連結業績予想は、売上高が23年1月期比5.9%増の63億59百万円、営業利益が24.4%減の9億37百万円、経常利益が28.8%減の9億51百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が22.6%減の6億29百万円としている。配当予想は23年1月期比3円増配の23円(期末一括)としている。株主優待制度を23年1月末対象で廃止したが、配当については株主優待制度のコスト見合い1円50銭と、さらに1円50銭を加えて合計3円増配としている。23年1月期の年間20円には創立30周年記念配当1円が含まれているため、普通配当ベースでは4円増配となる。8期連続増配予想で予想配当性向は54.5%となる。
第1四半期の連結業績は売上高が前年同期比9.9%増の16億45百万円、営業利益が27.2%増の3億93百万円、経常利益が22.5%増の4億01百万円、親会社株主帰属四半期純利益が21.9%増の2億69百万円だった。クラウドサービスが牽引して増収、大幅増益だった。
ソフトウェア事業(クラウドサービス、プロダクト、技術開発の合計)は売上高が9.7%増の11億49百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が28.0%増の4億12百万円だった。クラウドサービスの利用ユーザー数が順調に増加した。
クラウドサービスの売上高は11.4%増の7億16百万円だった。内訳はグループウェアdesknet‘s NEOクラウドが10.3%増の5億94百万円、ノーコード業務アプリ作成ツールAppSuiteクラウドが31.1%増の39百万円、ビジネスチャットChatLuckクラウドが0.1%増の17百万円、その他月額売上が2.0%増の50百万円、その他役務作業等が90.4%増の14百万円だった。
プロダクトの売上高は7.8%増の4億15百万円だった。内訳はライセンス売上合計が18.0%増の1億24百万円、サポートサービスが6.0%増の2億06百万円、カスタマイズが98.1%増の31百万円、その他役務作業等が23.9%減の52百万円だった。サポートサービスはdesknet‘s NEOを中心に伸長した。技術開発は積極的な受注活動を行っていないため、売上高は7.7%減の17百万円だった。
なお、グループウェアdesknet‘s NEOのユーザー数は、プロダクト累計が4.4%増の423.5万人、クラウドユーザー数が8.0%増の50.3万人となった。クラウド解約率は0.29%だった。概ね0.3%前後で推移している。ノーコード業務アプリ作成ツールAppSuiteのユーザー数はプロダクト累計が55.0%増の21.4万人、クラウドユーザー数が33.3%増の4.8万人となった。
システム開発サービス事業(子会社Pro-SPIRE)は、売上高が10.3%増の5億01百万円となり、セグメント利益が42.9%増の11百万円だった。主要顧客の体制縮小の影響で減収傾向が続いていたが、前期第4四半期から回復傾向が継続した。海外事業はコロナ禍影響が和らいで売上高が321.2%増の3百万円だが、セグメント利益は30百万円の損失(前年同期は21百万円の損失)だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。売上面はクラウドサービスが牽引して増収だが、利益面は認知度向上に向けてTVCMなどの広告宣伝投資を継続するため広告宣伝費が増加(通期ベースで前期比約3億円増加の計画)することに加えて、従来以上の賃上げに伴う人件費増加なども影響して減益予想としている。第1四半期の進捗率は売上高が25.9%、営業利益が42.0%、経常利益が42.2%、親会社株主帰属当期純利益が42.8%と高水準だったが、TVCMなどの広告宣伝投資を第2四半期および第3四半期に実施する計画としている。
ただし保守的な印象が強い。第1四半期が大幅増益だったことなどを勘案すれば、通期会社予想は増収効果で上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は戻り歩調
株価は下値を切り上げて戻り歩調の形だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。9月8日の終値は1148円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS42円20銭で算出)は約27倍、今期予想配当利回り(会社予想の23円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS383円36銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約171億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)