JSPは年初来高値更新の展開、24年3月期大幅増益予想

JSP<7942>(東証プライム)は発泡プラスチック製品の大手である。成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進するとともに、製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発など、サステナビリティ経営の推進も強化している。なお9月27日~29日開催(ポートメッセなごや)の専門展示会「緑十字展2023」に出展する。24年3月期は上方修正して大幅増益予想としている。発泡ポリプロピレン「ピーブロック」の販売が好調に推移する見込みであり、北米市場において原料価格が軟化傾向にあることや、為替の円安も寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来高値更新の展開だ。1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■発泡プラスチック製品の大手

発泡プラスチック製品の大手で、押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレイ材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他(一般包材など)を展開している。

22年1月には、新規事業創出を目的としてフランスの子会社がイタリアのGHEPI社に出資(株式35%取得)した。射出成形市場に参入し、発泡技術と射出技術の複合化で技術優位性を構築して事業拡大を推進する方針だ。

収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。23年3月期のセグメント別業績は押出事業の売上高(外部顧客への売上高)が8.6%増の424億43百万円で営業利益(全社費用等調整前)が36.5%減の17億67百万円、ビーズ事業の売上高が20.8%増の827億61百万円で営業利益が22.2%減の20億38百万円、その他の売上高が0.4%減の65億08百万円で営業利益が21.5%減の1億66百万円だった。

■長期ビジョン

長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。

長期ビジョン達成に向けた3ヶ年中期経営計画(21年度~23年度)では、変革戦略を基本方針として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。

■自動車部品用ピーブロックなど環境に貢献する新製品を拡販

自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車メーカーの軽量化要求に対応する製品として、自動車シートコア材や自動車バンパー芯材としての採用が拡大している。SDGsへの取り組みとして自動車メーカーからはリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が拡大している。さらにピーブロックの高付加価値グレード版として、GHG排出削減を実現するピーブロックLC(LCはローカーボンの略)も開発し、国内自動車メーカーのバンパー芯材に採用された。EV用部材、住宅用空気清浄システム構造部材、水力発電所の発電機の発熱を遮断する断熱材などにも採用が広がっており、中期成長ドライバーとして期待される。

省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。

22年11月には、梱包資材用途ミラブロック(発泡ポリエチレンビーズ成形品)シリーズの新製品として、バイオマス原料を配合したミラブロック-Bioの販売を開始した。植物由来のバイオマスポリエチレンを25.0重量%以上配合するため、日本バイオプラスチック協会のバイオマスプラシンボルマークの認定を受けた。従来品ミラブロック-Eをミラブロック-Bioに切り替えることにより、環境負荷軽減や気候変動緩和に貢献できる製品として、サステナブルな社会づくりに貢献する。

さらに、冷凍用途から電子レンジ対応でリサイクル性に優れた高性能食品容器用シートのPパールFや、アウトドア等に手軽に持ち運べるクッション用途として採用されたARGILIX、老朽化した橋梁の補強・改修に適したフォームサポート工法など、新製品の開発・拡販を推進している。

■サステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスを強化

製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発などサステナビリティ経営の推進も強化するとともに、コーポレート・ガバナンスも強化している。

21年4月にサステナビリティ推進室を新設し、21年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明した。22年4月にはガバナンス特別委員会を設置した。親会社である三菱瓦斯化学<4182>およびその子会社との取引において、公正性・透明性・客観性を確保することで少数株主の利益を適切に保護し、コーポレート・ガバナンスの充実を図る。22年12月には、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動を推進するために「JSPグループ調達基本方針」の策定、および「パートナーシップ構築宣言」「ホワイト物流推進運動の自主行動宣言」をリリースした。

■24年3月期大幅増益予想

24年3月期の連結業績予想(7月31日付で第2四半期累計および通期の利益予想を上方修正)は、売上高が23年3月期比2.5%増の1350億円、営業利益が89.4%増の56億円、経常利益が75.4%増の59億円、そして親会社株主帰属当期純利益が69.9%増の43億円としている。配当予想は据え置いて23年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。予想配当性向は34.7%となる。

なお第2四半期累計予想は売上高が前年同期比4.3%増の670億円、営業利益が113.6%増の30億円、経常利益が72.0%増の32億円、親会社株主帰属四半期純利益が74.0%増の24億円としている。

期初予想に対して、第2四半期累計予想は営業利益を6億円、経常利益を7億円、親会社株主帰属四半期純利益を6億50百万円それぞれ上方修正、通期予想は営業利益を8億円、経常利益を9億円、親会社株主帰属当期純利益を9億円それぞれ上方修正した。

第1四半期は、売上高が前年同期比3.5%増の320億49百万円、営業利益が66.4%増の12億71百万円、経常利益が37.8%増の14億88百万円、親会社株主帰属四半期純利益が46.6%増の11億19百万円だった。製品価格改定も寄与して大幅増益だった。

押出事業は売上高が0.5%減の102億16百万円、営業利益(全社費用等調整前)が31.2%減の4億21百万円だった。全体として製品価格改定を進めたが、販売数量の減少、高付加価値製品の販売減少、ユーティリティコスト高騰の影響で減益だった。分野別売上状況として、生活資材製品は食品容器用「スチレンペーパー」や広告宣伝用ディスプレイ材「ミラボード」などが減少、産業資材製品は液晶パネルの生産調整の影響でフラットパネルディスプレイ用「ミラマット」などが減少した。建築土木資材製品は土木分野が減少したが、建築・住宅分野が増加した。

ビーズ事業は売上高が6.5%増の203億83百万円で営業利益が196.5%増の11億12百万円だった。全体として販売数量が減少したが、製品価格改定効果で大幅増益だった。主力の発泡ポリプロピレン「ピーブロック」を中心とする高機能材製品は、自動車や包装材などの分野で販売数量が減少したが、製品価格改定効果で売上が増加した。

その他は売上高が7.8%減の14億49百万円で営業利益が35.9%減の24百万円だった。一般包材が、国内では自動車部品輸送関連中心に増加したが、中国では各種部品関連の需要減の影響で減少した。

24年3月期は、発泡ポリプロピレン「ピーブロック」の販売が好調に推移する見込みであり、北米市場においてポリプロピレンの需要低下により原料価格が軟化傾向にあることや、為替の円安も寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年3月末対象

株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は年初来高値更新の展開

株価は年初来高値更新の展開だ。1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。9月21日の終値は2016円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS144円26銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3076円73銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約633億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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