加賀電子は上値試す、24年3月期減益予想だが上振れ余地

 加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、電装基板製造受託のEMSビジネスを展開し、成長に向けて収益力強化、経営基盤強化、新規事業創出、SDGs経営を推進している。24年3月期は一時的な需要減退により減収減益予想としている。ただし第1四半期の営業利益が社内計画を大幅に上回る水準で着地し、営業利益進捗率も順調だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。さらに25年3月期は成長軌道に回帰する見込みとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上場来高値圏で堅調だ。目先的には上げ一服の形だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。なお11月8日に24年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■独立系の大手エレクトロニクス総合商社

 独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。

 19年1月に富士通エレクトロニクスを子会社化(20年12月に社名を加賀FEIに変更、22年1月に完全子会社化)し、その後19年10月にパイオニアの製造子会社である十和田パイオニアを子会社化して商号を加賀EMS十和田に変更、20年4月にエレクトロニクス商社のエクセルを子会社化、20年11月に旭東電気から新設分割された新:旭東電気を子会社化、21年10月に加賀EFIが太陽誘電<6976>よりBluetoothおよびWireless LANモジュールに関わる商圏、開発・製造技術ならびに知的財産権を承継して22年1月から小型無線モジュール事業に本格参入、23年5月に加賀EFIがセルシスよりUI/UX事業を譲受(オーストリアのカンデラの100%株式、および日本における商権・知的財産権等を取得)した。

 23年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)が89%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)が7%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)が0%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)が4%、営業利益構成比は電子部品事業が88%、情報機器事業が8%、ソフトウェア事業が1%、その他事業が3%、調整額が0%だった。

 中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。23年3月期の売上構成比は電子部品事業が66%、EMS事業が25%、CSI事業が7%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が60%、EMS事業が30%、CSI事業が8%、その他事業が2%、調整額が0%だった。

■収益力強化や新規事業創出を推進

 中期経営計画2024では基本方針に、更なる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。経営目標値(23年5月11日付で営業利益とROEを上方修正)については、25年3月期の売上高が7500億円(電子部品事業3800億円、EMS事業1500億円、CSI事業540億円、その他事業160億円、新規M&A等1500億円)、営業利益が300億円以上(前回予想は200億円)、ROEが安定的に10%以上(同、安定的に8.5%以上)としている。株主還元については連結配当性向の目安を25~35%に置き、安定的かつ継続的に充実化する。

 重点アクションとして、さらなる収益力の強化では成長分野(モビリティ、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への選択と集中、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大、経営基盤の強化ではコーポレートガバナンスの強化、効率的なグループ運営、人的資本への投資、新規事業の創出では新規分野への取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションの推進、非連続な成長を狙うM&Aへの挑戦を掲げている。SDGs経営の推進については、サステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指す。

 23年1月には、トラース・オン・プロダクト<6696>が開発したAIによる電力コスト削減システム「AIrux8(エーアイラックス エイト)」について、日本における代理店1号として販売開始した。

 23年2月には、子会社のエクセルがEVバスの輸出入を展開するアルファバスジャパンと共同で、しずてつジャストライン(静岡県静岡市)に中国ALFA社製のEVバスを納入し、静岡県内初となる大型EV路線バスとして静岡市内の路線で運行開始した。23年3月には越後交通(新潟県長岡市)に中国ALFA社製のEVバスを納入し、新潟県内初となる大型EV路線バスとして長岡市内の路線で運行開始した。

 23年8月にはメキシコにおけるEMS生産体制強化・拡充を発表した。米国市場向け四輪自動車用照明ユニット組立を中心とした生産活動を行っており、これら既存顧客からの受注増に加えて、米国市場向け空調機器用電装基盤組立の新規顧客獲得が見込まれるとしている。新工場は24年4月操業開始予定である。

 なお23年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023」の認定を受けた。また23年9月には社員の福利厚生および健康増進を目的に、日本初導入の最新AIフィットネスマシン(ドイツのフィットネス機器メーカーEGYM製)を設置した従業員向けトレーニングルームを本社ビル内に開設した。

■24年3月期減益予想だが上振れ余地、25年3月期成長回復シナリオ

 24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比9.5%減の5500億円、営業利益が22.5%減の250億円、経常利益が23.6%減の250億円、そして親会社株主帰属当期純利益が22.0%減の180億円としている。配当予想は23年3月期と同額の220円(第2四半期末110円、期末110円)としている。23年3月期には特別配当70円および創立55周年記念配当10円が含まれているため、普通配当ベースでは80円増配の形となる。予想配当性向は32.1%となる。

 第1四半期は、売上高が前年同期比7.8%減の1376億94百万円、営業利益が28.8%減の69億94百万円、経常利益が29.9%減の69億09百万円、親会社株主帰属四半期純利益が17.4%減の57億67百万円だった。

 電子部品事業における前期のスポット需要の解消などで減収減益だったが、営業利益は社内計画(49億円)を大幅に上回る水準で着地した。また前年同期比で営業利益は28億26百万円減益だったが、スポット需要の解消(営業利益23億13百万円減益要因)や、特定取引先の民事再生申請に伴う損失引当(同4億12百万円減益要因)を除けば、実質的に前年並みの利益水準だったとしている。営業外費用では為替差損が2億15百万円増加、特別利益では投資有価証券売却益10億65百万円を計上した。

 電子部品事業は、売上高が10.1%減の1200億15百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が34.3%減の59億22百万円だった。部品販売ビジネスにおいて、前期のスポット需要が解消したことに加えて、顧客全般における在庫調整の顕在化も影響した。EMSビジネスは車載関連が伸長したが、医療機器関連や産業機器関連が顧客の在庫調整の影響などで減少した。

 情報機器事業は売上高が8.1%増の120億50百万円、利益が32.2%増の7億46百万円だった。教育機関向けパソコン販売が好調に推移し、LED設置ビジネスの大口案件も寄与した。

 ソフトウェア事業は売上高が15.8%増の5億77百万円、利益が4百万円の損失(前年同期は33百万円の損失)だった。スマホ向けゲーム制作やCG制作における大型案件や新規案件の受注が寄与して損失縮小した。

 その他事業は売上高が20.9%増の50億50百万円、利益が17.0%増の2億91百万円だった。PC製品・周辺機器のリサイクルビジネスが好調に推移し、アミューズメント業界向けアーケードゲーム機器も伸長した。

 会社別の営業利益(連結調整前)は加賀電子が9.4%減の56億63百万円、加賀EFIが73.8%減の7億97百万円、エクセルが5.0%増の4億85百万円だった。中計セグメント別の営業利益(連結調整前)は電子部品事業が43.5%減の36億95百万円、EMS事業が6.8%減の24億33百万円、CSI(コンシューマー&システムインテグレーター)事業が32.2%増の7億46百万円、その他事業が1.5%増の81百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。コロナ禍における需要増からの反動や顧客の在庫調整の影響など一時的な需要減退により減収減益予想としている。営業利益72億49百万円減益の要因分析は販売数量・販売ミックスで▲52億05百万円、スポット販売減少で▲43億09百万円、販管費減少で+22億65百万円、為替影響で±0百万円の見込みとしている。

 セグメント別の計画は、電子部品事業の売上高が12.6%減の4715億円で利益(全社費用等調整前営業利益)が26.9%減の207億円、情報機器事業の売上高が3.0%増の450億円で利益が2.1%増の25億円、ソフトウェア事業の売上高が50.1%増の45億円で利益が4.6%増の3億円、その他事業の売上高が31.6%増の290億円で利益が36.1%増の15億円としている。

 24年3月期は一時的な需要減退により減収減益予想だが、第1四半期の営業利益が社内計画を大幅に上回る水準で着地し、営業利益進捗率も28%と順調だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。また、中期経営計画最終年度25年3月期の営業利益目標を従来の「200億円」から「300億円以上」に大幅に引き上げている。24年3月期は一時的な需要減退の影響を受けるが、25年3月期は成長軌道に回帰する見込みとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 なお23年8月には、JPX総研および日本経済新聞社が共同で算出する「JPX日経インデックス400」の構成銘柄として新規選定された。

 株価は上場来高値圏で堅調だ。目先的には上げ一服の形だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。9月27日の終値は6610円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS685円42銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の220円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4935円36銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約1897億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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