奥村組は下水道内部の水位モニタリングシステムを開発、省電力・高耐久・機器設置の簡便性を実現

■管路の老朽化対策と内水氾濫の軽減に挑む

 奥村組<1833>(東証プライム)とコアシステムジャパン※1(本社:東京都八王子市)は19日、下水道管路の老朽化対策や局所的な豪雨などによる内水氾濫※2の軽減を目的に、管路内部の水位データを広域かつ効率的に取得・管理できるモニタリングシステムを開発したと発表。

※1 学校法人創価大学(理事長:田代 康則)理工学部の研究成果である「ヘテロコア光ファイバセンサ技術」を多方面で社会実装する目的で設立されたベンチャー企業。同大学は、ヘテロコア光ファイバセンサの開発・改良、品質評価等を担っている。

※2 下水道等の排水能力を超える降雨時や、排水先の河川水位が高くなった時などに、雨水が排水できなくなり浸水する現象。

■背景

 近年、下水道管路の老朽化による機能不全や、局所的な豪雨による内水氾濫のリスクが高まっている。これには水位モニタリングによる予防保全型の対策が有効であるが、モニタリングに必要な計測機器は高額であり、数多く設置するには多大なコストを要することなどから、広域にわたってモニタリングしている事例はない。

 また、管路が老朽化で損傷すると管路内に地下水等(不明水)が浸入し、下水の処理量が増加するため、処理施設の排水能力を超えてしまうおそれがあり、管路の補修などの対策を適切に行うことが求められている。不明水の浸入場所を特定するには降雨時に複数箇所での水位測定をする必要があり、その場合、既設の水位計を別の位置に設置し直して測定しているため、撤去・設置に多大な労力を要していた。

■同システムの概要

 同システムは、(1)センサ技術、(2)通信技術、(3)水位計の固定治具の3項目を工夫することにより、省電力・高耐久・機器設置の簡便性を実現するものである。これにより効率的でコストを抑えた下水道管路内部のモニタリングシステムを確立した。

(1)センサ技術

 水位測定機器は、一般的に電気式棒状水位計を使用するが、下水および硫化水素等により腐食したり、落雷により損傷したりすることがある。そこで、同システムでは、腐食に強く耐雷性にも優れた光ファイバを用いた「ヘテロコア光ファイバ水位計(光ファイバ水位計)」【特許技術】を採用した。光ファイバ水位計は、水圧を受けた際のセンサの変形量を光ファイバで捉えて水位に変換するもので、低コストで数多く設置できる利点がある。

(2)通信技術

 既存モニタリング方法として、管路内に設置した水位センサの計測データをLTE通信によりクラウドに転送、集約して監視する技術が活用されている。LTE通信は、常時通信を行うためリアルタイムで計測データを取得できる利点がある一方、電力消費量が大きく、大型専用バッテリーの定期的な交換と、通信料も必要となる。そこで、消費電力の少ないLoRa通信を採用し、クラウドへのデータ転送を行わず、マンホール下に設置した送信機から受信機を搭載した点検車が走行しながら計測データを取得することとした。

 これにより、消費電力はLTE通信と比べて約50分の1となり市販の乾電池で稼動させることができる。また、クラウド利用に伴う通信料も不要となる。

 管理域内の主要なマンホールに設置するメイン機器は、確実な通信によりリアルタイムに計測できるLTE通信を用いて迅速に状況把握を行う。メイン機器を補完する位置に設置するバックアップ機器はLoRa通信を用い、点検車で巡視時にデータを取得することで広範囲を詳細かつ効率的にモニタリングする。

(3)水位計の固定治具

 不明水の浸入場所を特定するため、既設の水位計の設置箇所を頻繁に変更する必要があるが、従来の水位計はサイズが大きく、アンカーで固定するため、設置・撤去作業に多くの時間を要していた。同システムで採用する「ヘテロコア光ファイバ水位計」はサイズが小さいため、アンカーレスで容易に着脱が可能な「水位計一体型固定治具」【特許技術】を開発した。

 これにより、設置時間が従来の25%(1箇所あたり15分程度、75%減)に短縮し、機器設置の効率化が実現した。

■適用場面

・下水道管路の老朽化対策

 同システムを適用することで、広域での水位データを効率的に取得でき、老朽化・損傷に伴う不明水の浸入場所を迅速かつ容易に特定ができる。得られたデータは、下水道管路の老朽化対策(修繕・改築等の計画および実施)に反映できる。

・内水氾濫への対策

 豪雨時にメイン機器からリアルタイムで得られる水位を把握することで、その後の水位予測や、避難・応急対応等の要否、災害の予知と対策などに活用できる。後日、地上の巡視と合わせてバックアップ機器の計測データを回収し、豪雨時の流下の状態を評価することで、流下性能を満足させるための下水道管路整備計画(更新、増設、改築等)に反映できる。

 このように、同システムは下水道管路のモニタリングと適切な整備・維持管理を支える技術として、内水氾濫の発生抑制および被害の縮小などに貢献する。

■今後の展開

 今後は、自治体等の管理する供用中の下水道管路に同システムを適用・運用し、効果の検証を行う。また、運用によって得られた知見から、機器の改良を行い、更なる機能向上を図っていく。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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