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ティムコは下値切り上げ、23年11月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れの可能性
- 2023/9/20 09:20
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ティムコ<7501>(東証スタンダード)は、フィッシング用品およびアウトドア用品の企画・開発・販売を展開している。フィッシング用品分野ではフライフィッシングのパイオニアであり、アウトドア用品分野ではオリジナル衣料ブランドFoxfireを主力としている。23年11月期はアウトドア事業の伸長が牽引して大幅営業・経常増益予想としている。需要回復基調、第2四半期累計の高進捗率、さらに8月以降の価格改定効果などを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は動意づいた7月の高値圏から反落してモミ合う形だが、調整一巡して徐々に下値を切り上げている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、モミ合いから上放れの展開を期待したい。
■フィッシング用品およびアウトドア用品の企画・販売
フィッシング用品(ルアーフィッシング用品、フライフィッシング用品)およびアウトドア用品(アウトドア衣料・用品)の企画・開発・販売事業を展開している。
フィッシング用品の分野では、日本では歴史の浅いフライフィッシングのパイオニアであり、竿から衣料品に至るまで全てのフライ用品を取り扱う唯一の企業であることを特徴・強みとしている。アウトドア用品の分野では、自社オリジナルブランドのアウトドア衣料ブランドFoxfireを主力としている。
22年11月期のセグメント別の売上高は、フィッシング事業が21年11月期比3.3%減の10億29百万円、アウトドア事業が同20.5%増の22億39百万円、その他(不動産賃貸収入)が同24.5%減の20百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)は、フィッシング事業が同4.5%減の1億60百万円、アウトドア事業が1億25百万円の黒字(21年11月期は24百万円の赤字)、その他が同33.8%減の13百万円、営業利益の全社費用等調整額が▲1億85百万円(同▲1億91百万円)だった。
フィッシング事業は、屋外アクティビティとして注目された釣り需要が平常に復したため、販売がやや低調だった。アウトドア事業は、22年4月以降に行動制限が発出されなかったことを背景に、登山やトレッキング等の外出機会が増加し、百貨店やショッピングセンター等の商業施設の集客も回復したため、販売が好調に推移した。
■ブランド力向上、ネット販売強化、グローバル化を推進
中期的な重点課題としてBRAND(ブランド力を高めるための戦略強化)、NET(インターネット活用を前提とする仕組の強化)、GLOBAL(世界に通用することを目指す商品・仕組の構築)を掲げている。
そして基本戦略としては、規模の拡大よりも内容の充実に重点を置き、フィッシング事業ではフライ用品の裾野拡大やルアー用品のユーザー層拡大、アウトドア事業ではオリジナルアウトドア衣料ブランドFoxfireや直営店舗Foxfire Storeの認知度向上・ユーザー層拡大に取り組んでいる。
またネット通販や宣伝販売促進の更なる強化、フィッシング事業の強化、直営店フォックスファイヤーの販売チャネル見直しや不採算店舗整理による事業効率化、社内業務見直しによる販管費コントロール・経費削減なども推進している。
なお19年4月にスノーピーク<7816>と資本業務提携し、スノーピークが第1位株主となっている。商品開発・販売などを共同展開する。21年11月にはスノーピーク、アイビック、アイビック食品、および同社の4社共同で、キャンプ・フィッシング・食を融合した体験型施設などを展開し、新たなアウトドアカルチャーの価値創造を目的とする新会社キャンパーズアンドアングラーズ(札幌市、以下C&A)を設立した。
23年4月には複合リゾート「エンゼルフォレスト白河高原」内に、初となるフィッシングエリア併設直営店Foxfire白河高原を開業した。スノーピークの直営店スノーピーク白河高原とのコラボショップであり、23年7月開業予定のスノーピーク直営キャンプフィールド「スノーピーク白河高原キャンプフィールド」において新たなアウトドアスタイル「CAMP FISHING」を提案し、イベント共同開催なども計画している。また23年秋には北海道北広島市にC&A1号店がオープン予定である。
■スタンダード市場上場維持基準適合に向けた計画書
なお22年11月末時点の流通株式時価総額がスタンダード市場における上場維持基準に適合しない状況となったため、23年2月24日に上場維持基準適合に向けた計画書を公表した。企業価値の向上(時価総額の増大)に向けて業績の向上を図るため、以下の施策によって収益性の強化に取り組む。
フィッシング事業では、新製品を中心とした販売促進、販促イベントの実施、SNSプロモーションの強化、初心者向け商品の開発強化、釣り人口拡大に向けたフライフィッシングスクール&ツアーの実施などを推進する。
プロモーション活動を強化するため22年12月より組織体制を変更し、開発およびプロモーションを担う部署と営業に特化した部署に切り分けた。体制を強化し、SNSや動画などさまざまなメディアを連携したプロモーション活動を行う。組織体制変更とともに、23年11月期はルアーカテゴリーのファン数の3割増を目標とするなど、各カテゴリーに応じた計画を立案している。スクール・イベントの強化では、釣り人口拡大がユーザー数増加と収益向上につながるため、23年11月期はスクール講師を2倍に増強して受講生増加に対応する。また販売網強化に向けて23年11月期は、得意先取引店開拓により取り扱い強化店の10%以上増加を目標とする。店頭におけるイベント開催やキャンペーン企画も強化する。
アウトドア事業では、Foxfire会員制度の本格稼働による国内自社オンライン販売の強化、セール品縮小による利益率の改善、店舗計画(新規出店、リニューアルなど)の推進、WEB・動画・SNS情報発信の強化、コラボレーションも活用したFoxfire認知度向上などを推進する。23年4月には、スタジオジプリ作品「となりのトトロ」とのコラボレーションアイテムの販売を開始した。
オリジナルアウトドア衣料ブランドFoxfireの売上については、ECサイトのプロモーション強化などにより、23年11月期の自社ECサイトにおける販売2割増を計画し、さらに順次EC売上比率を高めていく方針だ。ポイント会員(21年にリニューアル)数については、23年11月期に5割増加を計画し、さらにCRM強化によってサービス向上、リピート率・セット率向上につなげる方針だ。利益率の改善については、コロナ禍による商品消化率低下を解消するため割引販売を増やして対応したが、22年秋冬以降は割引販売の実施を控えて利益率改善に努める方針としている。またFoxfireのうち釣りに関連するアイテムを強化し、釣具店等の新たな販売チャネルも拡大する。23年11月期はフィッシングギアの売上高3割増を計画している。
これらの施策に加えて、フィッシング事業とアウトドア事業の相互の有機的連携を強化し、全社的な収益力向上に取り組むとしている。さらにIR活動をいっそう強化して、投資家や株主とのコミュニケーションを高める方針だ。なお計画期間については、23年11月期決算発表が24年1月となるため、23年11月期の業績が確定し、その評価が株価にも反映される期間を踏まえて24年11月末としている。
■23年11月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れの可能性
23年11月期業績(非連結)予想は売上高が22年11月期比6.1%増の34億90百万円、営業利益が31.8%増の1億49百万円、経常利益が26.7%増の1億51百万円、そして当期純利益が2.1%増の1億28百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の12円(期末一括)で、予想配当性向は23.1%となる。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比7.4%増の18億14百万円、営業利益が82.4%増の1億25百万円、経常利益が64.9%増の1億24百万円、四半期純利益が44.9%増の98百万円だった。フィッシング事業はやや苦戦したが、アウトドア事業の大幅伸長が牽引して大幅増益だった。なお22年12月からフライ関連製品、ルアー関連製品、Foxfire関連製品(一部製品は23年2月から)の価格改定を実施している。
販路別売上高は、小売店が9.0%増の14億30百万円、卸売店が7.7%増の2億40百万円、自社通販が17.1%増の56百万円、輸出が31.9%減の62百万円だった。ターミナルを中心とした百貨店やショッピングセンターなど商業施設への客足が回復し、自社通販ではFoxfire会員制度の本格稼働が寄与した。全体の新製品販売比率は65.7%、自社企画品販売比率は92.6%だった。
フィッシング事業は売上高が3.5%減の5億29百万円で営業利益(全社費用等調整前)が3.6%増の98百万円だった。コロナ禍において3密を避けられるアクティビティとしての需要が一段落したことに加えて、値上げ前の駆け込み需要の反動も影響して、売上面が全体として低調だった。ただし利益面は、新製品投入や価格改定効果などで小幅ながら増益だった。
アウトドア事業は売上高が12.8%増の12億74百万円で営業利益が85.5%増の1億17百万円だった。百貨店やショッピングセンターなど商業施設への客足が回復し、冬季の気温低下も背景に防寒衣料や透湿防水素材(ゴアテックス)を使用した軽量ジャケットを中心に販売が好調だった。利益面では増収効果に加えて、滞留商品の値引き販売の減少も寄与した。
その他(主に不動産賃貸収入売上)は売上高が0.4%減の10百万円で営業利益が1.8%減の5百万円だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が7億94百万円で営業利益が10百万円、第2四半期は売上高が10億20百万円で営業利益が1億15百万円だった。
通期予想は据え置いている。当期純利益は前期の繰延税金資産(法人税等調整額)計上が一巡するため小幅増益予想だが、営業利益と経常利益は大幅増益予想としている。なお7月24日付で特別利益計上を発表した。コーポレートガバナンス・コードに基づく政策保有株式の縮減および見直し、並びに財務体質の強化を図るため、保有する上場有価証券1銘柄を売却し、第3四半期の特別利益に投資有価証券売却益20百万円を計上する。
第2四半期累計の進捗率は売上高が52.0%、営業利益が83.9%、経常利益が82.1%、当期純利益が76.6%と高水準だった。需要回復基調、第2四半期累計の高進捗率、さらに8月以降の価格改定(コスト高騰に対応してFoxfire製品の価格改定を8月1日出荷分より実施)効果などを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年11月末の株主対象
株主優待制度は毎年11月30日現在の株主を対象として、保有株式数に応じてFoxfire Store20%OFFお買物優待券を贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は下値切り上げ
株価は動意づいた7月の高値圏から反落してモミ合う形だが、調整一巡して徐々に下値を切り上げている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、モミ合いから上放れの展開を期待したい。9月19日の終値は765円、今期予想PER(会社予想のEPS51円94銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の12円で算出)は約1.6%、前期実績PBR(前期実績のBPS1856円56銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約26億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)